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【2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ】カタマラン型からモノハル型へと大幅変更。大会2連覇の実績を持つ10号車 東海大学「Tokai Challenger」

チーム総監督 木村英樹教授、チーム監督 福田紘大准教授に聞く

2017年10月8日~15日(現地時間) 開催

大会2連覇の実績を持つ東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクト ソーラーカーチーム。2017年の「Tokai Challenger」は大きくボディ形状を変更

 10月8日(現地時間)に開幕する「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」。オーストリアを舞台にしたこのソーラーカーレースに日本チームとして最も長く参戦しており、またその実績も抜群なのが東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクト ソーラーカーチームになる。

 同チームは2年ごとに開催されるこの大会に1993年から出場しており、2009年と2011年に2連覇を達成。2013年は準優勝、2015年は3位と常に上位に位置する成績を残している。世界的にもトップレベルの実績を持つソーラーカーチームになる。

 2017年大会はレギュレーションも変更され、同チームの車両「Tokai Challenger」も大幅にモデルチェンジ。これまでのカタマラン型(双胴型)からモノハル型(単胴型)へと大きく変わった。この辺りの狙いについて、10月7日の予選時にチーム総監督 木村英樹氏(東海大学工学部電気電子工学科 教授)、チーム監督 福田紘大氏(東海大学工学部航空宇宙工学科 准教授)に話をうかがった。

チーム総監督 木村英樹氏(東海大学工学部電気電子工学科 教授)

 木村教授は、今回のボディ形状の狙いについて、太陽電池の面積があるという。Tokai Challengerは最速のソーラーカーを競うチャレンジャークラスに参加。このチャレンジャークラスでは、一般的なシリコンタイプの太陽電池は4m2、宇宙衛星などに使われる特殊な化合物マルチジャンクションタイプの太陽電池であれば2.64m2搭載できる。

 Tokai Challengerは、ソーラーカーの動力源となる太陽電池にパナソニック製の太陽電池モジュール「HIT」を搭載し、4m2の面積を必要とする構造を選択。その際に、2017年からソーラーカーの全長が5mまでとなったので、全長4980mmのデザインとし、全幅を1200mmに抑えたものとすることで、太陽電池の搭載面積を確保しつつ、縦長のボディとすることで空気抵抗を低減している。参加チームのなかには、2.64m2の特殊な太陽電池を使い、カタマラン型のボディを選択した強豪チームがいる。

セットアップの進むTokai Challenger

 この選択の違いは、優勝を狙うチームとしてどのような違いとなって現われてくるのだろう。その辺りを木村教授に聞いてみると、「ライバルとは比較が難しいですね。異種格闘技みたいなもので、太陽電池も違えば、ボディサイズも違います。ただ、私たちの感覚としては、横風が吹いたときは(モノハル型のほうが)かなり安定して走れる。双胴型は2枚羽根、複葉機みたいな状況になるので結構横風を受けやすいのです。これ(Tokai Challenger)は、太い流線型なので、わりと風を受け流しやすい形なのです。太い流線型のほうが斜めから入った風に対してうまく受けられるようになっています。ライバルはトンガっている形なので、斜めから風が入ってくると影響を受けやすい形になっています。発電量は、(面積が)大きい分は我々のほうが大きいので、天気によって影響してくると思います。天気がわるいと小さくて軽い方が有利に働きます、今回のレースは天気予報がわるそうなんですよね」と、製作した車両に対する自信とともに、天気の動向に関する不安を示した。

チーム監督 福田紘大氏(東海大学工学部航空宇宙工学科 准教授)

 レースの戦略については、チーム監督の福田准教授に確認。福田准教授によると、7日に行なわれる予選は中盤くらいに位置し、8日から始まる決勝で上位にもっていくとのこと。ソーラーカーレースにおいてはサーキットを速く走るのではなく、実際の決勝でどのくらい巡航速度を出せるかがポイントになる。Tokai Challengerの巡航速度のテストも公道で終了し、あとは実際の決勝でどの程度の速度を出し続けることができ、中盤からしっかり上位に上がっていけるかだという。これには天候も大きくかかわり、ソーラーカーレースの展開は天候をどう活かすことができるかがポイントになる。

 横風に有利なモノハル型を採用したTokai Challenger。約3000kmの行程の中でそのメリットを実証していくことになるのだろう。