イベントレポート 東京オートサロン 2026

トムス、現代の技を活かすレストア事業「トムスヘリテージ」で仕上げたAE86レビン展示中

引退したメカニックと現役メカニックの二人三脚でトムスの技術を正しく継承

2025年の東京オートサロンで公開されたトムスのレストアサービスは「TOM'S HERITAGE」というブランドになり、仕上げられたAE86が展示された

 トムスは、1月9日~11日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されている「東京オートサロン2026」にブースを出展している。今回の注目ポイントはトムスが手がけるレストア事業の「TOM'S HERITAGE(トムスヘリテージ)」で仕上げたAE86レビンである。

 このTOM'S HERITAGEは単なるレストアサービスではなく、トムスが長年のレースで培った技術をもとに再構成していくもので、レストアとアップデートを並行して実施するのが特徴。

展示車のAE86レビンは3ドア。当時レースは3ドア、ラリーやダートトライアルは2ドアという選ばれ方が一般的だったので、トムスが3ドアを選択するのは当時を知る人にとっても納得のもの

 創業50年の歴史を持つトムスは、AE86が新車で発売されていたころからこのクルマをレース仕様に仕上げていた経験を持ち、4A-Gエンジンに関してもAE86用からAE111用まであらゆるチューニング手法を知り尽くしている。

 しかし、AE86といえば昭和のクルマであり、4A-Gの最終型を搭載していたAE111も1990年代のクルマなので、当時のレースメカニックはすでにトムスを退職している。そして現役の若いメカニックもレースの仕事として4A-G搭載車を触る機会はない。

 AE86と現代のクルマでは作りや性能に大きな違いはあるが、ものづくりの視点から見ると過去の技術もとても重要なものとなる。そこでトムスとして技術の継承を行なうために、TOM'S HERITAGEの現場では引退したメカニックをアドバイザーとして参加してもらっている。実際に作業するのは現役メカニックで、この二人三脚によりトムスの技術が正しく継承されていくものになっている。

 ただし、すべてを当時のままで仕上げるわけではない。TOM'S HERITAGEでは現代の素材や技術を盛り込むことで、当時にはなかった乗りやすさや快適さ、気持ちよさを追加することも狙っており、匠の技を取り入れながら現代風に仕上げているのがポイントだ。

 その点について今回の展示車で言えばまずエンジン。展示車に搭載されているのはAE101用4A-GベースのTRA-4AL165と名付けられたエンジン。内部はヘッドから腰下までトムスが培ってきた技術を投入した作りになっているが、当時と違うのは補器類のチョイス。AE101用の4A-Gは点火装置がデスビ式だったが、これをダイレクトイグニッションに変更して燃焼効率を向上させている。

 また、AE101の4A-Gは吸入空気量測定にフラップ式のエアフロメーターを使っていたが、TRA-4AL165の性能を引き出すために吸入抵抗が大きく、空気量測定の精度が現在のレベルではないエアフロメーターを取り外し、圧力センサーでの制御に変更。そして吸気の作りもサージタンクを取り外したファンネル仕様に変更した。

 このようにエンジン制御のシステムを大きく変更してるので、ECUは純正ではなくレース用EUC(LINK ECU)を使用している。

エンジンはAE111用の5バルブ4A-Gを縦置きに搭載。点火装置はデスビからダイレクトイグニッションに変更
4連スロットルは標準装備だが、吸入空気量測定はエアフロメーターで行なっていたので、純正ECUではこのようなファンネル仕様は成立しない。そこでECUも変更している

 エンジン内部はVVTを取り外したうえでハイカムに交換。腰下も全て手が入った仕様となる。ちなみにTOM'S HERITAGEではエンジンスペックを3種類用意していて、もっともベーシックなのが標準オーバーホール+αの「Aスペック」。次にAスペックをトムスが厳選したパーツでチューニングを施したパフォーマンス版の「Bスペック」、最後はユーザーに合わせて仕様を決めるオーダーメイドエンジンの「Cスペック」となる。

スロットルまわりだけでなくEXマニの形状も独特
4バルブ4A-Gのショートブロックの展示
こちらは加工済みヘッド

 ボディについてはサビや修復痕などをきれいにするだけでなく、レースで培ったノウハウから入れるべき部分に補強を施している。また、どんなにきれいにレストアしてもサビは再び発生するものであるが、それが極力起こらないように錆止め作業も入念に行なっている。

フロントスポイラーやリアスポイラーはついていないが、下面は模型で表すようなアンダーパネルが装着されている。これにより車体全体のエアロバランスを最適化。グランドエフェクトを活かして安定した操縦性能を実現している

 インテリアでのポイントはシート。現存するAE86ではシート交換されている車両も多いが、トムスの見立てではAE86純正シートのサポート性もそれなりに優れているので、ストリートメインであればサポート性能は十分あるとのこと。

 ただ、比較的きれいな状態を維持しているシートであっても、汚れや痛みは気になることが多いので、TOM'S HERITAGEでは現代の材料を使いシートをリフレッシュ。クッションのスポンジも交換し、表皮は当時のイメージに合うものを使用する。さらにドアトリムのパットも同じ生地で張り替えているので室内の雰囲気が統一されている。このような仕上げにより座り心地も向上するし清潔感もまるで違ってくるのだ。

 最後に気になる製作費だが、車両価格込みで1650万円~。車両持ち込みの場合の価格は1320万円~とのこと。作業期間は車体のレストアレベルによって変わるが、目安としては1年以上は見ておいたほうがいいだろう。

 価格的にはこれまで見たAE86の中では最も高価なものであるが、実車を見るとこれまでのAE86のレストア車両とは別の価値を感じる部分もあった。万人向けのサービスではないと思うが、この内容のサービスを希望する人は間違いなくいるだろう。

インテリアも再生されている
貴重な当時のステアリング
シートは現代の素材を使って張り替えを行なっている。質感は向上し、色も変更されている。なにより室内に旧車独特のにおいがない
シートを交換するのは簡単だが、オリジナルのシートを生かすことに価値がある。街乗り+αであれば、ノーマルシートのサポートでも十分スポーティに走れるという
AE86でトムスといえば「イゲタホイール」。リバイバルしたイゲタホイールは2ピース構造になった(オリジナルはワンピース)
2ピースにしたことでディスク系が小さくなり、それに伴いスポークも短くなった。そこで正面のスポーク形状を若干細くすることで、視覚的な調整を入れている
イゲタホイール・リバイバルは7.5J×15の展開でカラーは2色。こちらはホワイト
こちらはゴールド。展示車に装着してるのはこちら
深田昌之