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トヨタ、環状骨格ボディやVSCなど安全性を引き上げた新型「コースター」発表会

「もっといいCVづくり」第1弾

2016年12月22日 開催

 トヨタ自動車は12月22日、マイクロバス「コースター」をフルモデルチェンジ。2017年1月23日に発売すると発表し、同日に東京 お台場 メガウェブで記者発表会を実施した。

 24年ぶりのフルモデルチェンジで4代目となるコースターの価格は、バスが594万~887万2200円、ビッグバンが619万3800円~677万1600円。このほか、新型コースターのバリエーションなどについては関連記事「トヨタ、24年ぶりに『コースター』をフルモデルチェンジ。2017年1月23日発売」を参照していただきたい。

コースター GX ロングボディ
コースター EX
コースター GX ロングボディ
ヘッドライトは輸出先での入手性などを考慮して全車ハロゲン式を採用
ミラーは下側の鏡面曲率を変化させ、広い視界を確保するワイドビュータイプ
リアコンビネーションランプ
ハイマウントストップランプとリアアンダーミラーを全車標準装備
29人乗り仕様(写真)と25人乗り仕様の車両は車両後方にラゲッジルームを設定
タイヤサイズは全車215/70 R17.5
運転席のドアはヒンジ式
フロント側面のサイドマーカーランプに「エアロスタビライジングフィン」を設定
コースター EXの展示車は寒冷地仕様車にオプション装着できる「パワーヒーター」が取り付けられていた
従来型のコースター EXも展示されていた

「思い描いたすべてをやりきった」と山川主査

トヨタ自動車株式会社 CV Company CVZ-ZU 主査 山川雅弘氏

 発表会ではトヨタ自動車 CV Company CVZ-ZU 主査 山川雅弘氏が新型コースターの車両概要について解説。山川氏は1963年に発売された「ライトバス」から続く50年以上続くコースターの歴史について紹介。先代モデルとなった3代目コースターは1993年にデビューして、24年に渡って人々の身近な移動手段として愛用されてきたとアピール。日本をはじめ現在では世界110カ国以上に輸出され、グローバル累計販売台数は55万台以上になっているほか、2016年の国内シェアは、日野自動車にOEM供給している「リエッセII」と合わせて3分の2以上を獲得しているという。

 4代目となる新型コースターの開発では、「快適な室内空間」「目を引く内外装デザイン」「安全性」「品質・耐久性・信頼性」という4つのポイントに主眼を置いたと解説。広くゆったりとした客室空間を演出する「快適な室内空間」では、車両の全高、全幅を拡大して室内高を従来比で+60mmの1890mmに設定。室内幅は乗員の肩の位置で片側40mm増やし、窓側席の人が肘を置いてゆったりと快適に過ごせるようにしている。また、最上級グレードとなるEXのシートでは表皮にファブリックと合成皮革のコンビネーションとしたほか、座面のクッションに低反発ウレタンを使ってしなやかで快適な走りを実現している。サイドウィンドウは高さが50mm広がって視界が広くなっていることに加え、全面のガラスにUVカットガラスを採用した。

これまでにグローバルで55万台以上を販売。需要は増加傾向にあるとの分析
コースターとリエッセIIを合わせて国内シェアの3分の2以上となっている
日本国内では幼稚園バスやホテルなどの送迎がメインとなっている
新興国では手ごろな公共交通の手段として利用されるケースも増え、今後の需要拡大が期待されている
開発のポイントとして4点を紹介
全幅の拡大に伴い室内幅も増え、開放感のある室内空間となった
EXではファブリックと合成皮革のコンビ表皮、低反発ウレタンのクッションなどを使うシートを装備する
日焼けなどを気にせずにすむUVカットガラスを全面採用。EXとGXではサイドウィンドウが濃色グレーとなっている
エンジン周辺に防音材を配置してボディ剛性を強化したことから静粛性も大きく高まった

