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ボルボ、“3種類のステアリング・サポート機能”で安全性を強化した新型「XC60」発表会
ボルボの販売台数で30%を占めるモデルが2代目に進化
2017年10月17日 13:16
- 2017年10月16日 開催
ボルボ・カー・ジャパンは10月16日、新型プレミアム・ミッドサイズSUV「XC60」を発売。都内で記者発表会を実施した。初のフルモデルチェンジで2代目となった新しいXC60の価格は599万円~884万円。4種類が用意されるパワートレーンのうち、直噴ディーゼルモデルの「D4」、320PS/400Nmを発生する高出力直噴ガソリンモデルの「T6」については2018年3月ごろの納車となる。
このほかの新型XC60に関する詳細は、関連記事の「ボルボ、ミッドサイズSUV『XC60』をフルモデルチェンジ。599万円から」を参照していただきたい。
3つの新機能でIntelliSafeがさらに安全で快適なドライビングを実現
発表会ではまず、ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長の木村隆之氏が登壇。ニューモデルの紹介に先立ち、2016年~2017年に「90シリーズ」の4車種を国内導入したことを語り、「この90シリーズは世界的に大成功して、日本でも販売が好調に推移しております」とアピール。この90シリーズの好調も受けて、ボルボ・グループ全体での2016年の年間販売台数は53万4332台を記録。これは3年連続で過去最高を更新する数字になるという。また、2017年の1~9月の期間でも前年比9%増となっている。
この好調さを牽引しているモデルが初代XC60であると木村氏は位置付け、初代XC60は2008年の発売以降、それまでのボルボのイメージを覆すスポーティなデザインによって新しいユーザー層の獲得に繋がっていると解説。初代XC60は発売以降、世界累計で約100万台を販売して「欧州市場で最も売れたプレミアム・ミッドサイズSUV」になっており、現在ではボルボ全体の販売台数で30%ほどを占めるモデルになっているという。
日本での販売も好調で、1~9月の期間に前年比12.5%増と高い成長を記録。発売から年数が経っても右肩上がりの増加になっており、ボルボにとって極めて重要なモデルになっていると木村氏は語る。
また、木村氏は「ボルボと聞くと、イコール安全と多くの人が思うのではないでしょうか。安全はボルボが創業以来掲げてきたクルマ造りの理念です。『安全にオプションはない』と私たちは考え、日本ではすべての車種、すべてのグレードにボルボが開発した安全機能を標準装備しております」と、安全に関する取り組みについて改めて説明。
2009年に導入した初代XC60で「完全停止まで行なう自動ブレーキ」を初めて日本市場で販売したと述べ、この流れを受け継いで進化を続けているボルボの安全装備は、現在では「IntelliSafe(インテリセーフ)」の名称でシリーズ化されており、「さらに新型XC60で革新的な進歩を遂げています」と木村氏はアピール。新たにステアリングを制御することで事故を未然に防ぐ安全機能を搭載しており、この機能として木村氏は「ステアリング・サポート(衝突回避支援機能)」「オンカミング・レーン・ミティゲーション(対向車線衝突回避支援機能)」「ステアリングアシスト付BLIS(後車衝突回避支援機能付BLIS)」の3種類があると語った。
具体的な技術解説の前に木村氏は、状況別に見た死傷事故に対する死亡件数の割合のなかで、車線変更時の事故が直進時に次ぐものとなっており、重傷事故を起こす可能性が高い傾向にあることも分かると解説。近年では車両後側方の死角にいる車両などの存在を知らせる装備を導入するメーカーが増えてきているが、ボルボでは車線変更時の事故が多いというデータを受けて2004年から「BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」を順次装備していると強調。
新しいXC60ではこのBLISをさらに発展させたステアリングアシスト付BLISを採用しており、これまでのようにドライバーに後続車の存在を知らせることに加え、後続車が接近しているときにはステアリング制御によるアシストで元の走行車線に戻すよう働くと説明した。これに加えて新たに装備したステアリング・サポート(衝突回避支援機能)、オンカミング・レーン・ミティゲーション(対向車線衝突回避支援機能)の3つの新機能でIntelliSafeがさらに安全で快適なドライビングを実現すると木村氏は語っている。
このほか、新型XC60のラインアップ紹介に関連して、7月に発表されたボルボの電動化に向けた取り組みについて木村氏は補足説明を実施。2019年以降に向けた取り組みとして「ボルボはすぐにEV専業メーカーになるわけではありません」と前置き。2019年以降に新規導入される新型車から順次3種類の電動パワートレーンの置き換わっていき、一例として2020年以降に発売される新型車における電動化の割合予測を紹介。純粋なEV(電気自動車)は5%以下に止まり、「PHV(プラグインハイブリッド)」や48Vシステムを備える「マイルドハイブリッド」といったエンジンをメインとするモデルが主軸になると解説した。
部材の膨張係数の差を「スウェーデン国旗」加飾で吸収
新型XC60の内外装デザインについては、ボルボ・カー・グループ デザイン部 バイスプレジデントのジョナサン・ディズリー氏が解説を担当。
