まるも亜希子の「寄り道日和」

メディア対抗ロードスター4時間耐久レース

肉球マークとピンク色のマシンがトレードマークの、チーム・ピンクパンサー。右からドライバーの藤島知子、池田美穂、谷口いづみ、いのまり、監督のまるも亜希子。このポーズが我がチームのお約束で、ファンの皆さんからは「パンサーポーズ」と呼ばれているんですよ。風船をたくさん積んだ、ふれあいタイムのクイズ大会も楽しかったです

 自動車メディアにとって、年に一度のロードスターのお祭りとして34回目を迎えた、メディア対抗ロードスター4時間耐久レース。お祭りといっておきながら、その実は各メディアの腕自慢がこぞって勝ちを狙いにいく、威信をかけたガッチガチの真剣勝負(笑)。スタートドライバーは副編集長以上の役職者に限るという規則があったり(実行委員会による例外あり)、助っ人ドライバー認定や前年度の成績によってハンディキャップが課されたり、給油制限があったりと、このレースならではの演出もあって、思いもよらないドラマがあるんですよね。

 私は1996年にティーポチームのピット雑用係となってから、すっかりこのイベントの面白さに魅了され続けています。マシンがNCロードスターに変わったタイミングの2005年に、モータースポーツやロードスターの魅力をもっと広く伝えることを目的として、女性ジャーナリストによる「チーム・ピンクパンサー」が結成され、清水猛彦監督のもとで私もドライバーとして参加するようになりました。チーム名の由来は、抜き足差し足、しなやかに美しく走るピンクパンサーのように、女性らしい走りでレースを楽しみたいという想いから。その名の通り、燃費に厳しいこの耐久レースで私たちは一度もガス欠をしたことがなく、クルマにも地球にもやさしい走りで闘ってきました。

 そして今年。清水監督が勇退され、なんと2代目監督を私が受け継ぐことに! 私で大丈夫なのかという不安もありましたが、とにかく初年度は見習いのつもりで筑波サーキットに乗り込んだのでした。

 近年は、こんなに面白いレースだし、スタードライバーやメディアで活躍する著名人もたくさん来場するのだから、もっとお客さんとのコミュニケーションを増やして盛り上げていこうということで、ピットでの「ふれあいタイム」があるんですね。各チームごとにいろんな企画を考えてきているんですが、私たちはロードスターをピンクの風船でいっぱいにして、「何個入っているでしょう?」というクイズ大会を開催! 事前の予想では、勘で答える人が多いだろうなと思っていたのですが、いざやってみると子どもから大人まで、あちこちの角度からロードスターを覗いて一生懸命数えて下さって、すごく真剣に答えてくれるのが嬉しかったです。たくさんの人たちが参加してくれて、正解者は2名。惜しい答えの人もいたので、来年はニアピン賞も用意していこうかなと思っています。

夕方4時にスタートして、夜8時にゴールするのが恒例のメディア4耐。ライトが点灯すると、また違った雰囲気に包まれるサーキットがすごく好きなんですよね

 さて、楽しい時間は終わり、いよいよレース本番。予選アタックではいきなり大雨が降って、完全なウェット路面での走行になってしまい、惜しくもグリッドは21台中20番手。ここからどうやって追い上げるか……が、監督の重大な仕事です。普段はラリーやS耐などのサポートをしている神田誠さんが手伝いに来てくださり、毎ラップごとにデータを収集して燃費と速さのバランスを相談しながら、ドライバーに指示を伝えていきます。

 指示を伝えるのは、今年からこのレースのスポンサーになってくれたKTELのヘッドセットを使用。クリアな音声で、コース上の熱気まで伝わってくるようです。Joy耐はドライバーとの通信手段はサインボードしかないので、こうしてずっとドライバーと喋りながら走れるというのは、安心だし面白いですね。

ケテルのヘッドセットをお借りして、ドライバーと喋りながら周回を重ねます。なんか、見た目がF1みたいでカッコイイですね

 順位とタイムとコントロールライン通過順のモニター表示と睨めっこしていると、ついつい「うちよりラップタイムが速いティーポには抜かれてもいいけど、同じくらいのカーセンサーには抜かれないで」なんて指示を出していることがあって、ピットクルーたちから「まるも監督、こわっ」なんて恐れられる始末(笑)。やっぱりだんだん熱くなってきちゃいますね。

 でも今回の私の最大の反省点は、最終コーナーで飛び出したチームがあって、セーフティーカーが出たんですが、その時に素早い判断と指示ができなかったこと。今思えば、いち早くピットインして給油すればよかったなと思うのですが、モタモタと悩んでいるうちになにもできなくなり、チャンスを潰してしまったと後悔しています。こういう時にビシッと指示が出せるような監督になりたいですね……。まだまだ、見習いは続きます。

 それにしても、予選、スタートドライバー、最終ドライバーと大活躍してくれたフジトモこと藤島知子選手をはじめ、西日が強くて見えにくい中を懸命に走ってくれたいのまり選手、燃費がよくてタイムも安定している優等生の池田美穂選手、初参加にもかかわらず安心して任せられる走りを見せてくれた谷口いづみ選手、全員が本当に頑張ってくれました! トモちゃんなんて、最終走行の時にもうズリズリになったタイヤで、ベストラップを続々更新してかっこよかった〜。最後は予定より早く給油ランプが点灯してしまったのでエコランに戻しちゃいましたが、攻めて攻めて、全員でバトンをつないで15位完走。やり切った感でいっぱいになりました。

 私は4時間ずっと喋りっぱなしで声はガラガラ、頭はクラクラ、足はパンパンでクッタクタでしたが、チームが一丸となってゴールするこの感じが、たまらなく好きなんですよね。すでに来年こそは……と思っていますが、なんとマツダの毛籠社長より、来年はカーボンニュートラル燃料の使用を検討することが発表されました! また新たな展開がありそうでワクワク。皆さんも来年はぜひ、ピンクの肉球がトレードマークのチーム・ピンクパンサーを応援に来てくれたら嬉しいです。

決勝レースはローリングスタートで、その先導車を勤めたのがカーボンニュートラル燃料でS耐にも参戦しているこの車両。マツダの毛籠社長がサポートしてくれました
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。