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SBドライブと宇野バス、岡山県赤磐市で自動運転バスの実用化に向け一般無料試乗会を開催

4月14日~15日。「運転手不足問題の解決を期待」と宇野泰正社長

2018年4月14日~15日 開催

岡山県赤磐市で行なわれる自動運転バスの一般無料試乗会

 ソフトバンクグループのSBドライブと、岡山県内で路線バス事業を運営する宇野自動車は、「バス自動運転サービスの実用化に向けた実証」について合意。この合意に基づき、4月14日~15日に岡山県赤磐市の赤磐市立中央公民館周辺を舞台に一般向け自動運転バス試乗会を開催する。

 この試乗会は事前申込制だが、当日空きがあれば誰でも試乗でき、4月15日の回は13日時点で若干の空きがあるとのことだ。乗車料は無料で、当日申し込みは現地で行なう必要がある。

 この自動運転バス一般試乗会に先立つ4月13日、関係者向け試乗会&報道発表会が赤磐市立中央公民館で開催された。

自動運転バスに使われるのは日野自動車「リエッセ」。中古車を自動運転車に改造したもの。どのようなクルマでも自動運転車になることを示している
環境認識は、LiDARとミリ波レーダーを主に使う
手放しでの実証実験運転を実施
乗車時には自動運転パスポートなどICカード認識も実施
LiDARの認識画面
車内インフォメーション画面。だんだん洗練されてきている
宇野バスの自動運転

 発表会には、宇野バスを運営する宇野自動車 社長 宇野泰正氏、SBドライブ 社長 佐治友基氏に加え、地元赤磐市からゲストとして赤磐市 市長 友實武則氏が登壇。挨拶を行なった。

宇野自動車株式会社 社長 宇野泰正氏

 宇野社長は、この自動運転バスに対する強い期待を表明。宇野社長がSBドライブの自動運転バスに初めて乗ったのは、2017年12月に沖縄で行なわれた実証実験時のこと。これに感銘を受け、2018年1月にSBドライブにアクセス。宇野バスが運行する赤磐市での公道実証実験を、実質3カ月で実現したという。

 この背景にあるのは、バス事業者としての危機感。現在、バス会社では運転手不足が問題となっており、運転手不足からバスの減便や路線廃止などをせざるを得ない状況も起きているという。自動運転バスを投入することで、運転手不足の部分を補うことができ、例えば早朝や夜間の運行の実現、不採算路線の採算改善による体質改善、そして体質改善による増便や路線廃止の回避などが見込めるとした。

 宇野社長の構想として、すぐにバスの自動運転化ということではなく、住民および利用者の理解を得ながら進めていきたいとし、それが14日からの自動運転バス一般試乗会につながっている。自動運転バスに乗ってもらうことで自動運転バスの安全性を理解してもらい、将来的な導入の下地を作っていきたいとのこと。

 ただその際も、「安全かつ安心なバス」を実現したいと言い、運転ミスのない自動運転バスによって安全性を担保し、自動運転バス内に車掌さんが乗ることで乗客のサポートをする安心を確保。お年寄りなどに優しいバスを視野に入れているようだ。

赤磐市 市長 友實武則氏

 友實 赤磐市長も、この自動運転バスの導入へ期待を寄せる。自動運転バスの試乗後に語った感想では、「自動運転が夢の技術でないことが分かった。今の技術進化をいろいろな世界へ訴えてきたい。そして、この先には赤磐市民の高齢の方や、いわゆる交通弱者の方、そういった方々に希望となることが確信できます」とコメント。赤磐市の山陽団地で進む高齢化問題についても、自動運転バスが1つの力になるという手応えは得たようだ。

SBドライブ株式会社 社長 佐治友基氏

 SBドライブが宇野バスと協業することについて佐治社長は、宇野バスのしっかりした経営姿勢を挙げる。バス事業者によっては過疎化が進むなか、自治体の補助金に頼らざるを得ない会社もあるのだが、宇野バスはきめ細かなマネジメントを行なうことで黒字経営を実現。バスのダイヤも、人が都度都度精査する形で非常に緻密に突き詰められており、その高度な運行ノウハウには感心するという。もちろんバス事業者としての宇野社長の積極姿勢も背景にあるのだろうが、将来SBドライブが全国のバス事業者と協業するにあたって、高い運行ノウハウを持つ宇野バスはSBドライブにとっても魅力的な協業相手だったことになる。

3人で自動運転バスに同乗
自動運転バスの戻りを祝う赤磐市のキャラクター、あかいわモモちゃん
あかいわモモちゃん

 実際、宇野バスはバスの全車両で無料Wi-Fiサービスを提供、バスロケーションサービス「バスまだ」や全国の民間バス事業者で基準運賃最安を実現。その高度な運行ノウハウは各種カンファレンスでも話題となっている(「マニアックなバスロケが岡山・宇野バスで稼働中、回送車両の位置や前方車窓まで表示」「ダイヤ編成システム『その筋屋』を使ってバス情報オープンデータを作る方法」)。

 自動運転の分野は、さまざまな法規制を変えていかない限り、なかなか前進していかない。そういった意味で、自動運転に積極的なバス事業者、自治体と一緒に仕事をしていかない限り、自動運転バスの実用化は先へとなるだろう。この事前試乗会は関係者向けだったのだが、近隣の市長も試乗に訪れており、どこの自治体も公共交通であるバスの未来形が気になっているようだった。

 なお、SBドライブの自動運転バスは自動運転実験によって、さまざまな制御を試みているが、今回の実証運転ではGPS、GPS-RTKによって自車位置を測位、LiDARやミリ波レーダーによって環境を認識。バス停へのセンチメートル単位の正着制御も、磁気マーカーなどを用いず実現できているという。とくに赤磐市はGPSの入りがよく、都会における不要反射のような状態よりも、位置を把握しやすい状態とのこと。

 記者がSBドライブの自動運転バスに乗るのは、2月のANA(全日本空輸)との協業発表以来だが、そのときよりもさらにスムーズな自動運転走行を行なっていた。今回の自動運転は、人が運転席に乗って手を放して運転するハンズオフのレベル3自動運転。周囲の危険はLiDARやミリ波レーダーによって把握するが、信号機の色や一時停止線などの認識は行なっておらず人の運転手がブレーキを踏んでいる、というものになる。