まるも亜希子の「寄り道日和」
ボルボの新型EV「EX30」に試乗して感じたこと
2024年6月13日 00:00
世界で最も都市に似合うクルマを選出する賞である「ワールド・アーバン・カー2024」に、ボルボ史上最小のSUVにして、EV専用プラットフォームで作られた「EX30」が選ばれました。実はこの賞、2019年にはスズキ「ジムニー」、2021年にはホンダ「Honda e」、2022年にはトヨタ「ヤリスクロス」と日本車が常連だっただけに、今回は北欧のボルボに敗れてしまったわけなのですが、どこがそんなにいいのか、試乗してみて感じたことをレポートしたいと思います。
まず1つめは、ほどよいサイズ感による取り回しの良さ。輸入SUVというとボディサイズが大きなものばかり、というイメージを持っている人も多いと思いますが、EX30は全長が4.2mほどしかないし、全幅も1.8mほど。ヤリスクロスとカローラクロスのちょうど中間くらいの大きさで、全高にいたってはその両車より低い1.55mと、機械式立体駐車場も利用しやすい高さに抑えられているのが秀逸なのです。マンションの駐車場などは高さ制限があるところも多いので、これは嬉しいですよね。
2つめは、どこか温もりのある雰囲気のインテリアなのですが、リサイクル性を高め、廃棄する際にも環境インパクトを小さくするために、パーツを極力減らし、素材にもこだわっているところです。キーを携帯していれば、ドアを開けて運転席に座るとシステムがオンに。多くの操作はディスプレイに集約されており、物理スイッチは最小限しか備わっていません。窓の開閉スイッチでさえ、前席の窓と後席の窓のスイッチが1つで兼用となっているほどです。見えないところでも、インパネ正面に配置されたサウンドバーに全てのスピーカーを集約することで、ドアへの配線をなくしているそう。この徹底ぶりには驚きました。
そしてシート、ドアインナーパネル、ダッシュボードのパネルなど、すべてにペットボトルのリサイクル素材や自然由来の素材、製造過程で発生する端材や廃棄物から作られた素材を使っています。そう聞くと、なんだかチープなのでは? 肌触りが悪いのでは? と思ってしまいがちですが、言われなければまったくリサイクル素材だとは思えない、心地のいい空間。私はレザーインテリアが好きなので、マツダが採用しているようなリサイクル素材を使った合皮がないのはちょっと寂しいところなのですが、センスのよさはさすがボルボだなと感じました。
いいなと思った3つめは、効率のよいエネルギーマネジメントと充電ストレスの少なさです。EX30には3つの電動パワートレーンがありますが、現在日本で購入できるのはバッテリ容量69kWhで航続距離が560kmほどとなるウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジのみ。事前に、充電は10%〜80%までが25分ほどで可能と聞いており、「ほんとかな?」とちょっと疑っていました。
試乗車を受け取った時はバッテリ残量が80%で、そこから目指したのは箱根・芦ノ湖。ナビで目的地設定をすると、到着時の残量予想が52%となっており、雨が降っていて気温も低かったので、こりゃけっこう電気を消費しちゃうだろうなぁと不安だったのです。窓が曇るとイヤなのでエアコンはごく控えめにつけ、シートヒーターをオン。高速道路では左の走行車線を流れに合わせて走っていくと、芦ノ湖に到着した時点でまだ59%ほどのバッテリが残っていて、ほぼ走った距離分しか減っていないことに。BEVで長距離走行をしたことがある人なら実感していると思いますが、登り坂が多い道や高速道路などはとくに、走った距離の分よりも多くの電気を消費してしまうことが珍しくないので、これは嬉しいところです。
そして、帰り道に27%ほどの残量から充電を試してみたのですが、40kWhの急速充電器で30分充電したところ、72%まで入れることができ、これも大満足。充電時の環境によってさまざまではありますが、この感じなら好条件下では10%〜80%の充電も短時間で済みそうかなと実感することができました。
2040年までに完全な循環型ビジネスを実現するという、大きな目標を掲げているボルボ。このEX30も、ボルボ史上最もカーボンフットプリントが少ないクルマだということで、確かにこれからの時代のアーバン・カーにふさわしい1台ですね。