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SUPER GTの2018年シーズン、4月7日岡山国際サーキットで開幕!!

雨の中開幕に向けた準備が着々と進む

2018年4月7日~8日 開催

シーズン開幕に向けて準備が進む

 日本最大のレースシリーズ「SUPER GT」が、4月7日~8日の2日間にわたって岡山国際サーキットで行なわれる「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 1 OKAYAMA GT 300km RACE」で開幕する。全8戦で行なわれる2018年のSUPER GTだが、例年8月末に行なわれていた「鈴鹿1000kmレース」が「鈴鹿10時間耐久レース(SUZUKA 10H)」に衣替えしたことに伴い、鈴鹿戦は5月に、2017年までは10月に行なわれていたタイ戦は6月末に、そして5月に行なわれていたオートポリス戦が10月の最終戦1つの前のレースという以前の位置に戻るなど、スケジュールにも手が加えられている。

 さらに2018年は、ホンダに2009年のF1世界チャンピオンのジェンソン・バトン選手、レクサスに元F1ドライバーの小林可夢偉選手と、2人の元F1ドライバーがGT500クラスのドライバーラインアップに加わり、以前から参戦しているヘイキ・コバライネン選手や中嶋一貴選手を加えて、実にGT500クラスのドライバー30人中4人が元F1ドライバーという豪華なラインアップが実現している。GT300クラスに関しても、今シーズンから新たに参加する車両として本田技研工業「NSX GT3」が登場するなど新規車両があるほか、チームの顔ぶれも変わっており、それらの新規チームがどのような活躍をするかなどに注目が集まっている。

 本レポートではそうしたSUPER GTの2018年シーズンを、予選を明日に控えた岡山国際サーキットの様子を交えながら紹介していきたい。

3メーカーの勢力が拮抗しているGT500クラス。「がっぷり3つ?」の激しいレースが期待できそう

 2018年シーズンは、1994年にSUPER GTの全身にあたる全日本GT選手権が始まってから25年目に当たるシーズンになる。今シーズンの終わりには、シリーズがスタートしてから四半世紀が経過することになる。グローバルに見ても、これだけの規模のレースがこれだけ長い間続いている例は、F1やWRC(FIA世界ラリー選手権)といった世界選手権ぐらい。WEC(世界耐久選手権)やWTCC(世界ツーリングカー選手権)といった世界選手権でさえ、1度は終焉して復活したり(WECの例)、新しいカテゴリーへ移行したり(WTCCからWTCRへ)といった栄枯盛衰があるのだから、ほぼ同じフォーマットのシリーズがこれだけ長い間続いているというのは、それだけ最初のシリーズ設計がしっかりしていたのと、なによりSUPER GTのプロモーター(GTアソシエイション)など関係者の努力のたまものだろう。

 SUPER GTが人気がある理由の1つになっているのが、レクサス(トヨタ自動車)、日産自動車、ホンダという3大ワークスが参加するGT500クラスと、さまざまな参加車両があるGT300クラスという2つのクラスが混走するレースとなっていることだ。このため、車両のバラエティが最も多いレースの1つといっていいだけでなく、スピードの違う2つのクラスが混走しているため、それが原因になってドラマが起きやすいということもある。元々GT500クラスとGT300クラスには、500馬力と300馬力という意味があったようなのだが、今ではそうした数字の意味は失われており、単にクラスを示す数字になっている。

 上位クラスに位置付けられているGT500クラスは、「JAF-GT500車両規定」というJAFが定める規定に基づいて作成された車両で、アンダーフロアなど車両下部は共通の規定で同一になっており、そこでの開発競争を抑制することでコスト削減を狙っている。逆に車両上部などは空力開発などが可能であるため、ボディワークは各メーカーの車両のイメージを採用することができ、車両のバリエーションを出しながらかつ低コストで車両を作れるように配慮されている。

 レギュレーションでは駆動方式はFRに限り、パワーユニットも2.0リッター直噴ターボエンジンであると定義されていたのだが、ホンダはNSXのイメージを重視して、ミッドシップでパワーユニットにもハイブリッドを採用するなどしたため、他の2メーカー同意の下で独自のBOP(Balance Of Performance、主に重りを乗せるなどして行なわれる性能調整のこと)により、性能が調整されてきた。

 だが、この性能調整、思っていたよりも効いてしまっていたようで、現行規定(別記事参照)が始まった2014年以降、日産が2回、レクサスが2回チャンピオンを獲得しているのに対して、ホンダは1度もタイトルを獲っていない。このため、2017年の第1戦が終了後、ハイブリッドシステムが下ろされるなどの条件も変わってきたこともあり、NSXへのBOPが見直され、ハンデウェイトの重量が減らされた。また、ホンダ自身の開発も進展したこともあり、2017年から徐々にNSXは戦闘力を取り返しつつある。2017年のシーズンオフテストは、レクサス勢が絶好調で、そこから遠く離れて日産勢、それからさらに遅れてホンダ勢という状況だったのが、2018年のシーズンオフテストでは3つのメーカーが同じレベルで争っているということがタイムからも見えており、2017年よりも激しい競争が期待できそうだ。

