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高橋学の最新大口径中望遠レンズでレースクイーンなど撮影してみた
キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」、ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」
2018年6月6日 00:00
SUPER GT 第2戦 富士、第3戦 鈴鹿にて、ニコン、キヤノンの大口径中望遠レンズを使った撮影をしてきました。ターゲットはサーキットの華、各チームのレースクイーンの皆さま。使用したレンズは2016年8月に発売された「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」、2017年11月に発売されたキヤノンの「EF85mm F1.4L IS USM」の2本。共に優れた描写と美しいボケ味を謳う高性能レンズで、価格はニコンの105mmが24万円(税別)、キヤノンの85mmが20万円(税別)と、中望遠レンズとしてはなかなかのお値段です。
それゆえ、その描写力への期待は高まるものの、レースクイーンとの距離も自由にならず、ファンでごった返したサーキットでのピットウォークやグリッドウォークを単焦点レンズで撮るというミッション自体に少々無理も感じつつ、ましてや、そもそも若い女性と話すこと自体ハードルが高いオッサンに何ができるのだろうと考えながら、サーキットへ向かいました。
今回、この2本のレンズに組み合わせるボディは、ニコンが「D850」、キヤノンが「EOS 5D Mark IV」と、高性能レンズとの組み合わせに不足なしと思える2台の高画素モデル。ついでに、というわけでもないのですが「ポートレート撮影に適した外部ストロボ」として2018年4月にキヤノンから発売されたスピードライトの最新モデル「470EX-AI」も試す機会がありましたので、そちらの感想もお伝えします。
キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」
中望遠レンズは昔からポートレートに適したレンズとされてきましたが、実は筆者自身はもう少し長い焦点距離の方が背景の整理もしやすいし、ディストーションの少ないレンズも豊富にあるし、いいのではと思ってきました。しかしながら、このF1.4という大口径の85mmは、いざ撮影してみると開放からシャキッとした描写と柔らかく美しいボケ、歪みを感じない素直な写り、どれをとってもいきなり満足度の高いもので、慣れないレースクイーンの撮影ながらすぐに楽しくなってしまう魅力に満ちたものでした。
もちろん、今回は撮影距離が自由にならないグリッドウォークでの撮影でしたので、「ズームレンズなら……」と思うシチュエーションも少なくはなかったのですが、そんな思いをも凌駕する魅力を持ったレンズです。開放での撮影ではまつ毛にピントが合うともう瞳はボケてしまうほど被写界深度は浅いし、2人並んでもらって撮ると、両方の人にピントが合う確率など奇跡に近いし、色々とナーバスな部分もありますが、それでもやっぱり解放付近で思いっきり撮りたいと思わされるレンズでした(掲載画像は全て1920×1280ピクセルでご覧いただけます)。
以下、キヤノン「EF85mm F1.4L IS USM」による1920×1280ピクセルのフォトギャラリーです。ボディは「EOS 5D Mark IV」。6720×4480ピクセルで撮影し、フォトショップにて微調整とリサイズ、写真によってはトリミングも行なっています。また、最後にオリジナルサイズの画像も掲載しますので、そちらもぜひご覧ください。
以下、オリジナルサイズの画像です。クリックすると6720×4480ピクセルで開きます。
世界初、自動でバウンス撮影をするスピードライトの最新モデル「470EX-AI」
スピードライトの光を直接照射せず壁や天井に1度反射させ、拡散した光で被写体を照らして撮影するのが「バウンス撮影」です。プロの世界ではさほど特別なことではないこの撮影方法は、その光質の柔らかさもさることながら、壁などの近い背景に影が出にくいのが特徴で、ポートレートに限らず室内での記者会見などでもよく使われます。
TVなどで見る記者会見で、スチルカメラマンのクリップオンストロボが前ではなく上を向いているシーンはもはや定番とも言えるものですが、このテクニックをオートで行なってしまう「AIバウンス機能」を備えた世界初のスピードライトが、今回試した470EX-AIです。
といっても、サーキットは野外ですし、天井もなくパドック内も天井の形状が経験上適しているとは言い難かったので、今回はGT300クラスを戦うSUBARU BRZ GTのレースクイーン“BREEZE”の協力を得て、控え室で撮影させていただきました。
窓からの外光が、クリアブルーの背景にあるパーティションを通じて逆光気味に差すシチュエーション。スピードライト側の「AI.Bボタン」を押すと自動で発光部が動き出し、まず被写体に向かってプリ発光。続いて天井に向かってもう1度プリ発光し、測距完了。あとは押すだけです。撮っている方も何が何だか分からないのですが、結果的には自動でちゃんと写っていました。
仕上がりを見る限り、極力自然光を活かしながら補助的に発光させてフラッシュ光の存在があまり目立たないようにする設定らしく、強い光の差す窓際などではモデルさんがアンダー気味になることもありましたが、おおむね良好。不自然な影が一切出ず、かといって人工的な光質を感じさせることもない仕上がりは、速写性には欠けるもののポートレートや記念写真などの室内人物撮影には重宝しそうです。
また、ハイスピードシンクロにも対応していますので、今回のような大口径レンズ使用時にもシャッター速度の制限なく開放側を使えます。ほかにも色々な機能を備えているようですが、今回は時間の関係で機械お任せのフルオートのみで使用してみました。
ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」
こちらはちょっぴり長い105mm。前述のキヤノンの85mm同様、高い描写性能と美しいボケ味を謳うF1.4の大口径中望遠レンズです。わずか20mmの違いは使ってみると結構大きく、こちらの方がかなり望遠っぽい使い勝手という印象です(当たり前か)。
また、その描写はこちらも見事なもので「ピント面から遠ざかるにつれてなだらかに変化する美しいボケ味で、人物や静物などの奥行き感をより自然に描写する」とのニコンの謳い文句に偽りなし、という納得の1本。税別24万円と高価ながら、できれば手にしたいなぁと思わせる写りでした(こちらも掲載画像は全て1920×1280ピクセルでご覧いただけます)。
以下、ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」による1920×1280ピクセルのフォトギャラリーです。ボディは「D850」。8256×5504ピクセルで撮影し、フォトショップにて微調整とリサイズ、写真によってはトリミングも行なっています。また、最後にオリジナルサイズの画像も掲載しますので、そちらもぜひご覧ください。
以下、オリジナルサイズの画像です。クリックすると8256×5504ピクセルで開きます(ジェンソン・バトン選手はISO 2000)。
撮影を終えて
今までポートレート撮影の機会が少なかった筆者にとって、ポートレートスペシャルとも言えそうな大口径中望遠レンズを使用する機会にはなかなか恵まれませんでしたが、サーキットでの撮影においてもなかなか楽しいレンズでした。どちらのレンズも精細な描写と美しいボケ味が本当に魅力的。写真を撮る環境だけを考えれば決して十分とは言えないサーキットで単焦点レンズを使うことに少々の不便さも感じたものの、そのレンズ性能の恩恵は十分に感じられます。あわよくば、もっともっと時間をかけて丁寧に作品作りをしたくなる、そんな衝動にかられる2本のレンズでした。