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スバル、吉永社長が記者会見。不適切な完成検査に関する第3者の実態調査と同社の再発防止策を報告

2017年12月19日 発表

株式会社スバル 代表取締役社長 吉永泰之氏

 スバルは12月19日、同社代表取締役社長 吉永泰之氏、同執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏が出席する緊急記者会見を開催。同社群馬製作所における不適切な完成検査に関して、第3者による実態調査と同社による再発防止策の検討結果について報告した。

 会見の冒頭、代表取締役社長 吉永氏は「このたびは弊社の不適切な完成検査により、お客様、お取引様、そのほかの関係者を含めて、当社を取り巻く全てのステークホルダーに、多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを、あらためてお詫び申し上げます」と深々と頭を下げた。

株式会社スバル 代表取締役社長 吉永泰之氏(左)と同 執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏(右)

 同社は10月30日に、国土交通省から完成検査の確実な実施を確保するよう業務体制を改善することを指示されるとともに、不適切な完成検査の過去からの運用状況等事実関係の詳細を調査して報告することなどが要請されていた。

 これを受けて同社は11月1日に長島・大野・常松法律事務所に対して「不適切な完成検査の過去からの運用状況等、事実関係の詳細」に係る調査を依頼し、12月19日にその報告書を受領するとともに国交省に報告した。同報告書について、吉永氏は「述べ30名の弁護士により、434名の社員や役員にヒアリングして、課題を抽出したもの」と述べた。

株式会社スバル 広報部 部長 岡田貴浩氏

 会見では、完成検査の実態に関する調査報告書(長島・大野・常松法律事務所作成)について、同社 広報部 部長 岡田貴浩氏より説明がされた。

 同報告書によれば、同社においては、完成検査業務における不適切な取り扱いとして、これまでに明らかになった「社内規程に抵触する登用前検査員単独による完成検査行為」「登用前検査員による他人の印鑑の不適切な使用」に加えて、新たな事項として「社内外の監査時における不適切な対応」「完成検査員登用手続における不十分な資格講習や登用教育」「不適切な終了試験」が指摘された。

「社内外の監査時における不適切な対応」については、国土交通省等社外の関係者又は社内の上位者による監査の際に、係長又は班長の指示により、完成検査員以外の従業員が完成検査のラインから一時的に外される対応が少なからず行なわれていたことが認められたとしている。

「完成検査員登用手続における不十分な資格講習や登用教育」「不適切な終了試験」については、完成検査員の登用手続の実態は、両工場において社内規程に従った運用がされていなかった。


調査報告に示された完成検査員の登用手続きの実態

・自動車整備士資格を有しない者は所定の資格講習を終了する必要があるが、資格講習の実施時間の記録管理がされておらず、社内規程上定められた時間の資格講習が社内規程どおりに実施されていたことが確認できなかった。

・自動車整備士資格の有無・種類に応じて一定期間の補助業務に従事する必要があるが、完成検査工程に配属されていた完成検査員のうち、一部の者は必要な補助業務従事期間を経過していない時点で完成検査員に登用されていた。

・完成検査員登用のために必要な登用前教育について、社内規程上求められる標準教育時間に見合う時間の教育が実施されていなかった。

・完成検査員登用のために合格が必要な終了試験について、過去に実施された試験の少なくとも一部につき、試験官が直接又は間接的に受験者に回答内容を教えた例等、試験官によるずさんな試験運営・監督の実態が認められた。


 同報告書では、不適切な取扱いが行なわれていた原因・背景として、「完成検査業務の公益性・重要性に対する自覚の乏しさ」「現場における過度な技量重視の風土」「補助業務の便宜主義的な解釈」「ルールの合理性に対する懐疑」「部署間・職階間のコミュニケーション不足」「完成検査業務に対する監査機能の弱さ」といったことを挙げている。

株式会社スバル 執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏(写真右)

 続けて、執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏が「不適切な完成検査の実態の解消」「完成検査業務の実態への対応」「完成検査員の登用前教育への対応」「完成検査員の人事管理」「完成検査の重要性に関する全社的な理解促進」「完成検査業務に関する組織体制の強化」「監査体制の強化」「現場と管理者、管理部門とのコミュニケーションの促進」「再発防止策の実施状況の継続的なフォロー」といった、同調査報告を受けた同社の再発防止策について説明した。

「完成検査業務に関する組織体制の強化」として、品質保証部の完成検査業務に関する機能を強化。今後は、品質保証部の従業員が現場に足を運び、品質保証部の完成検査業務に関する機能を強化するとともに、不適切事例があれば速やかに同部が是正処置を行なう体制とする。

 具体的には、品質保証部における完成検査業務機能の強化を図るため、品質保証課から、完成検査に関わる業務を切り離し、法令に基づく規程の構築ができる者と、完成検査の実務に精通した者によって構成される専門性の高いCOP(CONFORMITY OF PRODUCTION:生産車適合性)監理課を12月1日に新設し、同課に完成検査に関する業務を移管。同課の権限・役割としては、完成検査員の教育体系や社内教育の整備を含む社内規程の体系的整備に加え、完成検査に関わる社内業務の監査機能を持たせることなどが示された。

 会見において、吉永氏は「弁護士報告の結果を全面的に受け止め、反省すべき部分は真摯に反省して、その猛省の上に立って再発防止策を協力に推し進め、やりきっていく考え。表面化した問題を徹底的に潰しこむことは近々の経営課題と認識している。経営者としての私の責任は、この問題を現象面に着目して対処療法的に対処するだけでは本質的な解決につながらないと考え、会社の体質をその根本から全面的に刷新することに取り組んでいく。そのためには私自身が先頭に立つことはもちろん、役員全員で取り組む必要があり、12月~3月の全役員の月額報酬の一部を自主返納して、けじめと決意として今後も取り組みたい」との考えを述べた。