 ボディの構造面ではフロア、サイド、ルーフトップの骨格を強く結合させて環状構造にしたほか、従来モデルにはなかった助手席脇のピラーを新設。さらに縦方向の溶接を一般的なスポット溶接ではなく、接合面が広いレーザー接合としたほか、ボディ各所に高張力鋼板を採用。こうしたボディ剛性強化に加え、足まわりでは従来はリアのみだったスタビライザーを前後標準装備に変え、ボディのサイズアップに伴う重量増に対応してショックアブソーバーの減衰力を最適化。これらによってフラットで安定感のある走行性能が実現され、車内の静粛性も大きく向上させている。

 また、強化したボディは地上80cmの高さから車両を転覆させる独自のロールオーバーテストを実施。ボディの変形量が小さいことも確認しており、このほかに安全性では、横滑りを防止するVSC(ビークルスタビリティコントロール)全車に標準仕様。運転席と助手席にはSRSエアバッグを装備し、客席では通常のシートで3点式、補助席に2点式シートベルトを備えている。

 最後に山川氏は、新しいコースターはトヨタ車体、岐阜車体工業、日野、トヨタの4社が一体となって開発に取り組み、すべてのユーザーに進化を感じ取ってもらえる魅力的な商品とすることを目指し、思い描いたすべてをやりきったと力説。「新型コースターがこれまでどおりみなさまの身近な足になって、笑顔をお届けできることを願っております」と締めくくった。

乗員の増減で荷重が大きく変化することから、従来型コースターでもリアにスタビライザーを標準装備していたが、安定した走りを実現するためフロントにもスタビライザーを装着することになった
EXで標準装備する「ルームラック」はボディ拡大と合わせてサイズアップ。中型のスポーツバッグも置けるようになった
乗降ステップは先代から65mm奥行きが広がり、オプションの追加ステップも設置しやすくなった
ドライバーの使い勝手を向上させるための装備も充実。アクセサリーソケット近くの小物入れはスマートフォンなどを置くことを想定したスペースとなっている
ボディの上側でモダンさを、下側でタフさを表現している
インテリアのテーマは「Function&Hospitality」
赤い部分の環状骨格でキャビンをしっかりと守り、快適な乗り心地や静粛性、安定氏らはシリなどを実現する
VSCを日本国内のマイクロバスとして初採用
環状骨格、レーザー接合、高張力鋼板などをボディに採用
EX 6速AT車のインパネ
中央に大きくスピードメーターを配置。3500rpmからレッドゾーンとなっている
電子制御6速ATは1速固定モードも用意する
コースター GX ロングボディ 5速MT車のインパネ。5速MTはビッグバン以外の全グレードで選択可能
クラッチペダルとブレーキペダルのあいだにステアリングシャフトが通過している
運転席横のドア側にパーキングレーキレバーを配置する
運転席側にも乗降用のステップを設定
乗客スペースのシートは、運転席側(右側)が2列、通路を挟んで助手席側(左側)が1列で、通路に補助シートを展開することも可能
通常のシートはシートバックにリストラクターを内蔵する3点式、補助シートは腰部分を固定する2点式のシートベルトを設定する
シートバック背面にカップホルダー、シートポケット、フックなどを用意
シートバックは側面のストラップを引いて2段階でリクライニングできる
CD・AM/FM(USB/AUX端子付)オーディオを全車標準装備。オプションの7型VGAディスプレイを備える純正T-Connectカーナビに入れ替えることも可能
EXとGXはダイヤル式のオートエアコン(写真)、LXはレバー式のマニュアルエアコンを採用する
センターコンソールに引き出し型のカップホルダーを用意
ステアリングから近い位置にVSCのOFFスイッチ、6速ATの1速固定スイッチなどをレイアウト
ウィンドウ類の開閉はすべてスライドタイプ
先代モデル(左)では大型のスライドウィンドウを配置していた助手席側に、新型(右)からピラーが設定され、ボディ剛性が高められた
左が先代モデル、右が新型で、ウィンドウ下側の厚みを増やし、アームレストとして利用できるようにしている
乗降ステップの奥行きを先代モデル(左)から65mm広げた

