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【SUPER GT第2戦 富士】富士マイスター立川祐路選手操る38号車 ZENT CERUMO LC500がGT500のポール獲得

GT300も富士に強い55号車 ARTA BMW M6 GT3が予選トップ

2018年5月3日~4日 開催

GT500クラスのポールポジションを獲得した38号車 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明組)

 SUPER GTの第2戦、「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 2 FUJI GT 500km RACE」が、5月3日~4日の2日間にわたり富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。初日となった5月3日には練習走行と予選が行なわれ、4日の決勝レースに向けたグリッドが決定した。

 ポールポジションを獲得したのは、GT500が38号車 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明組、BS)で、アタックを担当した立川祐路選手は、今回で23回目と自身が持つポール獲得記録を更新した。GT300は55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー/組、BS)で、富士に強いとされているBMW M6 GT3の特性をうまく活用してポールを獲得した。

GT300クラスは、富士スピードウェイに強い55号車 ARTA BMW M6 GT3がポールポジションを獲得

 ゴールデンウィーク後半の初日となった5月3日の富士スピードウェイの天気は朝から荒れ模様。前日の夜から降り続いていた雨に加えて、強い風でまるで台風の中にいるような天気になっていた。その雨も朝8時ごろには上がり気味になっているが、今度はそれに加えて霧が発生し、富士スピードウェイ全体が雲の中にいるような状況になり、100m先が見えなくなるほど。このため、午前中に予定されていた練習走行は視界不良を理由にセッションを開始することができなかった。このため、練習走行は12時50分から30分行なわれることになり、予選はノックアウト方式から、GT300、GT500それぞれ20分ずつ占有して走る方式に変更されることになった。

 通常は、予選1回目(Q1)、予選2回目(Q2)でそれぞれ別のドライバーが走ることが義務づけられているが、今回は1回だけの予選となるため、ドライバーは1人だけが走ることが認められた(もちろん交代して全員が走ることも可能)。また、タイヤはQ1とQ2でそれぞれ登録したタイヤのどちらかで走り、2つのタイヤのどちらかのタイヤでスタートすればよいというルールになった。

 こうしたなか行なわれた予選でポールポジションを獲得したのは55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー/組、BS)。予選の終盤に満を持してタイムアタックをした高木真一選手は、セクター1、セクター2で最速タイムを更新してトップに躍り出た。55号車は昨年の第5戦富士戦でもポールトゥーウインを決めており、富士は得意のサーキットとしており、今回もその強みがでた形だ。

GT300クラスのポールポジションを獲得した55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー/組)

 2位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組、DL)で、トップは0.083秒という僅差で2位になった。3位は65号車 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥組、BS)、4位は0号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組、YH)、5位は2号車 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組、YH)という順位になった。

