イベントレポート

【東京モーターショー 2019】アイシングループは昔のナビから最新の電動化技術まで展示

アイシン精機の伊勢氏が電動化技術へさらに力を入れることを明言

2019年10月23日 開幕

2019年10月25日 プレビューデー

2019年10月25日~11月4日 一般公開日

 10月23日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第46回 東京モーターショー 2019」が開幕した。10月25日はプレビューデー、10月25日~11月4日が一般公開日となる。

 西3ホール(W3202)にブースを出展するアイシングループは、アイシン精機 取締役社長の伊勢清貴氏によるプレスブリーフィングを実施した。

アイシン精機株式会社 取締役社長の伊勢清貴氏

 伊勢氏は「イノベーションにより社会に貢献していくことこそが、われわれの使命であると考えています。今は地球温暖化による気候変動やエネルギー問題など、世界規模で課題を抱えています。アイシングループは会社の設立当初から今日に至るまで、イノベーションをさまざまなかたちで具現化し、常に社会課題の解決に挑み続けてきました。そして2016年1月に持続可能な社会の実現を目指し、国連でサステイナブルデベロップメント「GOALS」が裁定されたことを受け、アイシングループも優先課題を定めて社会課題の解決を加速させています」と切り出した。

2016年に国連で裁定されたサステイナブルデベロップメント「GOALS」。これを受けてアイシングループも取り組むべき優先課題を定めた

 伊勢氏は続けて「それでは、アイシングループが過去から課題解決にどのように取り組んできたのかご紹介していきます。私たちは1978年に技術系シンクタンク『テクノバ』を設立いたしました。このテクノバは設立当初から世界が抱えるエネルギー問題の国際政策動向や、モビリティ社会における新技術創出と社会基盤整備、そして人工知能をはじめとする先端技術などについて、国内外に関係機関とともに探索や提言を行ない、開発技術を通じて人類の発展に寄与するための活動を行なってまいりました。その結果、国内外に基礎技術や先端開発の拠点を構え、エネルギー、モビリティ、エレクトロニクス、医療など、さまざまな分野で研究開発を進めてきました。このように世の中の動きをいち早く捉えることで、さまざまな知見や技術を積み上げてきた私たちだからこそ、今ある社会課題に対して解決していけると確信しています」と語った。

1979年に技術系シンクタンクのテクノバを設立
テクノバの一員であるイムラ・アメリカが開発したフェムト秒ファイバーレーザーは、対象に熱を与える間もなく分子間の結合を切断する技術。レーシック手術で実用化。現在は工業用などにも用途は広がっている

 次に伊勢氏が語ったのは、アイシングループの直近の取り組みについてだ。「アイシングループは電動化への取り組みとして、2004年にハイブリッドシステムを送り出して以降、2006年には2モーターハイブリッド、2016年には電動4WD用のeアクスル、2019年には1モーターハイブリッドなど、さまざまな電動化部品で実績を上げてきました。そして、2018年までの電動化ユニット生産累計では約370万台を超え、サプライヤーとしては世界トップの実績を持っています。さらに2020年にはEV車両向けeアクスルの量産がスタートします。このユニットは2020年発売のC-HRとIZOAに搭載される予定です」と紹介した。

アイシングループは、部品メーカーとして初めてハイブリッドシステムを送り出して以降も、さまざまな電動化製品をリリースしている
2018年までの電動化ユニット生産累計は約370万台
2020年にはトヨタ自動車「C-HR」「IZOA」用のEV車向けeアクスルの量産を開始する
2025年までに駆動ユニットの出荷において、電動化ユニットの比率を30%までアップしていく目標を掲げている

 続いては、地球温暖化防止に向けたクリーンで効率的なエネルギー研究について紹介。伊勢氏は「1991年から水素エネルギーに着目し、燃料電池の基礎研究に取り組み、2000年よりトヨタ自動車と共同で本格的な研究開発が開始されました。その後、トヨタ自動車から燃料電池車としてミライが発売される一方で、アイシンは2012年に家庭用燃料電池の『エネファーム』を開発して販売を開始しました。そのほかにも社会貢献活動として、災害時に被災地へ電力やシャワーを提供することも行なっています」と語った。

クリーンで効率的なエネルギーの提供に向けたアイシングループの取り組みについて

 社会貢献の項目はもう1つある。それが自動駐車技術の開発だ。伊勢氏によると、国内の自動車関連事故の約3割が駐車場で発生しているという。そこで伊勢氏は「アイシングループが得意とする低速域での自動運転技術を通じて、自動駐車の実現に向けた技術開発を進めております」と説明した。

 そして、2003年にステアリング操作が不要な自動駐車技術を開発し、それが2代目の「プリウス」に採用された。その技術をさらに進化させて、ステアリングだけでなくアクセルやブレーキの操作も不要な自動駐車技術を開発。それが2020年に発売される新型「ヤリス」に搭載されている。

自動車関連の事故の約3割は駐車場で起きているとのこと
2003年から実用化された駐車支援技術だが、2019年にはアクセルとブレーキの操作も不要になった
公共駐車場では2020年の開業を目指して、完全自動のバレーパーキングの開発も進めている。これは愛知県内で実証実験をしている最中だ

 伊勢氏はさらに「交通事故につながるわき見運転など、ドライバーの状況を検知する技術にも取り組んでいます。その1つがドライバーモニターシステムです。2006年に世界で初めて運転手の顔の向きを認知するシステムを開発して量産車にも採用されましたが、現在は運転手の顔の向きだけではなく、視線や目の開閉状況を検知したり、ドライバー以外の乗員といった車内の状況まで記録したり、技術を進化させています」とドライバーモニターシステムの開発を積極的に進めていることに触れた。

アイシングループが手がけたドライバーモニターシステムの歴史と概要
アイシングループが手がけたカーナビの歴史
最初はGPSで測位した位置と地図を組み合わせてナビゲーションするものだった。「クラウン」や「ソアラ」にオプション設定されていた
交通不便な地域での外出促進に貢献する「チョイソコ」というサービス。一部地域で導入しているが、多くの自治体などからも問い合わせがあるという

 およそ15分くらいのスピーチであったが、アイシングループが何をする会社でこれまでから現在まで、どんなことをしているかについて要約されていたので分かりやすい内容だった。

 アイシングループブースには過去の技術から最新の技術までが展示されているので、東京モーターショーに行かれたときは、ぜひ西3ホールのアイシングループブース(W3202)にも立ち寄っていただきたい。

アイシングループでは熟練の技を若手に伝承する活動も行なっている。この「トヨタスポーツ800」もその活動でレストアされたクルマだ
アイシンとデンソーが電動駆動モジュールの適合設計販売を目的に設立した「BluE Nexus」の駆動モジュール
EVシステムの展示
すでに市販されている技術の展示。これを見るのも参考になるだろう

深田昌之