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高橋学の最新大口径中望遠レンズでレースクイーンなど撮影してみた

キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」、ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」

パドック付近での撮影ですが、これだけ寄ってこれだけぼかせば、サーキットでも普通のポートレート風味です。F1.4解放はなかなか効きます

 SUPER GT 第2戦 富士、第3戦 鈴鹿にて、ニコン、キヤノンの大口径中望遠レンズを使った撮影をしてきました。ターゲットはサーキットの華、各チームのレースクイーンの皆さま。使用したレンズは2016年8月に発売された「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」、2017年11月に発売されたキヤノンの「EF85mm F1.4L IS USM」の2本。共に優れた描写と美しいボケ味を謳う高性能レンズで、価格はニコンの105mmが24万円(税別)、キヤノンの85mmが20万円(税別)と、中望遠レンズとしてはなかなかのお値段です。

 それゆえ、その描写力への期待は高まるものの、レースクイーンとの距離も自由にならず、ファンでごった返したサーキットでのピットウォークやグリッドウォークを単焦点レンズで撮るというミッション自体に少々無理も感じつつ、ましてや、そもそも若い女性と話すこと自体ハードルが高いオッサンに何ができるのだろうと考えながら、サーキットへ向かいました。

 今回、この2本のレンズに組み合わせるボディは、ニコンが「D850」、キヤノンが「EOS 5D Mark IV」と、高性能レンズとの組み合わせに不足なしと思える2台の高画素モデル。ついでに、というわけでもないのですが「ポートレート撮影に適した外部ストロボ」として2018年4月にキヤノンから発売されたスピードライトの最新モデル「470EX-AI」も試す機会がありましたので、そちらの感想もお伝えします。

ニコン、キヤノンの最新大口径中望遠レンズ。左からニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」、キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」

キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」

「EF85mm F1.4L IS USM」は「EOS 5D Mark IV」と組み合わせて使用しました
「EF85mm F1.4L IS USM」はIS(手ブレ補正機構/イメージスタビライザー)を備えています

 中望遠レンズは昔からポートレートに適したレンズとされてきましたが、実は筆者自身はもう少し長い焦点距離の方が背景の整理もしやすいし、ディストーションの少ないレンズも豊富にあるし、いいのではと思ってきました。しかしながら、このF1.4という大口径の85mmは、いざ撮影してみると開放からシャキッとした描写と柔らかく美しいボケ、歪みを感じない素直な写り、どれをとってもいきなり満足度の高いもので、慣れないレースクイーンの撮影ながらすぐに楽しくなってしまう魅力に満ちたものでした。

 もちろん、今回は撮影距離が自由にならないグリッドウォークでの撮影でしたので、「ズームレンズなら……」と思うシチュエーションも少なくはなかったのですが、そんな思いをも凌駕する魅力を持ったレンズです。開放での撮影ではまつ毛にピントが合うともう瞳はボケてしまうほど被写界深度は浅いし、2人並んでもらって撮ると、両方の人にピントが合う確率など奇跡に近いし、色々とナーバスな部分もありますが、それでもやっぱり解放付近で思いっきり撮りたいと思わされるレンズでした(掲載画像は全て1920×1280ピクセルでご覧いただけます)。

2人写っていても主人公の切り替えは簡単。こちらもF1.4開放でその差はハッキリ
もちろん浮き立たせたい被写体はレースクイーンだけではありません
こんなシチュエーションでも重宝します
パドックでこんなシーンにも出会いました。左目にピントを合わせたつもりでしたが、被写体深度が浅いので、ワンショットAFの場合は被写体が動いていると当然ピントがずれてしまうこともあります。この場合右目にピントが合ってしまいました。残念。AFの動作は速いのですが、開放近くでの撮影では、わずかなタイムラグでも影響してしまいます(写真右はDPP4のスクリーンショット)
開放絞りだと2人同時にピントが合う確率は奇跡に近いので、こちらはF3.2

 以下、キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」による1920×1280ピクセルのフォトギャラリーです。ボディは「EOS 5D Mark IV」。6720×4480ピクセルで撮影し、フォトショップにて微調整とリサイズ、写真によってはトリミングも行なっています。また、最後にオリジナルサイズの画像も掲載しますので、そちらもぜひご覧ください。

 以下、オリジナルサイズの画像です。クリックすると6720×4480ピクセルで開きます。

世界初、自動でバウンス撮影をするスピードライトの最新モデル「470EX-AI」

キヤノンの最新スピードライト「470EX-AI」

 スピードライトの光を直接照射せず壁や天井に1度反射させ、拡散した光で被写体を照らして撮影するのが「バウンス撮影」です。プロの世界ではさほど特別なことではないこの撮影方法は、その光質の柔らかさもさることながら、壁などの近い背景に影が出にくいのが特徴で、ポートレートに限らず室内での記者会見などでもよく使われます。