GT300クラス予選2位、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)
3位は65号車 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥組)
GT300 正式予選結果
順位カーナンバー車両ドライバータイヤウェイトハンデタイム
155ARTA BMW M6 GT3高木真一/ショーン・ウォーキンショーBS101'36.573
261SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝DL1'36.656
365LEON CVSTOS AMG黒澤治樹/蒲生尚弥BS161'36.780
40グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也YH61'36.850
52シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規YH1'36.864
660SYNTIUM LMcorsa RC F GT3吉本大樹/宮田莉朋/井口卓人YH1'36.944
731TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/平手晃平BS1'36.971
811GAINER TANAX GT-R平中克幸/安田裕信DL121'37.103
97D'station Porsche藤井誠暢/スヴェン・ミューラーYH301'37.358
1010GAINER TANAX triple a GT-R星野一樹/吉田広樹YH1'37.369
1134Modulo KENWOOD NSX GT3道上龍/大津弘樹YH1'37.396
1288マネパ ランボルギーニ GT3平峰一貴/マルコ・マッペリYH101'37.534
13777CARGUY ADA NSX GT3横溝直輝/木村武史/ケイ・コッツォリーノYH1'37.534
145マッハ車検 MC86 Y's distraction坂口夏月/平木湧也/玉中哲二YH1'37.555
1518UPGARAGE 86 MC中山友貴/小林崇志YH401'37.638
16360RUNUP RIVAUX GT-R田中篤/青木孝行/YH1'37.642
1721Hitotsuyama Audi R8 LMSリチャード・ライアン/富田竜一郎/篠原拓朗DL1'37.011
1896K-tunes RC F GT3新田守男/中山雄一BS1'37.694
1987リーガルフロンティア ランボルギーニGT3佐藤公哉/元嶋佑弥/高橋翼YH1'37.747
209GULF NAC PORSCHE 911久保凜太郎/石川京侍YH1'37.803
2125HOPPY 86 MC松井孝允/近藤翼/土屋武士YH221'38.093
2250EXE AMG GT3加納政樹/安岡秀徒/坂本祐也YH21'38.103
2352埼玉トヨペットGreenBraveマークX MC番場琢/脇阪薫一/高木真一YH1'38.298
2426TAISAN R8 FUKUSHIMA山田真之亮/川端伸太朗/中野信治YH41'38.310
2530TOYOTA PRIUS apr GT永井宏明/佐々木孝太YH1'38.179
26117EIcars BENTLEY井出有治/阪口良平/田中篤YH1'38.701
2735arto RC F GT3ナタウッド・ジャルーンスルカワッタナ/ナタポン・ホートンカムYH1'39.318
2822アールキューズ AMG GT3和田久/城内政樹YH1'40.481
2948植毛 GT-R田中勝輝/飯田太陽/リチャード・ブラッドリーYH1'39.204

ポールから15位まで約1.1秒のGT500クラス。激戦を制したのは38号車 ZENT CERUMO LC500

 GT300と同じく一発勝負となったGT500の予選だが、予選で上位に来たのは、いずれも開幕戦岡山で不本意な結果に終わったため、ウェイトトハンデをあまり積んでいない車両になった。逆に開幕戦優勝してウェイトハンデ42kgの17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組、BS)は14位、開幕戦2位でウェイトハンデ30gの100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS)が11位、開幕戦3位でウェイトハンデ22kgの1号車 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ組、BS)が10位と、ウェイトハンデが効いているランキング上位には厳しい結果となった。

 そうした中でポールを獲得したのは、38号車 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明組、BS)。タイムアタックを担当した立川祐路選手はこれでSUPER GTのポール獲得が23回となり、自身の最多記録を更新した。2位は6号車 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト組、BS)。6号車を走らせるチーム・ルマンは、先週のスーパーフォーミュラが行なわれていた週末に、チームの大黒柱だったエンジニアの山田健二氏が亡くなるという悲しみの中でのレースで、開幕戦の4位で16kgという比較的重いウェイトハンデを背負っての中での予選2位という大嶋和也選手の走りは、鬼気迫るモノがあったと言っていいだろう。

GT500クラス予選2位、6号車 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト組)

 予選3位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI)で、ここ数年GT-Rはこのレースを制してきており、今年も23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは優勝候補の大本命。そうした中での予選3位は、同車にとってまずまずの結果と言えるだろう。予選4位は36号車 au TOM'S LC500(ジェームス・ロシター/関口雄飛組、BS)。36号車は開幕戦がノーポイントと不本意な結果に終わったこともあり、このレースで巻き返したいところ。

予選3位、23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)
予選4位は36号車 au TOM'S LC500(ジェームス・ロシター/関口雄飛組)

 今回はエースの中嶋一貴選手が、今週末ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われているWEC(世界耐久選手権)に出場するため欠場しており、代わりにジェームス・ロシター選手ドライブすることになっている。予選5位は39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/坪井翔組、BS)で、こちらもレギュラーの小林可夢偉選手が同じくWECでスパ戦に出場しており、こちらもその代役として坪井翔選手がドライブする。予選6位はホンダ勢の最上位となったのは16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組、YH)。

予選5位は39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/坪井翔組)
ホンダ勢トップは予選6位の16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組)

