人とくるまのテクノロジー展 2019

日本No.1のオイルシールメーカーとしてエンジンの低フリクション化を進化させるNOKブース

最新のクルマではユーザーには見えないパーツが面白い!

2019年5月22日~24日 開催

入場料:無料(登録制)

NOKブースで大きくアピールされていた「Le-μ’s(レミューズ)」シリーズ

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日までとなっており、入場は登録を行なうことで無料となっている。

 人とくるまのテクノロジー展は自動車製造業界向けの展示会なので、展示されているものは自動車を構成する部品や技術。それだけに、自動車ユーザーが日ごろはあまり目にすることもなく、使われていることも知らないような部品や技術を見ることができる場である。

 ここで紹介するNOKもそんな「ユーザーに見えないパーツ」を供給するメーカー。この会社は日本初のオイルシールメーカーであり、現在もオイルシールの供給に関しては「国内シェアNo.1」という自動車製造業界での影響力が大きい会社だ。また、自動車用製品以外にも、工業用ゴム、樹脂製品、防音・防振製品、エレクトロニクス製品、工業用機能部品なども生産している。

ブース番号 348のNOKブース

 今回のNOKブースでは、低フリクション技術を用いた「Le-μ’s(レミューズ)」という新ブランドを大きくアピールしていた。このレミューズ製品では、「オイルシール」「シールリング」「SP処理Oリング」「回転・揺動用ロッドシール」がラインアップされている。

 これらのレミューズ製品には4つの新技術が採用されているので、代表的な製品であるオイルシールを例に紹介していこう。

NOKブースの主役は低フリクション技術を用いた「レミューズ」シリーズ

 1つ目が形状設計技術。オイルシールはリップと呼ばれる部分がシールするパーツに接触するが、ここの緊迫圧が必要以上に高いと摩擦力が過剰になってしまうという。ただ、シール性の確実さを考えれば「摩擦が高いということはしっかりシールされるわけだからよいのでは?」と素人的に考えたりもするが、現代のエンジンでは低フリクション化が求められるので、オイルシール部の抵抗という小さな点まで軽減することが求められている。

オイルシールのリップ断面の変遷。新しいものではリップ部の剛性を低くしている

 そこでレミューズでは、リップ部の緊迫圧を適正化する低緊迫圧化の設計を行なった。これにより、従来品より30~45%ほどのトルク(抵抗)低減を実現したという。また、摩擦部表面の粗さも最適化することで摩擦係数を下げている。こちらの技術では、従来品と比べて15%のトルク低減効果を発揮する。

レミューズではリップ部の緊迫圧を下げるため肉厚を薄くしている
従来品との肉厚比較

 次は表面機能設計技術というもの。これは耐摩耗性に優れた低摩擦コーティングを摺動部に塗布する技術だ。この技術ではコーティング粒子が細かいことに加えて薄い塗布が可能なところが特徴であり、耐摩耗性に優れるという面も持っている。この低摩擦コーティングを行なうことで摺動部に低トルク効果(摩擦が少ない)が生まれ、長期に渡って持続する。効果は従来品と比べて30%のトルク低減ということだ。

指で触れるコーティング効果のサンプル展示。コーティングなしの面では指を横に動かすと引っかかりを感じるが、コーティングされた面に入るとスッと動く。想像以上に滑りがよかった

 オイルシールの摺動面ではオイルを潤滑のために使うが、ここで摺動面にある素材の凹凸の具合(表面の粗さ)に注目。オイルの流れとオイルが溜まる部分の形状を最適化することで、従来の製品よりも厚い油膜を形成できるようにしている。これも摺動部の摩擦を低減するための技術だ。従来品に対して20%のトルク低減効果となる。

 最後は低トルクグリース。グリスを塗布する部分でさらに抵抗を下げるため、関連会社であるNOKクリューバーとグリスを共同開発して、それをレミューズのオイルシールに採用している。こちらは従来品より30%のトルク低減効果があるとのこと。

低トルク化(摩擦力が低い)を求めるための技術がレミューズ。これはトランスミッションで使われるシールリング
このシールリングは樹脂の射出成型品。側面の色が変わっているところに凹みがあり、ここに潤滑用のオイルが溜まることで油膜が形成され、低トルク化を実現

 オイルシールやシールリングなどはエンジンを構成する部品では小さな物だが、これらの新技術が投入されていて、それらが積み重なることで現在のクルマの高性能化を実現しているのだ。人とくるまのテクノロジー展に足を運ぶ時には、NOKのような「ユーザーには見えないパーツ」を製造するメーカーにも注目していただきたい。

複雑なライト形状を成立させるFPC

NOKの関連会社である日本メクトロンのブース

 関連会社である日本メクトロンもNOKの隣にブースを構えていた。こちらはFPC(フレキシブル基盤)を製造するメーカーだ。最近のクルマでは灯火類などの形状が複雑化していて、そこにLEDなどの小粒の光源が配置されているが、この立体的な作りを成立させているのがFPC。極めて薄く自在に曲げることができる基盤だ。ほかにもシフトレバー部のギヤ選択スイッチなどにもFPCが使われている。

 また、FPCは従来のワイヤーハーネスより軽量なので、ハーネスの代替えとして使うと大幅な軽量化が実現できる。実際にはコストの面から採用されていないが、いずれFPCによる配線が採用される日が来るかもしれない。

日本メクトロンのブースではFPC(フレキシブル基盤)の技術と製品を展示
複雑な形状のライトやLEDランプなどにFPCが使われている
予防安全機器にもFPCは使われる。このほかにもカーナビやオーディオ、各種センサーなど、クルマのあちこちでFPCは使われている
ATのギヤ選択スイッチ基盤の照明にもFPCが使われていた
ワイヤーハーネスをFPCに置き変えることも可能。大幅な軽量化になるが、コスト的に実用には至っていないとのこと

深田昌之