まるも亜希子の「寄り道日和」

シビックe:HEVで挑んだ7時間耐久レース「Joy耐」 3年目の挑戦で掴んだ総合7位!

緊張の連続だった7時間を終え、和気藹々とした雰囲気でパチリ。みんなのいい笑顔がやり切った充足感を表していると思います

 ついに、シビックe:HEVで最後となるレースがやってきてしまいました。ホンダ若手エンジニアとモータージャーナリスト「TOKYO NEXT SPEED」がタッグを組み、2モーターハイブリッド「e:HEV」の走りを鍛えるプロジェクトの第二弾として、3年計画で作り上げてきたシビックe:HEV。いよいよ2026年が3年目となり、集大成としてモビリティリゾートもてぎの7時間耐久レース「Joy耐」での総合優勝を目指して挑戦したのです。

 2時間耐久レース「ミニJoy耐」では3連覇を成し遂げているのですが、やはり7時間の長丁場となると速さだけでも燃費だけでも足りず、天候や運も左右するのが難しいところ。これまでは1年目の2024年が予選で24番グリッド獲得、決勝レースは総合43位でフィニッシュ。2年目の2025年は予選で19番グリッド獲得、決勝レースは総合12位でフィニッシュ。着実に上がってきているのですが、セーフティカー導入のタイミングにうまく合わせられなかったり、ドライバーとピットの通信がうまくいかないといったケアレスミスなどもあって、悔しい思いをしてきました。

レース前最後の給油に向かう、ホンダの若手エンジニアのみんな。デスクワークだけでなく、こうしたレース作業もしっかりこなす様子が頼もしいです

 マシンの方は、ほしいところでパワーが出せない問題を改善したり、バッテリーの熱対策、足まわりのセッティング、はたまたドライビングの工夫にいたるまで、テストを重ねてコツコツと進化。さらに今回は、エアコンの冷気をバッテリー冷却にフルに使うためドライバーの暑さ対策が必要ということになり、クーリングベスト「BOGU」を導入。今年のJoy耐はまた新たなレギュレーションが取り入れられ、6時間経過時点までにSCが入った時間をアディショナルタイムとして加えることに。そのため、いろんなパターンをシミュレーションしていくと、最後に長時間連続でドライブすることになるかもしれない!? なんてパターンが浮上してきたんです。これはなおさら、暑さ対策を整えておく必要があるということになったのでした。

 ドライバーはこれまで通り、橋本洋平、桂伸一、石井昌道の3名体制。金曜日の練習走行で最後のチェックを行うとその効果は上々で、桂さんなんかは「乗ってる方が快適だよ」と余裕の表情です。ピットのホスピタリティ担当の私の方が、暑さでバテそう……という危機を感じ、空調服とペルチェベストを導入。そこに、高校野球の甲子園でも見かけたほど強力なネッククーラーまでつけて、見た目は「どこの現場の人?」とみんなに爆笑されましたが、倒れたら終わりなんでもうなりふり構ってられません(笑)。

 お天気はずっと雨予報が出ていて、金曜日の夕方からザーッと大雨に降られたんですが、予選日はなんとかAドライバー・橋本の出走前にドライ路面になり、まずは2分20秒245の好タイムをマーク! 本当は19秒台に入れたかったらしいですが……惜しいですね。続くBドライバー・桂さんもやりました、2分20秒469! この2人のタイム合算で、昨年より上になる11番グリッドを獲得しました。前を見ると、青山学院大学自動車部のフェアレディZや佐々木雅弘選手がドライブするTOYOTA自動車部のGRヤリス、Joy耐上位常連のHCM内野製作所DLシビックやM-RacingのS2000、Yuki&おぼっちゃまズのインテグラなど強豪ぞろい。昨年までは予選でかなり引き離されていたマシンたちですが、今年はすぐ背後に迫ることができ、決勝への期待も高まります。

この夏、懐かしいマシンがJoy耐に帰ってきました! e:HEVを鍛えるプロジェクト第一弾で私たちが戦ったフィットe:HEVが、ホンダ有志チームの#22 HMSC FIT e:HEVとして参戦。同じクラスでライバルとなりました

 そしていよいよ日曜日の朝9時、7時間の決勝レースがスタートしました。これまでなら、スタートだけで2〜3台抜いてジャンプアップ、なんてことも多かったんですが、さすがに今回はそうもいかないですね。でも、1時間も経たないうちに上位の速さ自慢のマシンたちは給油へ向かうはず。そこでわが#29シビックe:HEVが燃費の良さを活かし、一気に上位へ……。となるはずが! 想定外にどのマシンも燃費走行を徹底しているらしく、1時間経ってもまだほとんど走り続けているではないですか。ここであらためて、思った以上にこの7時間レースで勝つのは厳しいことを痛感させられました。

5回のドライバー交代が義務付けられており、シートベルトだけでなくドリンクやクーリングベストの接続、タイヤ交換といった作業を素早くこなすことが必須。ターマック・プロのメカニックさんたちも猛暑の中、抜群の手際良さで頑張ってくれました

 それでも、30ラップ目には上位マシンはほぼ給油へ向かい、#29は2位に浮上。ただし、#5POTENZA WAKO'S MART AW11のMR2は5番手からスタートし、#29よりもさらに長く44ラップまで無給油で走ってトップに。2人目の桂も53ラップで5番手まで追い上げますが、3人目の石井にチェンジする直前にSCが入り、タイミングが悪く順位をかなり落としてしまいます。そして67ラップでトップに立ったのが、シビック(EG6)の#89 BOGUクーリングベストEG6。#29も石井の粘り強い燃費走行で74ラップ目に4位まで追い上げますが、給油に時間がかかってしまい、またまた17位まで後退。なかなか思うように順位が上がっていかないんです。

 再び橋本、桂とつないでいるうちに6時間が経過し、アディショナルタイムは35分と発表されました。チームの計算だと、燃料はかなり燃費走行をしてもギリギリという状況。最後は石井に託し、上位のマシンが給油に入ることを願いつつ見守っていたのでした。するとフェアレディZがピットロード入り口で止まっているのが見え、なんと最後の最後でGRヤリスもガス欠でストップ。波乱が起こる中、どうにか#29 TNS CIVIC e:HEVは総合7位でチェッカー! クラス優勝のみで、総合優勝は叶いませんでしたが、夢にまで見たシングル入りを果たすことができました。あとちょっと、何かが足りなかった……という悔しい気持ちもあるんですが、少し前はまったく見えていなかった7位という順位は、十分に素晴らしいものだと思います。この悔しさが、きっと次につながる、いや必ずつなげてほしいと願いつつ、みんなで健闘を讃え合いました。

86やロードスター、ロータスといったレーシングカーと混ざっても、決して負けない速さと存在感を見せつけてくれるようになったシビックe:HEV。今回はとくにたくさんの人から「速くなったね」と声をかけられました

 何より、走っている姿が本当にカッコよくなり、レーシングカーとして貫禄さえ出てきたシビックe:HEVと、同じようにピットにいる姿がプロのレース屋さんらしくなってきた若手エンジニアのみんなを見ていて、これぞホンダのDNAだと実感。クルマも人も、やっぱり現場が鍛えてくれるものなんですね。これで終わってしまうのはかなりもったいないので、また形を変えてでもこうした活動ができるといいなと思います。まだまだ、ハイブリッドは面白くなるはずです!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。