 今回のGT500のレースはトップから15位までのタイム差がわずか約1.1程度と非常に激しい競争になっている。開幕戦上位が下位に沈んだこととあわせて、これは3メーカーの性能が拮抗していることを意味しており、5月4日の決勝レースも3メーカーによる激しいレースが期待できそうだ。決勝レースは14時40分スタートの予定で、500km/110周という長丁場のレースとなる。決勝レースは朝から晴れる見通しで、気温や路面温度が今日よりも上がる可能性が高く、明日も熱い(暑い)レースになりそうだ。

GT500 予選結果
順位カーナンバー車両ドライバータイヤウェイトハンデタイム
順位カーナンバー車両ドライバータイヤウェイトハンデタイム
138ZENT CERUMO LC500立川祐路/石浦宏明BS61'27.904
26WAKO'S 4CR LC500大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィストBS161'28.704
323MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI121'28.147
436au TOM'S LC500ジェームス・ロシター/関口雄飛BS1'28.229
539DENSO KOBELCO SARD LC500ヘイキ・コバライネン/坪井翔BS1'28.471
616MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀/中嶋大祐YH21'28.524
73CRAFTSPORTS MOTUL GT-R本山哲/千代勝正MI81'28.571
812カルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹/ヤン・マーデンボローBS1'28.623
919WedsSport ADVAN LC500国本雄資/山下健太YH41'28.638
101KeePer TOM'S LC500平川亮/ニック・キャシディBS221'28.676
11100RAYBRIG NSX-GT山本尚貴/ジェンソン・バトンBS301'28.683
1264Epson Modulo NSX-GTベルトラン・バゲット/松浦孝亮DL1'28.808
138ARTA NSX-GT野尻智紀/伊沢拓也BS1'28.838
1417KEIHIN NSX-GT塚越広大/小暮卓史BS421'28.907
1524フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/高星明誠YH101'28.978

予選後、ポールポジション記者会見。僅差のGT500の予選、走っている方は大変だが、見ている観客には楽しいだろうと38号車の2人

GT500クラスのポールポジションを獲得した石浦宏明選手(左)、立川祐路選手(中左)。GT300クラスのポールポジションを獲得した高木真一選手(中右)、ショーン・ウォーキンショー(右)

 予選終了後には、GT500、GT300それぞれのポールポジションを獲得した4人のドライバーによる記者会見が行なわれた。

──予選を実際に走ってポールを獲得した2人の気持ちを語ってほしい(筆者注:今回は変則的な1回予選となったため、2人のドライバーのうち1人しか走っていないため)。

立川祐路選手:今日のポールはとにかく嬉しかった。というのも正直ポールが獲れるとは予想していなかったからだ。今日は変則的なスケジュールで、朝の走行ができないで短いフリー走行だけだったので、手応えなども何も感じていなくて、どうなるのか解らない中での予選だった。1セット目でうまくいかなくて、どうなるのか分からない中での2セット目だったので、ポール獲れて嬉しかった。

立川祐路選手

高木真一選手:とにかく嬉しいです(その後立川選手の真似しようとして、立川選手が何を言ったか思い出せなくて……)なんて言ったんだっけ(笑)。今回は変則的な予選になり、予選をニュータイヤで2セット使うというのは記憶にない。1回目は手探りでやったが、2回目はプロとしてタイム出さないといけないし、ABSなどをうまく使いながら合わせこむことができた。このサーキットはBMW M6 GT3には得意なサーキットで、しっかりセットアップを進めてくれたチームのおかげだ。

高木真一選手

──走らずにポールを獲得した石浦選手に。今はどんな気持ですが?

石浦宏明選手:こんな気持ちのポールは初めて(笑)。去年のこのレースでは(Q1を担当して)Q2をポール獲れるかなと見ていたときに、立川選手が獲ってくれた。今年は1回目のセットではあんまり出なくて、2回目のセットでバーンと行ってくれたのはいいが、(自分は)走らずにここ(会見場)にいるのは不思議な気持ちだ。

石浦宏明選手

──立川選手は人とは違うラインを通っているのじゃないかというほど速いですが、速く走れるコツは?