新型コースターは「もっといいCVづくり」の第1弾

トヨタ自動車株式会社 CV Company プレジデント 増井敬二氏

 このほかに発表会では、トヨタ自動車 CV Company プレジデント 増井敬二氏も登壇。4月に始動したトヨタのカンパニー制におけるCV Companyの役割などについて説明を行なった。増井氏はカンパニー制の狙いを「各機能を製品軸で集約することで、意思決定のスピードと質を高め、持続的な成長に向けた『もっといいクルマづくり』を推進すること」と解説。CV CompanyのCVは「コマーシャルビークル」の略で、CV Companyは商用車に加え、SUVやトラック、ミニバンなどの車種群に責任を持つ組織となっている。

 CV Companyに属するクルマは、2015年実績での台数規模でトヨタ全体(919万台)のうちおよそ3割にあたる262万台を占め、全体収益に対する貢献度の大きい「トヨタの屋台骨」で、増井氏は「地盤をしっかりと固めるミッションをになっていきたい」と意気込みを口にした。

 また、CV Companyの今後については、ユーザーや社会で望まれるクルマをスピーディに市場に届ける「もっといいCVづくり」、バリューチェーン全体で価値を生み出す「お客さまの嬉しさ」、トヨタ車体との一体経営による「仕事の変革」の3点を挙げた。具体的にはタイムリーな商品強化を図り、ラインアップ拡充と新技術の牽引による未来対応に取り組むとする。タイムリーに商品強化を行なうためにはすばやい取り組みが必要だが、これまではトヨタ全体での商品戦略が定められ、限りのあるリソーセスをどのように配分するか優先順位を決めて仕事が進められていたが、商用車系のモデルには日が当たりにくい面もあったと語る。しかし、今後は一定の条件のなかで、カンパニー内での優先順位で開発が推進できるようになるという。

 増井氏は「人々の生活を支えるクルマだからこそ、地道に商品強化を図っていきたい」と述べ、24年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型コースターについては、タイムリーな商品強化を進めていく象徴となる第1号車であると位置付けた。また、これまでは商品となるクルマそれぞれが「点」として戦ってきたが、今後はCV Companyの担当する車種を俯瞰してそれぞれのクルマの特性や担うべき役割などを踏まえ、車種群の全体最適を考えた「面」でのラインアップ戦略取り組んでいくと方向性を示した。

 最後に増井氏は、新しいコースターではさまざまな技術を盛り込み、快適性や安全性を大幅に向上させているとアピール。商品自体に加え、これまでトヨタ車体の吉原工場で生産を行なってきたが、フルモデルチェンジで新たな技術や工法などを採用するべく、トヨタ車体のグループ会社である岐阜車体工業に生産を移管することになったことも明かした。製品から生産面まで大きく一新してリリースする新型コースターを「CV Companyが今後進むべき道を象徴するクルマになった」と表現し、「これからもいっそう世のため人のため『もっといいCVづくり』進めてまいります」コメントした。

4月から進められているトヨタのカンパニー制のアウトライン
CV Companyは商用車、SUV、トラック、ミニバンなどを車種群として取り扱う
CV Companyが取り組んでいく3つの課題
「もっといいCVづくり」の具体的な施策
今後はCV Company内での優先順位にしたがって開発を推進
商品戦略を「点」から「面」に変え、台数の最大化を目指す
走る距離の長いCVで環境性能を高め、CO2削減などに貢献していく
車両の購入以外にも、架装やメンテナンスなどバリューチェーンでの出費が多いCVだけに、全体での拡充でユーザーに貢献していく
現場への権限委譲を推し進めて開発のスピードアップを図る
メキシコの「TMMBC」での生産能力を6万台/年引き上げる増強計画
24年ぶりにフルモデルチェンジした新型コースターを「もっといいCVづくりの第1号車」に位置付けている