まるも亜希子の「寄り道日和」
「地域の安全安心マップ」を作るイベントに参加してみました
2023年8月17日 00:00
これまであまりメディアで大きく扱われることのなかった「子どもの性被害」について、ついに政府や国連人権理事会までが動くに至り、早期の対策を求める声が強くなっています。小学生の女の子を娘に持つ身として、これはひとごとではないと思い、動向を見守っていた矢先でした。なんと、子どもの性被害への対策に着目した産学官での取り組み第1弾として、「地理学の先生から学び、『地域の安全安心マップ』を作る」というイベントが開催されるので、親子で参加しませんかというお誘いが届いたのです。
これは、グローバルサプライヤーとして自動車業界を支えるアイシンが、長年培ってきた地図データ開発などの技術と、立命館大学の経営学・地理学からの学術知見をかけ合わせて、身のまわりの危険を察知し、回避していく重要性を伝えようというもの。よく日本人は「安全ボケ」だなんて言われちゃいますが、自分の娘には、なんとか自分自身で不測の事態に対処できるすべを身につけてほしいなと思っていたので、二つ返事で参加させていただくことにしました。
イベントのプログラムとしては、地理学の先生や京都府警察、伏見警察署それぞれのおまわりさんからお話を聞いた後、実際に親子で街を探索し、危険な場所や安全な場所を調査。写真に撮って会場に戻り、それを使って「地域の安全安心マップ」を制作するというもの。8歳の娘にこのイベントの趣旨を説明しても、あまりピンときていない様子でしたが(笑)、会場となるのが「京都トヨタ GRガレージ京都伏見」ということで、「新幹線に乗れるよ! お菓子ももらえるらしいよ!」と誘い出したのでした。
当日は、小学生の子どもたちと保護者10組30名ほどの参加者が集合し、娘はみんなと友だちになりたいと、朝からはりきって自己紹介。すぐに何人かと仲良くなって、和気あいあいの雰囲気でスタートしました。心配だったのは、約1時間の先生たちのお話に集中できるかな〜ということでしたが、そこはさすが、 立命館大学 歴史都市防災研究所 副所長であり文学部地理学専攻の花岡和聖先生と、熊本大学大学院 人文社会科学研究部の米島万有子先生のお二人が、子どもたちにもわかりやすく、「まちの様子から安全安心を読みとく術」というお話で引きつけてくれました。
とにかく子どもたちは、クイズが好きですからね。いくつかの街の写真の中で、あやしい人がどこに隠れているかを当てるクイズに大盛り上がり。高い塀が続く道の切れ目、公園の植え込みの後ろ、薄暗く人通りのない道など、自分たちの周りに当たり前にある光景でも、こんなに危険が潜んでいるということを楽しみながら学んでいる様子でした。
ちなみに先生のお話では、周りに家や人目のない道や遊び場、高い壁や草木で囲まれた場所、暗がりや人目のない場所に駐車されたクルマの中など、街の中の隠れやすい場所。そして、ゴミが散乱していたり、草がボウボウのままだったり、落書きがあるような、住民が無関心な場所も、犯罪が起きやすい場所と考えられるそうです。
娘にとっては初めて訪れる場所なので、こういう話を聞いてどう感じるのかなと思っていたのですが、すぐさま「うちの学校の近くにも、こういうところあるよね」と、自分自身の行動範囲と重ね合わせていたところは、わが子ながら感心したポイント。
また、街の中で安全安心を知らせるしるしや場所を見つけるポイントとして、たとえば「きれいに掃除され、お店や家など人目がある道」「全体を見渡せるような公園」「“こども110番の家”のしるし」「“見回り中”など防犯活動をしているしるし」などを教わりました。大切なことは、街の様子は天気と同じで、場所や時間によってコロコロ変わるため、安全な場所と危険そうな場所を常に観察し、危険そうな場所や時間には近づかないようにすること。今は、「暗くなったら出掛けないから大丈夫」なんて得意げな娘ですが、これから成長していくにつれて1人で出掛けるようになった時にも、これを覚えておいてほしいなと思います。