ディズリー氏は、新型90シリーズから導入している「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」を採用した新しいXC60でも、90シリーズと同じく「正統性」「クリエイティビティ」「アクティビティ」という3つのスカンジナビアデザインの哲学に基づいてデザイン全体を構成していると説明。
まったく新しいXC60を生み出すにあたっては、デザインチームは「プロポーション」に軸足を置いたとディズリー氏は語り、車幅から来るスタンスや佇まい、実際の路面に置かれたときのダイナミックでパワフルな雰囲気などを実現することを目指したという。側面から見たシルエットでは初代モデルを連想させつつ、ディテールではハイライトを下に設定してプロポーションの引き締め効果を出しているという。これについてディズリー氏は「デザイン的にノイズを加えることなくシャープなテイストを作り出した、クリーンでスカンジナビアン的なデザインを可能としている」と表現している。
また、初代モデルが非常に好評だったことを受け、デザインでもこれまで評価してくれた顧客を遠ざけることなく、かつ新しいユーザーを引きつける魅力を与えることを心がけ、新しいテクノロジーで可能となったフレッシュなデザインを用いているという。最も象徴的なのは、SPAテクノロジーによって実現可能になったフロントホイールの中心からAピラーまでの距離を長く取った「ダッシュトゥアクセル」で、このデザインによりプレミアムカーとしての立場を確立したとディズリー氏は語っている。
このほか、XC90とXC60の比較では、プロポーションに関しては同様でも、XC90はより大きなクルマとなることでボンネットが縦方向に伸びて凜とした印象を持っている。対してXC60はスポーティで敏捷性を感じさせるクールなフロントマスクになっているとディズリー氏は解説。XC60はドラマチックで美しいプロポーションを持ちつつ、とてもコンパクトなSUVになっていると語った。
インテリアでとくに気に入っているとしてディズリー氏が取り上げたのは、センターコンソールの下を通過して左右の両端まで連続するウッドパネル加飾。この実現には非常に苦労して、「始める前にこれほど大変だと知っていたら、私はこれを採り入れようとは思わなかったかもしれません。というのも、3つの材料(上のウッド、中央のメタル、下のプラスチック)で膨張係数が違ったからです。これが一体化していることで、ちょっとしたギャップが出たりしてしまうのです。この解消を1年かけて考えました」。
「この問題解消のために、私たちはメタル部分に『スウェーデン国旗』を入れることにしました。この国旗部分で0.5mmほどの膨張係数の違いを吸収することが可能になるのです。プロセスを造り上げるまでは頭痛の種でしたが、最終的に出来上がったものを見て、本当にうれしく思っています」とのエピソードを紹介した。
ボルボの「レベル4自動運転」搭載車は2021年に発売予定
新型XC60の具体的な製品解説は、ボルボ・カー・ジャパン マーケティング部 プロダクトマネージャーの畑山真一郎氏から行なわれた。
畑山氏は新型XC60のベースとなるSPAテクノロジーや採用技術、グレード体系などについて解説。また、新型XC60から新搭載されたステアリング・サポート(衝突回避支援機能)やオンカミング・レーン・ミティゲーション(対向車線衝突回避支援機能)、ステアリングアシスト付BLIS(後車衝突回避支援機能付BLIS)といったIntelliSafeの新しい機能について紹介した。
新機能のステアリング・サポート(衝突回避支援機能)は、走行中に側道などからクルマが不意に自車の前方に出てきて、速度差が大きく「シティ・セーフティ」による減速だけでは衝突を回避できないと判断された場合、ドライバーが空いている車線などに回避しようとする操作をステアリングアシストによってサポート。状況に応じて旋回力を高めるため、ステアリングを動かした方の前後タイヤにブレーキを効かせてより安全に危険回避できるようにする場合もあるという。
オンカミング・レーン・ミティゲーション(対向車線衝突回避支援機能)は、ドライバーがよそ見をしたわずかな時間に自車が対向車線にはみ出しそうになり、対向車線を走るクルマと衝突する危険が予測されたとき、電動パワステが車線内に戻るよう働いて衝突を回避する機能。センターラインの白線などがはっきりと認識でき、60~140km/hの速度域で作動する。
ステアリングアシスト付BLIS(後車衝突回避支援機能付BLIS)は、車両後方に装備しているミリ波レーダーで車両の後方をチェック。従来型のBLISと同じく後方の別の車線に車両などがいる場合にドアミラー内側に設定したランプが光って危険を警告。さらに新機能としてドライバーが車線変更しようとした場合、電動パワステが車線内に戻るよう働いて衝突を回避。60~140km/hの速度域で作動する。
このほかに畑山氏は、新型XC60には新型XC90でも採用している「レベル2相当」の自動運転技術「パイロット・アシストII」を全車標準装備。ボルボではこのレベル2相当の技術の次に、レベル3をパスしてレベル4にあたる「完全自動運転」の技術に取り組むという。これはレベル3の状態では万が一の事故などの際に責任の所在がドライバーにあるのかクルマ側にあるのかはっきりせず、ボルボではこのレベル3自動運転は普及しないだろうと考えていることから、作動している区間内はクルマが責任を持つべきとの結論に達し、レベル4の開発に着手。2021年にレベル4自動運転の搭載車を発売予定であると語った。