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アイシン精機、人工知能開発など先端技術の新開発拠点「台場開発センター」開所式
3輪パーソナルモビリティ「ILY-Ai」、自動運転デモを体験できる「Smart Cockpit」の紹介も
2017年5月10日 00:00
- 2017年5月9日 開催
アイシン精機は5月9日、東京 お台場に開設した「台場開発センター」の開所式を開催した。
同社は国内に3カ所(本社、東京、九州)、海外に6カ所(北米、欧州、中国、インド、タイ、ブラジル)に開発拠点を構え、世界各地で技術開発に取り組んでいる。これまで東京都港区にあるオフィスで半導体の要素技術を中心に開発を行なっていたが、自動車業界を取り巻く環境変化に迅速に対応するためお台場に既存のオフィスを移転・拡張した。
台場開発センターでは、同社が次世代成長領域に位置付ける「ゼロエミッション」「自動運転」「コネクテッド」に加え、人工知能の基盤技術の開発を行なっていくとしており、今後は同センターを拠点として人工知能によるアルゴリズム開発と、それを実現するハードウェア開発に注力していくという。
開所式ではアイシン精機 取締役社長の伊原保守氏が挨拶するとともに、経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術・ITS推進室 室長の奥田修司氏も登壇して祝辞を述べた。
はじめに登壇した伊原氏は社会・市場の動向について触れ、「ITはかつてないスピードで進化し、身の回りのものも人工知能が備わり、インターネットとつながることで社会インフラやライフスタイルが変化している。クルマも“所有するもの”から“利用するもの”といった使われ方が変わってきており、また自動運転などに代表されるように技術そのものもますます革新している。当社を取り巻く環境としても、外資系サプライヤーにおいては競争の激化や異業種の参入など市場構造が変わってきており、こうした急激な構造変化への対応と持続的な成長を目指して当社ではこれからの技術開発領域『ゼロエミッション』『自動運転』『コネクテッド』の3つを重点領域とした。この3つの領域に対して6つのテーマの開発ワーキンググループを立ち上げ、次世代成長領域の開発にリソースを集中させている」。
「このように、これまでアイシングループ各社が培ってきたコア技術をベースとし、会社の枠を超えて開発組織をワーキンググループという形にし、技術開発を進めている。そして、これらをさらに知能化で進化させ、その知能化の集結として台場開発センターを設立した。当社では『真の競争力を身につけ、新たな価値を提案できる元気な会社』を目指し、『好きなことをやって、いい明日をつくろう』をスローガンに掲げ、現在グループ一丸となって事業活動を展開している」と説明した。
また、経済産業省の奥田氏は「入り口から入らせていただいただけで、まさにコンセプトである自由な発想と新しい創造が生まれるような素晴らしいオフィスなんだろうなと。ここで最先端の技術者の皆様が英知を結集し、新しい技術が生み出されていくという期待を抱かせる素晴らしいオフィスだなと感じた。ぜひここから新しい技術が生まれてくるといいなと感じている」と述べるとともに、自身が普段から携わっている仕事についても紹介し、「自動走行の話題は尽きないが、3月の自動走行ビジネス検討会でも発表しているが一般の皆様がイメージするような自動走行のクルマというのはまだまだ先のことかもしれないが、色々な技術が世の中から出てきており、例えば自動ブレーキについては2020年には9割以上を自動ブレーキを搭載したクルマにしたいという目標を政府としても掲げている。こうした自動運転につながるような技術の実装というのは社会ではじまっており、現在ではレベル2と言われている人が運転の責任を持ちながら相当程度のサポートをしてもらえるようなクルマが商品化されているし、2020年に向けてはこういったものの商品化がさまざまなメーカーで進んでいくだろうし、検討会のなかの議論ではあるが2020年ごろからはサービス事業としての自動運転車の活用がスタートしていくのではないだろうかと将来の姿を検討している」。
「自動走行についてはまさにAIの活用などもあるが、技術開発の領域が多岐にわたることもあり、すべてのことを個社で完結するのは難しいのではないかと感じている。そういう意味で“競争領域”と“協調領域”というものをきっちり仕分けしながら、協調して進めるべきところは各社個別でやるのではなく力を合わせて皆でやり、競争すべきところにリソースを集中していくという考え方で進めるべきではないかと考えている。例えば自動走行用の高精細な地図や通信インフラなどは、標準化を進めながら一緒に進めるべき協調領域だろう」との考えを示した。
また、台場開発センターの概要についてはアイシン精機 台場開発センター センター長の葛谷秀樹氏が説明。
アイシングループは世界各地に34の開発拠点、13の先端研究機関と3つのテストコースを持ち、そのなかで台場開発センターは人工知能の技術開発拠点になる。「優秀なパートナー」「最新技術トレンド」「創造力を育む空間」「多様な価値観」が集まっているエリアということから台場エリアに開設したという。
葛谷氏は、「台場開発センターの狙いは、人工知能の基盤技術を通じてお客様に喜んでいただける豊かな社会づくりに貢献したいということ。そのために、さまざまなIoTを通じてビッグデータを収集し、統計学に基づいてデータ解析を行ない、そのなかから狙ったデータをうまく抽出する技術、例えば深層学習などの技術開発を進めていく。そして深層学習技術が車載ECU上で実行できるための実装技術開発、さらにお客様に価値を実感していただけるような基盤技術を固めていく」と説明。
また、台場開発センターでは自由な発想や新しい価値の創出を目指すことから、オープンカフェ風な自由討議コーナーを設けたり、半円形の劇場風プレゼン討議コーナーなどが設けられていることが紹介された。
このほか、開所式終了後には同社が取り組む3輪パーソナルモビリティ「ILY-Ai(アイリーエーアイ)」、カメラやセンサーを搭載して乗員の表情や仕草からやりたいことを読み取り、さまざまな運転サポートを行なう「Smart Cockpit」の紹介も行なわれたので、その模様は写真でお伝えする。