 TVなどで見る記者会見で、スチルカメラマンのクリップオンストロボが前ではなく上を向いているシーンはもはや定番とも言えるものですが、このテクニックをオートで行なってしまう「AIバウンス機能」を備えた世界初のスピードライトが、今回試した470EX-AIです。

 といっても、サーキットは野外ですし、天井もなくパドック内も天井の形状が経験上適しているとは言い難かったので、今回はGT300クラスを戦うSUBARU BRZ GTのレースクイーン“BREEZE”の協力を得て、控え室で撮影させていただきました。

作例1

 窓からの外光が、クリアブルーの背景にあるパーティションを通じて逆光気味に差すシチュエーション。スピードライト側の「AI.Bボタン」を押すと自動で発光部が動き出し、まず被写体に向かってプリ発光。続いて天井に向かってもう1度プリ発光し、測距完了。あとは押すだけです。撮っている方も何が何だか分からないのですが、結果的には自動でちゃんと写っていました。

 仕上がりを見る限り、極力自然光を活かしながら補助的に発光させてフラッシュ光の存在があまり目立たないようにする設定らしく、強い光の差す窓際などではモデルさんがアンダー気味になることもありましたが、おおむね良好。不自然な影が一切出ず、かといって人工的な光質を感じさせることもない仕上がりは、速写性には欠けるもののポートレートや記念写真などの室内人物撮影には重宝しそうです。

 また、ハイスピードシンクロにも対応していますので、今回のような大口径レンズ使用時にもシャッター速度の制限なく開放側を使えます。ほかにも色々な機能を備えているようですが、今回は時間の関係で機械お任せのフルオートのみで使用してみました。

最もバウンス撮影しやすい白い天井、白い壁の部屋にて。右の横位置写真のみ若干発光量が強いのか、顎の下にトップから降り注ぐ光の影が確認できますが、どのカットも自然です
強い逆光状態となる窓際では、かなりアンダーになるシーンも。この写真はDPPで大幅にプラス補正し、救済と言っていいレベルの補正をしました。見る限りほとんど発光していないようにも見えるので、もう少し機械のクセや得手不得手のパターンを把握した方がよさそう……。いや、色調を考えると単なる筆者の何らかのミスかも? とりあえず掲載しておきます
左がスピードライト使用。強い逆光状態ですがうまく制御されました。右は不使用です。後ろからまわり込む自然光の雰囲気を生かすか、証明写真のようにスピードライトでクッキリ写すかは、もちろん撮影者の意思次第です

ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」

「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は「D850」と組み合わせて使用しました

 こちらはちょっぴり長い105mm。前述のキヤノンの85mm同様、高い描写性能と美しいボケ味を謳うF1.4の大口径中望遠レンズです。わずか20mmの違いは使ってみると結構大きく、こちらの方がかなり望遠っぽい使い勝手という印象です(当たり前か)。

 また、その描写はこちらも見事なもので「ピント面から遠ざかるにつれてなだらかに変化する美しいボケ味で、人物や静物などの奥行き感をより自然に描写する」とのニコンの謳い文句に偽りなし、という納得の1本。税別24万円と高価ながら、できれば手にしたいなぁと思わせる写りでした(こちらも掲載画像は全て1920×1280ピクセルでご覧いただけます)。

目元の描写や口元、髪の毛のボケ味など、どこをとっても満足のいく仕上がりでした
今回はフルHDと同じ長辺1920ピクセルでの掲載となりますが、「D850」のフルサイズ(5504×8256ピクセル)で確認すると、このような全身画像でも肌や衣装の質感まで克明に写る、驚きの描写力です
立ち並ぶレースクイーンの中でたった1人と写真でコミュニケーションが取れている気分。絞りF4でもこれだけボケます
アングルを工夫すれば、グリッドウォークでも背景のボケを生かした撮影は可能なんですね。こんな場合、ハイスピードシンクロは必須です

 以下、ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」による1920×1280ピクセルのフォトギャラリーです。ボディは「D850」。8256×5504ピクセルで撮影し、フォトショップにて微調整とリサイズ、写真によってはトリミングも行なっています。また、最後にオリジナルサイズの画像も掲載しますので、そちらもぜひご覧ください。

 以下、オリジナルサイズの画像です。クリックすると8256×5504ピクセルで開きます(ジェンソン・バトン選手はISO 2000)。

撮影を終えて

 今までポートレート撮影の機会が少なかった筆者にとって、ポートレートスペシャルとも言えそうな大口径中望遠レンズを使用する機会にはなかなか恵まれませんでしたが、サーキットでの撮影においてもなかなか楽しいレンズでした。どちらのレンズも精細な描写と美しいボケ味が本当に魅力的。写真を撮る環境だけを考えれば決して十分とは言えないサーキットで単焦点レンズを使うことに少々の不便さも感じたものの、そのレンズ性能の恩恵は十分に感じられます。あわよくば、もっともっと時間をかけて丁寧に作品作りをしたくなる、そんな衝動にかられる2本のレンズでした。