あいにくの雨模様となった岡山国際サーキットのパドック。各チームの設営が続く

元F1ドライバー(しかも1人はチャンピオン!)が4人も参加している2018年のGT500クラス

 GT500クラスはそうした3メーカーの激しい争いだけでなく、2018年シーズンは新しいドライバーラインアップにも要注目だ。今シーズンは新人ドライバーが5人いる。レクサスのフェリックス・ローゼンクヴィスト選手(6号車 WAKO'S 4CR LC500)、山下健太選手(19号車 WedsSport ADVAN LC500)、小林可夢偉選手(39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500)、日産の高星明誠選手(24号車 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R)、ホンダのジェンソン・バトン選手(100号車 RAYBRIG NSX-GT)が該当する(いずれもスポット参戦は除く)。

カーナンバー車両ドライバータイヤ
1KeePer TOM'S LC500平川亮/ニック・キャシディBS
3CRAFTSPORTS MOTUL GT-R本山哲/千代勝正MI
6WAKO'S 4CR LC500大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィストBS
8ARTA NSX-GT野尻智紀/伊沢拓也BS
12カルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹/ヤン・マーデンボローBS
16MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀/中嶋大祐YH
17KEIHIN NSX-GT塚越広大/小暮卓史BS
19WedsSport ADVAN LC500国本雄資/山下健太YH
23MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI
24フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/高星明誠YH
36au TOM'S LC500中嶋一貴/関口雄飛BS
38ZENT CERUMO LC500立川祐路/石浦宏明BS
39DENSO KOBELCO SARD LC500ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉BS
64Epson Modulo NSX-GTベルトラン・バゲット/松浦孝亮DL
100RAYBRIG NSX-GT山本尚貴/ジェンソン・バトンBS

 ジェンソン・バトン選手に関しては筆者がここで繰り返すまでもないと思うが、2009年にブラウンGPでF1世界チャンピオンに輝き、2016年シーズン限りでF1フル参戦を終了し、新しい挑戦を模索してきた。2017年のSUPER GTでは最後の鈴鹿1000kmとなった第6戦にスポット参戦して大いにエンジョイし、今シーズンはF1チャンピオン経験者として初めてSUPER GTにフル参戦する。チームもホンダのエースカーと目されている100号車 RAYBRIG NSX-GTで、それだけを見てもバトン選手が決して道楽で乗るのではなく、本気でチャンピオンを目指して戦う、そう考えてよいだろう。

 そして、今シーズンからフル参戦するもう1人の元F1ドライバーが、小林可夢偉選手だ。2014年までF1に参戦していた小林選手は、その後2015年からはスーパーフォーミュラとWECに舞台を移して戦ってきたが、ついに今シーズンからはSUPER GTにも参戦する。パートナーになるのはこちらも元F1ドライバーにして、2016年のSUPER GT GT500クラスチャンピオンでもあるヘイキ・コバライネン選手。元F1ドライバーという2人の才能はどちらも折り紙付きだ。ただ、シーズンオフのテストでは39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500はタイムシートの下位に沈むことが多く、やや出遅れ感がある。それをどこまで巻き返せるかが重要になる。

 なお、同じく元F1ドライバーの中嶋一貴選手(36号車 au TOM'S LC500)と小林可夢偉選手は、いずれも第2戦富士(5月3日~4日)が、WECのスパ戦(5月3日~5日)と重なっており、SUPER GTの方は欠席しなければならない。その意味では、中嶋選手も小林選手も、チャンピオンを望むことはできないが、WECスパ戦もトヨタのル・マン24時間レース初優勝のための前哨戦として重要なレースであるだけに、そちらのレースも要注目だ。

