まるも亜希子の「寄り道日和」

新型EV「ドルフィン」に感心したポイント

イルカみたいにつぶらな瞳がキュートな、BYDのコンパクトEV、ドルフィン。標準モデルとロングレンジがあって、外観で見分けるポイントはルーフがツートーンになったり、ホイールのデザインが変わるところです

 自宅から半径5kmくらいまでしか走ることのない、義母がずっと乗っているスカイライン(34型)を軽EVのサクラに買い替えようか、という話がここ1年くらい浮上したり消えたりしているわが家。スカイラインはハイオク仕様で燃費がわるく、あちこちのメンテナンス費用が年々増えている状況なので、走行中のCO2排出をなくしたいということと、EVならメンテナンスが簡潔になることがまず、魅力的。さらにV2HやV2Lを使って、災害時の備えとしての役割も求めたいところです。

 ただ、いかんせん本人が長く相棒としてきて気に入って大切に乗っていることや、家の建て替え話がこれまた浮上したり消えたりしている兼ね合いで、なかなか踏ん切りがつかないままとなっています。スカイラインが5人乗りだったので、軽EVだと4人乗りになってしまうところも懸念材料のひとつです。

 よく考えると、コンパクトサイズで5人乗りのEVって、けっこう少ないんですよね。Honda eやフィアット 500eは4人乗りだし、ほぼリーフくらいでしょうか。プジョーのe-2008もまぁコンパクトといえるサイズですが、給電機能がないので義母の希望とは合致しないのです。

 でもついに、もしかしてピッタリかも? と思うコンパクトEVに出会いました。BYDが9月20日に価格発表を予定している、ドルフィンです。詳細はすでにレポートさせていただいていて、シッカリとした走りや乗り心地のよさを確認済みなのですが、個人的にとてもいいなと思ったのは、デザイン性と実用性がバランスよく表現されているところ。

 たとえばドルフィンという名前のとおり、イルカに関するモチーフや、海のモチーフが内外装のいたるところに散りばめられていて、見つけるとちょっと嬉しくなります。だんだん、よく見ると「コレも波のモチーフなんじゃない?」とか、「もしかして、ココも?」なんて、BYDからアナウンスがないところまで海やイルカのカタチに見えてくるという(笑)。でもそれって、すでにドルフィンの世界に入り込んでいるということですよね。そういう体験をさせてくれるクルマって、最近あんまりないなと思うのです。

 私が見てしまった幻(?)のモチーフは、ラゲッジルームを開けた掃き出し口のところに刻まれている、滑り止め加工的な模様がさざ波のように見えたり、センターコンソールボックスの後ろにある、後席用のカップホルダーとUSBジャックが配置されたところが、イルカの胴体のように見えてきたり。シートバックに入ったステッチも、イルカショーで使うボールのように見えてきたのですが、さすがにそれは行き過ぎでしょうか(笑)。

フロアボードの高さが2段階に変えられて、これはいちばん下にした状態。両サイドにネットがあったり、とても使いやすそうです。後席は6:4分割で前倒しすることができます。この掃き出し口の模様、波かウロコに見えませんか?
後席用のカップホルダーと、USBがType-Cも含めて2個あるところは、イルカの胴体に見えてきてしまいました。後席足下はすべてフロアがフラットで、居住性も文句なしです

 そしてもう1つ、とくにドルフィンで感心したのが、「幼児置き去り防止装置(CPD)」が全車に標準装備となることです。今年の夏も、幼い子どもが犠牲になる痛ましい置き去り事故が起こってしまいました……。でもその報道を見て、子育て経験のある人なら「自分がやってしまってもおかしくなかったかもしれない」と他人事とは思えなかった人もいたのではないでしょうか。少なくとも、私はそう思いました。出産後は、夜中に何度も起こされて授乳やオムツ替えをする毎日が1年近く続き、熟睡できずに常に寝不足状態。それでもやらなければいけない仕事や家事は山積みで、昼間にぼーっとしてしまって、普段なら絶対に確認していたことをうっかり忘れたり、勘違いしたり、ハッと気が付いたら自分でも信じられないことをしてしまっていたり、といった状態が私にもあったからです。

 そんな状態の時に、この装置がついていてくれたら。きっと助かる命があるはずです。ドルフィンに搭載の「幼児置き去り防止装置」は、ルームミラーとアンテナの下の部分の天井にセンサーがついていて、システムを停止して駐車後に室内で人が動くのを検知すると、ターンインジケーターが点灯し、ホーンによる警報音が約6秒間、外部に向けて発せられます。動くというのは、ちょっと頭をかしげたくらいの動きでも検知されるので、もし赤ちゃんが泣きわめいて手足をバタバタさせたら、しっかり検知してくれると感じました。

幼児置き去り防止装置(CPD)の実演も見ることができました。後席に女性が座っていますが、軽く左右に頭を動かしただけで、装置が作動。かなり大きな音でホーンが鳴り、周囲に置き去りにされていることを通報してくれます。自動でエアコンが作動するというのも助かりますね

 その後、1分半ほど経過してもドアがアンロックもしくは開けられることがないと、25分間にわたって断続的にターンインジケーターとホーンの警告音で周囲に知らせつつ、自動でエアコンがオンになる仕組みとなっています。これは車内に置き去りにしてしまったペットにも反応するそうなので、愛犬家の皆さんも安心。そして、モニター画面から任意にこの装置をオフにすることもできますが、システムを一度オフにして、再度オンにした時には装置もオンがデフォルトになっているので、「オンにしていたつもりが、オフにしたままになっていた」といううっかりミスも防げるようになっています。子育て期にこれがあったら、きっと安心感がぜんぜん違うだろうなと、一気に頼もしく感じたのでした。

 実は、わが家から15分くらいの場所にBYDの正規ディーラーがオープンし、通りかかるとついつい気になって覗いてしまう私。ドルフィンが日本のBEV市場で飛び跳ねるのかどうか、かなり注目しています。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。