続いて、京都府警察本部 生活安全部の宮越史明警部補からの、防犯についてのお話にも子どもたちが食いついていました。「あやしい人ってどんな人?」という問いかけに、「サングラスをしている人!」「全身黒い服を着てる人!」と元気に答える子どもたち。それらは“見た目”での答えが多かったのですが、実はあやしい人というのは見た目では判断しにくいので、行動で見分けましょうというのがポイント。「あとをついてくる」「両腕を広げた範囲(およそ1.2m)より近くに寄ってくる」「ジロジロ見てくる」といった行動には要注意とのことでした。
さらに、京都府伏見警察署 交通課交通総務係の真柴瞳巡査部長は、最初に1枚の絵を見せて「これはなんでしょう?」というクイズを出題。白と赤の2色が使われた絵に、娘は「優勝トロフィー!」と答え、ほかの子どもたちからも「砂時計」や「ベル」という答えが挙がっていましたが、それらはすべて赤い部分の形で、白い部分だけを見てみると、あら不思議。2人の顔が向かい合っているように見えるではないですか。このように、「見るポイントによって、ちがうものに見える」という視点を持ちながら街の中を見てみると、危険な場所がよくわかるようになってくるというのです。歩くときには、駐車場の出入り口、曲がり角、路肩に停車しているクルマの様子など、注意するポイントがたくさんあることに気づいた子どもたちでした。
このほかにも、防犯や交通安全に関するたくさんの有益情報を学んだ子どもたち。娘は学校の授業よりも熱心なんじゃないかというくらい、ノートにいろいろ書き込んでいたのでビックリ。先生やおまわりさんたちの伝えるチカラってすごいですね。
そしていよいよ、この学んだことを踏まえた街探索に出掛けます。ここは危険そう、これは安全安心のしるしだと思うところを見つけて、どんどん写真を撮ります。五つのチェックポイントをまわりながら、高い塀が続く細い道や、背の高い植え込みで囲まれて見通しの悪い公園、草ボウボウで手入れされていない場所など、娘もたくさんの危なそうな場所を見つけました。
笑ったのは、子どもの顔が入りそうなくらい太い、おそらく雨どいと思われるパイプの写真を撮っているので、「それはなんで撮ったの?」と聞くと、「ここに盗撮カメラが仕込まれているかもしれないから」という答え。まぁ、うん、なんでも用心するのはいいことだけどね(笑)。でも、「ここは工場の入り口だから、トラックがたくさん出入りするよね」といった、危険予測をしていたことには再び感心。やはり視点の持ち方と、自分で判断して行動することって大切だなぁと実感しました。
その後、会場に戻ると撮影した写真を使った「地域の安全安心マップ」を作る時間です。色鉛筆やマジック、折り紙やシールなどを使って、これを見た人にどのように危険な場所などを伝えるか、子どもたちが考えながら作り上げていきます。
最初は「どうやればいいかわからない」と悩んでいた娘ですが、親子1組に1人ずつのサポーターがアドバイスをくれるので、だんだんと楽しくなってきた様子。90分でなんとか、伝えたいことが盛り込まれたマップが完成しました。こういう時、絵がうまいママとか折り紙がきれいに折れるママだと、マップがとっても華やかで完成度が高くなるのですが、私には残念ながらどちらの才能もなく、娘よゴメン……(笑)。でも、だからこそ、見栄えはちょっとアレでも、正真正銘娘が100%自分で考えて作ったマップなので、頑張ったねと心から褒めてあげたいです。
さて、実はこのマップ作りに関して、立命館大学では長いノウハウを持っています。安全へのはじめの一歩として、地図作りから地域を知ってもらうことを目的として、年に1度、小学生を対象とした「みんなでつくる 地域の安全安心マップコンテスト」を開催しており、2023年で17回目を迎えるのです。
そしてアイシンは長年の地図データ開発技術を生かして、この安全安心マップをスマホなどのアプリで使えるようにしようと、目下開発中とのこと。実用化されれば、地域の住民はもちろん、その土地を初めて訪れた人たちにも、みんなで見つけた危なそうなポイントがわかりやすくなり、犯罪や交通事故などの防止に大きな役割を果たしてくれるのではと期待されています。
このイベントによって、娘だけでなく親としても、「子どもを守るために大切なこと」をたくさん学ぶことができました。防犯、交通安全、子どもたちの性被害への対策として、こうした革新的な取り組みがもっともっと、広がっていくことを願います!