ピットレーンでも車両の準備が進んでいる

今シーズンからNSX GT3が新しく参戦。強豪チームによるチャンピオン争いに期待

 GT300クラスも引き続き、激しいレースが展開されることになりそうだ。以下は開幕戦のGT300のエントリーリストになる。

カーナンバー車両ドライバータイヤ
0グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也YH
2シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規YH
5マッハ車検 MC86 Y's distraction坂口夏月/平木湧也YH
7D'station Porsche藤井誠暢/スヴェン・ミューラーYH
9GULF NAC PORSCHE 911久保凜太郎/石川京侍YH
10GAINER TANAX triple a GT-R星野一樹/吉田広樹YH
11GAINER TANAX GT-R平中克幸/安田裕信DL
18UPGARAGE 86 MC中山友貴/小林崇志YH
21Hitotsuyama Audi R8 LMSリチャード・ライアン/富田竜一郎DL
22アールキューズ AMG GT3和田久/城内政樹YH
25HOPPY 86 MC松井孝允/坪井翔YH
26TAISAN R8 FUKUSHIMA山田真之亮/川端伸太朗YH
30TOYOTA PRIUS apr GT永井宏明/佐々木孝太YH
31TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/平手晃平BS
34Modulo KENWOOD NSX GT3道上龍/大津弘樹YH
35arto RC F GT3ナタウッド・ジャルーンスルカワッタナ/ナタポン・ホートンカムYH
48植毛 GT-R田中勝輝/飯田太陽YH
50EXE AMG GT3加納政樹/安岡秀徒YH
52埼玉トヨペットGreenBraveマークX MC番場琢/脇阪薫一YH
55ARTA BMW M6 GT3高木真一/ショーン・ウォーキンショーBS
60SYNTIUM LMcorsa RC F GT3吉本大樹/宮田莉朋YH
61SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝DL
65LEON CVSTOS AMG黒澤治樹/蒲生尚弥BS
87リーガルフロンティア ランボルギーニGT3佐藤公哉/元嶋佑弥YH
88マネパ ランボルギーニ GT3平峰一貴/マルコ・マッペリYH
96K-tunes RC F GT3新田守男/中山雄一BS
117EIcars BENTLEY井出有治/阪口良平YH
360RUNUP RIVAUX GT-R柴田優作/青木孝行YH
777CARGUY ADA NSX GT3横溝直輝/木村武史YH

 エントリーリストを見ていて気が付くのは、2017年までBMWのセミワークス的な存在とされてきた7号車 Studie BMW M6が今年は不参加であることだろう。同チームはBMWのワークスドライバーであるヨルグ・ミューラー選手と荒聖治選手の組み合わせで参戦してきた強豪チームだが、今年はエントリーがなく、BMWは55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、BS)のみの参戦となっている。

NSX GT3(34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3)

 その代わりという訳ではないが、今シーズンから新たに参戦するのが、ホンダのNSX GT3を利用する、34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組、YH)と777号車 CARGUY ADA NSX GT3(横溝直輝/木村武史組、YH)という2チームだ。ホンダ NSX GT3は、ホンダのWTCCに参戦する車両を作ってきたJAS motorsportが作成した車両で、NSXベースのFIA-GT3規格のレーシングカーとなる。NSX GT3は2017年米国のレースを走っていたが、SUPER GTに参戦するのは今年が初めてで、そのパフォーマンスには大きな注目が集まっている。NSX GT3を走らせる2チームのうち、最も注目されているのはホンダの純正用品・カーナビを販売するホンダアクセスがスポンサードしているModulo Drago CORSEが走らせる34号車だ。2000年のGT500クラスチャンピオンの道上龍選手と、ホンダ期待の若手で先週末に行なわれたスーパー耐久シリーズの開幕戦でもST-TCRクラスで優勝した大津弘樹選手の組み合わせは、GT500クラスを走っていても不思議ではない組み合わせ。現時点では新規チームとして学習している段階だとチーム代表を兼ねる道上選手は説明するが、先日富士スピードウェイで行なわれた最後の公式テストでも、セッションの度に順位を上げており、開幕戦でどのあたりに来るかは要注目だ。

 GT300クラスの上位争いという意味では、2017年のチャンピオンカーである0号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組、YH)、そして2016年のチャンピオンカーである25号車 HOPPY 86 MC(松井孝允/坪井翔組、YH)がチャンピオンの最右翼となる。シーズンオフのテストでは、全体的にマザーシャシー/JAF-GT300勢が優勢だったことを考えると、25号車が開幕戦の優勝候補と考える関係者は多い。2013年、2016年のGT500クラスチャンピオンの平手晃平選手が加わって戦力が大幅アップした31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/平手晃平組、BS)あたりもチャンピオン争いに絡んできそうだ。FIA-GT3勢はBOP次第という側面はあるが、0号車と同じメルセデスを走らせる65号車 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥組、BS)、オフシーズンテストが好調だった21号車 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/富田竜一郎組、DL)あたりもチャンピオン争いに絡んできそうだ。

4月7日~8日はどちらも晴れの天気予報。素晴らしいレースに期待

 4月6日はあいにくの雨模様の中、各チームの機材搬入、設営などが行なわれた。午前中に行なわれていたF4、ポルシェカップの練習走行から雨が降り出し、午後は完全な雨模様となってしまった。しかし、4月7日以降は晴れの天候が予想されており、降水確率は土曜日が10%、日曜日が20%と低く、いい天気の中でのレースが展開されそうだ。

 明日4月7日は朝9時から練習走行が開始され、14時45分から予選が行なわれる。明後日4月8日は14時40分からレースがスタートする予定となっている。チケット料金は、4月6日中に購入した場合に適用される前売りは2日通しで5400円、当日は土曜日が4300円、日曜日が7600円となっている。チケットの詳細に関しては岡山国際サーキットの応募サイトWebサイトをご覧いただきたい。