まるも亜希子の「寄り道日和」

なんかスゴいの来た! BMW「XM」に試乗してきました

遠くから見ても、近くで見ても、ド迫力なXM。「ケープ・ヨーク・グリーン(メタリック)」という、ブルーとグリーンの中間のようなボディカラーがスタイリッシュ。オプションを含めると、14色ものラインアップがあるのもスゴいですよね

 遠目からでも「うわ、なんかスゴいの来た」と釘付けになってしまうクルマに乗ってきました。このゾクゾク感は、私にとってはハマー以来だったかもしれない、BMW・XMです。

 とにかくキドニーグリルの“圧”がスゴい。最近のBMWモデルはどんどんキドニーグリルが大型化しているのですが、XMのそれはただ大きいだけでなく、LEDでぐるりと縁取ってあって、さらにその外側がゴールドのトリムで縁取ってあるという、念の入れよう。昼間でもギラリと目立ち、夜になるとさらに光って目立つのです。

 そして、ものすごく大袈裟に言えば、アルミホイルを両手で一度ぐしゃっと丸めて、それを引っ張ってSUVのカタチにした、みたいな、あちこちに複雑な折り目がついているようなボディがスゴい。こうしたキャラクターラインはXMに限らず、剛性を高める技術も盛り込まれているというのは以前にBMWの販売店スタッフから聞いたお話。写真で見ていたときよりも、屋外で光にあたっている姿の方が、よりそのスゴさが実感できるところです。

 ドアを開けてまたビックリ、天井がまるでアート作品のように立体的で、ぐるりとLEDイルミネーションで縁取られています。ブルーグリーンのような珍しいレザーのドアライニングやシートと相まって、クルマの中とは思えない雰囲気。後席には同じカラーでコーディネートされた、ふかふかのクッションまで備わっているので、リゾートホテルのソファでくつろいでいるみたいな気分になってきます。

なんだか、この天井を見た瞬間に、ディズニーシーに紛れ込んでしまったかのような、海辺のリゾート感に包み込まれる室内空間。後席のスペースもゆったりとしています

 これで、乗り心地もしっとりしていたら最高だったんですが、23インチタイヤだし、サーキット走行との両立はさすがに厳しいのか、後席ではちょっと硬いなぁという印象。ところが運転席に座ってみると、まったく硬さが気にならなくなったではないですか。4.4リッターV8エンジン+モーターのPHEVで実現した、BMW M史上最強パワーという触れ込みは伊達じゃない! ハイパワーな電動車は他にもいろいろ乗りましたが、XMほど獰猛な猛獣を扱っているような刺激的なモデルって、そうそうないと思います。

 信号待ちをしているときはすごく静かなので、V8載っけているってことをついつい忘れちゃっているんですね。それで青に変わったから発進しようとアクセルにチカラを入れ……くらいでもうドカンとロケット発射しちゃう感覚。久しぶりに心臓がバクバクしました。トータルの最高出力は653PS、最大トルク800Nmって、どんだけ〜。

 これで充電すれば、満充電で約90kmはEV走行できるというのだから、普段は電動車で通勤して、時にはスーパーカー気分を味わって、たまにサーキットを走りたいという人には、こんなに理想的な1台はないでしょうね。そういう人がどれくらいいるのかは、まったく予想もつかないですけれども。お値段は2100万円オーバーなんですが、もしかすると電動車、スーパーカー、サーキット用マシンを3台買うよりは、お得という考え方もあるのかも?

 BMW M社は1972年創立なので、50周年を超える歴史がありますが、まさかM1以来となるM専用モデルがこんなモンスターSUVになるとは、誰も想像していなかったでしょうね。これも、BMW M社の新時代へのチャレンジなのかもしれません。とにかく今、タタ者じゃないクルマを教えてくれと言われたら、間違いなく推しちゃう1台になりました。

美しいカーブ・ド・ディスプレイは、右側のメーターがM専用デザイン。ところどころに赤が使われているのが、その気になればものすごいパワーが出せるんだぞ、ということをアピールしているかのようです
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。