まるも亜希子の「寄り道日和」
「チーム・ピンクパンサー」のメディア4耐
2024年9月26日 00:00
年に一度、多くのメディアがロードスターで楽しむサーキットでのお祭りといえば! 筑波サーキットで開催される「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」です。今年は第35回という記念すべき大会であり、無事レースが成立すれば、最も長く続いている自動車のワンメイクレースシリーズとしてギネス世界記録を達成するという、大事な大会。私は1996年からTipoチームのピットクルーとして参加し、2005年からは唯一のオール女性チーム「チーム・ピンクパンサー」のドライバーとして参加してきました。途中、育児のため応援する側に回っていましたが、2023年から「チーム・ピンクパンサー」の監督を初代の清水猛彦さんより受け継ぎ、この記念すべき大会に臨みました。
今年はギネス挑戦というだけでなく、カーボンニュートラル燃料(CNF)を使って行なうことになり、マシン全車が新しくJAF公認ナンバー付きワンメイクレースのパーティーレース仕様に変わったんです。助手席がついたままだったり、車両の改造範囲が制限されているのでドライバーの技量勝負という要素が強くなるマシンになり、カラーリングも新デザインに。「チーム・ピンクパンサー」はトレードマークのピンクの肉球を大胆にあしらい、小さな肉球が点々とボディを駆け巡るデザインは引き継ぎつつ、フューエルリッドのところに6つのグリーンの肉球が入ったのがポイント。これは、CNFで走る新たなロードスターで闘う、5人のドライバーと監督1人を表しています。
その5人のドライバーは、まずモータージャーナリストでありながら、最近はラリーで大活躍の竹岡圭さん。同じくモータージャーナリストで、KOYOJO CUPにフル参戦中の藤島知子さん。全日本ジムカーナ選手権の女性チャンピオンであり、インストラクターとして活躍しているいのまりさん。そして、姉妹でS耐などに参戦経験があり、自動車学校の先生として若手育成に貢献している池田美穂さんと谷口いづみさん。チームとしては今年で19回目の参戦になるので、全員がすっかり仲良しで抜群のチームワークが武器なんです。
前日の練習走行では、暑いのでタイヤ温存のために3人のドライバーが新しいマシンの感触をチェック。このマシンから「DSC-TRACK」というモードが搭載されたのですが、これはドライバーのスキルを最大限に活かしながら、スピンやクラッシュといったことになる直前に助けてくれるような制御。また、LSDが新しくなり、KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)という新技術も搭載されており、筑波サーキットを走るとどんな感じになるのか、期待半分・不安半分といった練習走行となりました。
感想は半々で、「なにごとも起こらない安心感があって走りやすい」という人と、「レーシングな感じにならなくてちょっと物足りない」という人と。スポーツカーづくりって、難しいですね。でも決勝当日は、全員がこの制御に助けられることになるのです。
というのも、決勝当日は朝から快晴で、暑いくらいの天気だったのですが……。予選が終わり、そろそろスタート前セレモニーが始まるかな、くらいからサーッと冷たい風が吹いてくるではないですか。そして第3ドライバーにバトンを渡したころから雨が降り始め、ラストはけっこうな降りで路面は完全ウェット。それでも、大きなクラッシュもなく全車が無事な姿でレースを終えられたのは、やはりトラックモードをはじめとする制御技術のおかげかなと思います。
チーム・ピンクパンサーは藤島知子が予選アタックし、17番グリッドをゲット。私たちは強豪チームと違ってノーハンディなので、先行逃げ切り作戦でスタートドライバーも藤島が務め、一時は6位まで浮上します。2番手・いのまりも熟練のドライビングで安定した周回を重ね、3番手・池田美穂にチェンジ。ドライバー交代の時に1分間のピットストップが義務づけられており、給油の際にはさらに3分間の停止義務が。今回からトランスポンダーの交換作業なども加わってドタバタする可能性がありましたが、メカニックの神田誠さん、宮入友秀さん、関谷英一さんが的確に作業をこなしてくれて、順調にピットアウトできたのは本当に感謝です。
私は監督としてまだまだ見習いの2年目ですが、レギュレーションで定められているケテルのヘッドセットを使い、1周ごとにドライバーのタイムや前後の状況などを伝え、燃費をチェックし、「あと10周だから頑張ろう!」などと激励するのがいちばんの仕事。そばで聞いてたメンバーによれば、途中「カーセンサーには絶対に抜かれないで!」「カードラにできるだけついてって!」などと無茶なオーダーをしていたらしいのですが(笑)、無我夢中でしゃべっているので、まったく覚えてないんですよね。
とくに今回、3番手・池田のところから雨が強まり、4番手・谷口いづみのころにはザーザーと激しく降る時間帯もあって、ズリズリと滑るタイヤで怖いだろうなと思いながらも、お尻を叩き続けなければならないので胸が痛かったです。最終ドライバーの竹岡圭は、2年ぶりのサーキット走行なのに、雨&夜&タイヤボロボロという3重苦の中、走ってもらうことになってしまい、心の中ではごめんね〜と謝りつつ、「もうちょっと踏んでこう」なんて言い続け、ようやく20時7分。ガス欠するチームがちらほら出る中、無事にチェッカーを受けて完走することができました!
そしてギネス世界記録も認定決定! この素晴らしい瞬間に居合わせることができた、それだけで十分で結果は二の次ですが、正式結果は12位。晴れているうちにもう少し燃料を使って攻めておけばよかったかな、などとタラレバは尽きませんが、これを反省材料としてまた来年、もっと上を目指して頑張りたいと思います。