立川選手:特別意識していることはない。他のサーキットではラインは1本しかないけど、富士スピードウェイはラインがいろいろあるサーキットで、その中で自分が走っているラインが合っているということもしれない……。

 人よりコーナーが少ないから速いんだと思う……(隣の石浦選手を肘でつついて)あんまり受けなかった(笑)。自分でもあまり得意という実感とかそういうのはなくて、プレッシャーだけがどんどん乗っていってそれに対処するのが大変だが、逆にそれがいい方向に作用しているのかもしれない。

──変則的なスケジュールで難しかったなかで、富士を得意にしているチームがそれぞれポールを獲ったという印象だが、その理由を教えてほしい。

高木選手:うちは、タイヤ2セットを20分で使うとなると時間が足りないので、フリー走行の時間を利用してスクラブしておいた。スクラブを1周やったのと2周やったのを作っておき、それを天候や路面温度などで使い分ける作戦をとった。そうしたことができることが総合力になっており、アタックは比較的楽にできたと思う。

ショーン・ウォーキンショー選手:今回はTVを見てるだけでポールが獲れたので、ポールを獲れた理由はチームメイトが高木さんだったということだ。クルマはトラックに合っていて最高だと思う。

ショーン・ウォーキンショー選手

立川選手:開幕後にもエンジンが少し改善されており、開幕戦では抑えていた部分があったけど(それを解放した)おかげもある。富士での公式テストの時はあまりよくなかったけど、開幕後のテストではタイヤを含めてどんどんよくなっている。最近はテレビや雑誌などでもあまり優勝候補に上げられることはなくなってきており、ここらで行っておかないとなという思いも効いている。

石浦選手:富士では昨年勝っているけど、今年も同じような形で来ていると。鈴鹿で行なわれたテストでもいいタイムを出せたし、何より立川さんが走ってくれているし(笑)。

──GT500では今回トップから15位までの差が約1.1秒と非常に接戦になっている。戦っている側からすると、そういう実感があるか?

立川選手:GT500にはDTMと同じシャシー規則を採用したことで、基本的にメーカー間で差が出にくい。去年は空力のレギュレーションが変わって、上手くいったところと上手くいかなかったところもあったが、それがイレギュラーな状態。今の車両になって2年目、DTMとの同じシャシー規定という意味では5年目で、セットアップなども各チームとも煮詰まってきており、必然的にそういう差になるのではないか。やっている方としては他にもっと差をつけたいけど、見ている方にはいいのではないか。

石浦選手:確かにタイム差はあまりなく近いところにいるが、それでも車の特性によって違いがあり、あるサーキットではある車が速いけど、他ではそうではないという形になってきており、ルールが上手く機能しているという印象。特に今シーズンは3メーカーがかなり近いところにいるなという印象だ。

立川選手:そんな中でも我々がポールを獲れたのは、石浦がいるからだ、走ってないけど(笑)

──ウォーキンショー選手と石浦選手に、こうした走れていない状況で明日のレースに不安はあるか?

ウォーキンショー選手:特に不安はないよ、クルマは速いしレースでの問題はないだろう。

石浦選手:普段の状況に比べたら多少の不安はあるだろうが、走り慣れている富士だし、普段のレースでも数周走ってすぐに決勝なので、特別心配はしていない。

──最後に明日への豊富を、1人ずつ

ウォーキンショー選手:よいレースをするだけだ。長いレースだし、面白いレースになると思う。

高木選手:得意な富士なので、ここで大量ポイントをとって、残りのレースはゆとりをもって臨みたい。今シーズンは優勝よりはチャンピオンという気持ちがあるので、優勝はできなくても、表彰台には登りたい。

石浦選手:長いレースになるので、ミスをしないことが大事。チーム一人一人がミスをしないことが大事でそうすれば結果がついてくる。

立川選手:今日は今日で明日は明日。みんなそうだけど、予選でショートランしかやってないので、明日に向けて未知数。明日に向けて仕切り直してミスなく戦って、明日もここ(会見場)に戻ってきたい。

第2戦富士のポールポジション記者会見では、SUPER GT サポーターズクラブやモバイルサイト会員が申し込める「ポールポジション記者会見ツアー」も実施された