まるも亜希子の「寄り道日和」
ディーゼルエンジンの生きる道
2026年8月6日 00:15
日本におけるディーゼル車人気を牽引してきたのは、独自の低圧縮技術やAdBlueを使わない排ガス処理を実現し、トルクフルで爽快な走りを楽しませてくれたマツダ・CX-5だったと私は思っているのですが、新型CX-5にはディーゼル車は設定されませんでしたね。
世界的に乗用ディーゼル車の需要が減っていることも要因だと思いますが、マツダ社内的には従来型ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」がこれ以上の進化をするのは容易ではないと判断したことや、2027年に登場するとされる新エンジン「SKYACTIV-Z」がディーゼルの持つ強みを継承しつつ、ガソリンエンジンとのいいとこ取りをするような特性になる予定ということが、大きな理由だと思われます。
現在、マツダにはCX-60とCX-80に搭載されている直6ディーゼルエンジンが残っていますが、それもこの先消えていってしまうのかしら……と心配していました。が、ディーゼルの生きる道をまだまだあきらめてないのだと思わせる現場に出会ったんです。それが、東京ビッグサイトで開催された体験型イベント「TOKYO GX ACTION MUSEUM」のマツダ・いすゞ自動車・平野石油の合同ブース。ここでは、廃食油や藻(モ)など食料との競合や森林資源破壊を起こさない原料を使った次世代バイオ燃料の開発が進められ、すでに複数の導入事例もあることが紹介されていて、実際に東京都内を次世代バイオディーゼル燃料で走っているというCX-80も見ることができました。
展示されていたCX-80は、見た目にはステッカーが貼られていなければ違いがわからないんですが、担当者に聞くと中身もなにも変えていないそう(笑)。いや、それこそが燃料の自由度が高いディーゼルエンジンの強みなんですよね。バイオ燃料を使うために車両側に大掛かりな改造が必要となってしまうのは現実的ではなく、そのまま給油できる「ドロップイン燃料」でなければ意味がないんです。このCX-80に使われているバイオディーゼル燃料はユーグレナが開発した「サステオ」で、全国エリアで燃料配送供給事業を行なっている平野石油と、法人向け車両リース事業に強みをもつ日本カーソリューションズが手を組み、すでに複数の企業に供給されているんです。現在、三井住友銀行本店の地下にも設置されているという、サステオの簡易給油機の現物も見ることができました。
その「サステオ」の特徴なんですが、廃食油を使用したバイオディーゼル燃料には大きく分けて2種類あります。1つは廃食油にメタノールを混ぜてその反応によってできたグリセリンを取り除いた「FAME」。もう1つは、廃食油を水素化処理してつくられる「HVO」で、サステオはこちらに属します。その理由としては、FAMEは構造的に酸化しやすく、長期保管に不向きで低温で固まりやすいこと。ブースには小瓶に入れたさまざまなバイオ燃料が置いてありましたが、見た目はFAMEだけ黄色く変色していて、古い油の匂いが強くしてきました。HVOは無色透明で、匂いもまったくナシ。サステオはこのHVOを51%混合したものですが、こちらもほとんど透明のごく薄い黄緑色で、匂いもほとんどなかったです。
だったらすぐにでもサステオを軽油に置き換えればいいじゃん、と思うところなのですが、こちらにもまだまだ課題があって、まずはなぜ51%の混合なのかというところ。これは現在の軽油の税制や規格に適合するのがギリギリ51%。税制の整備さえしてくれれば、もっと濃度を上げる準備はあるというのですから、急いでほしいですね。そして、原料となる廃食油の不足も課題です。国内の軽油使用量は年間約2000万tなのですが、回収量はわずか約50万t。しかもそのうち12万tは輸出されているという事実。同じ工程でつくられるSAF(持続可能な航空燃料)と原料の取り合いになってしまうことも懸念されています。そこで、育成期に大気中のCO2を吸収してくれる微細藻を原料としたバイオ燃料の開発も進められているのですが、こちらは回収と分離工程に時間がかかり、まだコストも高いのが課題。HVOは国内でもすでに製造する技術は十分にあるのですが、サステオに使用されるものも現在は北欧から輸入しているそう。
電動化はもちろん推進しつつ、BEVへの置き換えが困難なところにバイオ燃料の普及が早まれば、それだけ一気にCO2排出量を減らすことができるはず。今後の進化に注目していきたいと思います。




