東京モーターショー2015

自動運転技術「パイロットドライブ」搭載、日産「リーフ」の心臓部

ディスプレイ表示にNVIDIA「DRIVE CX」搭載

一般道を自動走行可能な日産の実験車。リーフをベースに作られている

 東京モーターショーの期間中、日産自動車はEV(電気自動車)「リーフ」を用いて、一般道の自動走行を行った。これは、自動運転コンセプトカー「Nissan IDS Concept」のベースとなる技術を搭載する車両で、現在の日産の自動運転技術を国内外の報道陣に体験してもらうためのものだ。

 日産は東京モーターショー開催と同時に、このリーフに搭載する技術を発表。環境認識デバイスとして、小型・高性能な量産試作段階の「3Dフラッシュライダー」を4基搭載したほか、カメラ技術としてアラウンドビューモニター用の4カメラに加え、車両の360度を確認可能な8カメラシステムを搭載(計12個)。77GHzの遠方監視用ミリ波レーダー、79GHzの周囲監視用のミリ波レーダーを備えている。

日産、自動運転技術「パイロットドライブ 1.0」搭載車を2016年に日本市場投入

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151023_727208.html

 また、来たるべき自動運転時代へ向けたロードマップも発表。自動運転コンセプトを「ニッサン インテリジェント ドライブ」と命名するとともに、高速道路上での安全な自動運転を可能にする技術「パイロットドライブ1.0」搭載車を2016年に日本市場に投入。2018年には高速道路上での車線変更を自動的に行う、複数レーンでの自動運転技術の実用化を目指し、2020年には、交差点を含む一般道での自動運転技術の導入を計画している。

 つまり、今回公開されたリーフは、日産の自動運転技術であるパイロットドライブを搭載しているものの、2016年に市場投入される1.0車両ではなく、先を見据えた一般道も走ることができる先行開発車両となっている。そのため、とくにバージョン番号は付けられていないとのこと。

 今回そのリーフの心臓部を見る機会があったので、簡単に写真で紹介しておく。現在の自動運転実現に必要な容積を実感することができるのではないだろうか。

一般道を自動運転で走行するリーフ。トンネルの中なども白線を認識、自動走行していた
リーフのラゲッジルーム。機材がところ狭しと積まれている

 自動運転の制御システムは、ほかのメーカーなどと同じくラゲッジルームに置かれている。これは容積を確保しやすいほか、実験車両であるため様々なデータや機器にアクセスしやすくするためだ。Car Watchでは、半導体メーカーであるNVIDIAの開発者向けイベント「GPU Technology Conference 2015」で展示されたアウディの自動運転コンセプトカー「Jack」のラゲッジルームを紹介しているので見比べていただければと思う。

アウディ「A7 スポーツバック」ベースの自動運転コンセプトカー「Jack」展示

http://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/gtc2015/20150319_693504.html

 アウディのJackも開発車両であるためPCによって制御されていたが、日産のリーフも同様だ。大きく分けて左側に心臓部となるCPUなどがあり、右に表示やログ装置が置かれている。左側には各種センサーからの情報をCANに投入するためのパッチベイがあり、実験しやすくなっているように見える。リーフではベース車のCANのほか、データ容量に対応するためにローカルCANも増設しているという。そのほか、Ethernetも用いられているようだ。そのパッチベイの下に、制御の心臓部があり、ほとんど見えない状態になっていた。

 右側にあるノートPCは、リーフの状態などをモニタリングするためのもの。同時にモニタ情報を記録でき、ログ装置としても働いているという。その下にはNVIDIAのデジタルコクピット開発キット「DRIVE CX」も置かれており、このリーフのメーターパネルはDRIVE CXによって描画されているという。とはいえ、このDRIVE CXは出荷から数カ月の製品のはず。開発を担当する日産自動車 電子技術・システム技術開発本部 部長 飯島徹也氏によると「現段階では、よいと思われるものはどんどん投入している。これもつい先日投入したもの」こと。日付を見ると、10月28日の文字が刻まれており、PCで開発したデジタルコクピットのリソースを、DRIVE CXに組み込んでいるのだろう。日本で最も高い開発能力を持つ自動車産業の底力が感じられる部分だ。

左上の緑の部分がCANパッチベイと思われる部分。CANとセンサーを接続する部分になる。系統数は不明
その下にあるメイン制御部分。ヒートシンク付きのケースに入っているようだ。詳細は不明
右上部のノートPC。ストレージを抜き差しできるインターフェースを備え、ログデータやモニタリングなどを行うブロックであることが分かる
その下にあるのがなんらかの通信関係ユニット。EthernetやTx、Rxの文字が見える
さらに下にはNVIDIAのデジタルコクピット開発キット「DRIVE CX」が置かれていた
自動運転中のデジタルコクピット表示。左下に「NAVI-PILOT」の文字が読める。この辺りの用語は業界で統一してほしい部分

 このリーフの同乗走行記については、自動運転に詳しい交通コメンテーターである西村直人氏の記事を後日お届けする。

編集部:谷川 潔

http://car.watch.impress.co.jp/