まるも亜希子の「寄り道日和」

秋のドライブで寄り道してみたい場所

鈴鹿サーキット内の「Honda RACING Gallery」では、メインホールに歴史的な2台のF1マシンをはじめ、たくさんの貴重なマシンが展示され、間近でじっくり見ることができます。落ち着いた雰囲気でモータースポーツの世界に浸る秋、というのもいいですね

 クルマ好き、モータースポーツ好き、F1好き、のりもの好きなら一度は見ておきたい名車や歴史、挑戦する人たちの想いに触れることができる場所として、大好きな2カ所を巡ってきました。

 1カ所目は、三重県にある鈴鹿サーキット内に、2024年4月に新設された「Honda RACING Gallery」。日本メーカーとして初めてF1GPに参戦した1964年から、2024年で60周年という節目を迎えたHondaにとって、世界一への挑戦の軌跡とそこから磨いた技術を発信する拠点という位置付けとなっています。

 レース開催日は観戦券が必要ですが、そのほかの日は鈴鹿サーキットに入場した人なら、入館は無料。メインホールまでの通路は、通称「スピードトンネル」と呼ばれて期待感を盛り上げてくれますね。そして見えてきたのは、ちょっと暗めのシックで落ち着いた空間に、いきなりドドーンっとスポットライトを浴びるHonda RA272! 初参戦翌年のメキシコGPでHondaのF1初勝利を獲得した伝説的マシンです。その隣りには、すっかりお馴染みとなったレッドブルカラーのHonda RB16B! 2021年にフェルスタッペン選手がドライバーズチャンピオンに輝いた、まだ記憶に新しいマシンですね。

 こうして並べてみると、60年という年月の長さをひしひしと感じます。「RA272ちっちゃ! コクピットせまっ!」とあちこちで驚きのヒソヒソ声が聞こえてきます。館内、けっこう静かなんでね、あんまりワチャワチャと騒ぎながら見るよりは、じっくり見入ってレースの世界に浸ることができる空間という印象です。

 手を触れることはできませんが、ものすっごく近づいて舐め回すように拝むことができるマシンもたくさん展示されています。実際、私もコクピットの中を覗いてみたり、当時はあまり見ることができなかったところも今になって「へ〜、こうなってたんだ」なんてわかったりするのが面白いですよね。エンジン単体などの展示もあるので、興味がある人なら半日くらいここで過ごせそうな感じです。

歴代のパワーユニット単体の展示もあります。文系の私にはちょっと難しいのですが、理系の皆さんなら技術の進化を見て感じることができるのではないでしょうか

 この2台のF1マシンが見られるのは常設展示エリアで、別の階では企画展示エリアがあって、10月上旬くらいまではSUPER GTに参戦してきたマシンが展示されています。たくさんの宝物を見せてもらった気持ちになるギャラリーでした。

モビリティリゾートもてぎ内のホンダコレクションホールには、リニューアルとともにホンダジェットが登場! まさか、その機内に入れる日が来るとは(飛ばないけど……)

 さて2カ所目は、こちらも2024年に、開業から25年を経て大幅リニューアルされたホンダコレクションホール。栃木県のモビリティリゾートもてぎ内にあって、入場料のみで追加の入館料は無料となっている施設です。以前から、すべて動態保存されているという貴重なクルマ、2輪、汎用製品たちから展示されるモデルが入れ替わっていたので、すでに数えきれないくらい行っている私でも飽きることはなかったのですが、リニューアル後に初めて行ってみてびっくり!

 エントランスの向こうにいきなり鎮座ましますのは、空飛ぶHonda、Honda Jetではないですか。しかも、私たち庶民には一生縁がないと思っていた機内に入り、シートに座ることができるという。コクピットの光景にワクワクしたり、「おっ、トイレここか!」なんて意外な発見があったりと、ここだけですでにテンションが上がってしまったのでした。

 リニューアルのコンセプトがストーリー展示ということで、2階から4階までフロアごとに4つの時代に分かれて、なぜこうした製品を世の中に出すことになったのか、時代背景などまで解説してくれているのがいいですよね。これなら、子どもと一緒に行った時にも「ふーん」って流されないように、まず親が理解して話してあげることができそう。ホンダには自転車用の補助エンジンや耕運機など、暮らしに根付いた製品もたくさんあるので、日本史に出てくるような歴史だけでなく、日本人の身近にあったものを実際に目で見て、心に刻んでいくというのは子どもの頃にこそ大切なことなのかなと思いました。

 ホンダコレクションホールはとてもとても1回じゃ見終わらないので、また何度も足を運んで、少しずつ制覇していきたいです。皆さんもぜひ秋のドライブで、寄り道してみてはいかがでしょうか?

コクピットには座れませんが、この光景を眺めるだけでもワクワク。これで空を飛ぶ気持ちって、どんな感じなんだろう〜と妄想がふくらみました
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。