ニュース

ジェイテクト、高耐熱リチウムイオンキャパシタでEPSの高出力化補助やバックアップ電源を提案

トヨタ「ランドクルーザー」改造車に試乗

ジェイテクトのRP-EPS(ラックパラレルEPS)+85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの高出力化補助電源システム搭載に改造されたトヨタ「ランドクルーザー」

 ジェイテクトは、クルマの電動化・自動化という流れのなかでEPS(電動パワーステアリング)の適用車種拡大を見据えている。EPSはエンジン出力を直接利用する油圧式パワーステアリングに比べ、燃費に対する影響をコントロールしやすいほか、近年大幅に採用車種が増えているレーンキープアシストやレーントレーシングアシストなどのステアリングサポート技術では必須ともなっているため、ますます利用範囲は広がっていくだろう。

 その広がりのなかでジェイテクトが提案するのが、大型SUVにおけるEPSの電力不足解消を解決する補助電源システム。大型SUVにおけるEPSは、12V車の場合高負荷時には電力が若干不足する傾向にあるといい、その際に電力を高出力化するデバイスを装着することで、そのような状況を解消することができるとのこと。また、同様なデバイスで電力バックアップを行なうことで、車両電源故障時にも急にEPSが重くなることなく、安全にステアリング操作をし続けることができるという。

EPSの適用拡大
EPS補助電源システムの概要
高耐熱にして問題解決
さまざまな形態で販売
自動車以外の用途例

 もちろん、24V車や最近採用が始まっている48V車では、EPSに十分な電力が送り込まれるが、12V設計のままでよいならコスト的にも有利に働くし、将来48V車に移行するとしても過渡期には必要な技術だろう。

 ジェイテクトはそのような電力アシストを、リチウムイオンキャパシタで提案。しかも、車載に耐えうる85℃耐熱リチウムイオンキャパシタで解決しようとしている。

 製品としては、85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの単品販売、キャパシタとバランス回路がセットになったモジュール販売、それに充放電コントローラを加えた充放電システム販売を行なう。

EPS用補助電源システム バックアップ電源ユニット
高耐熱リチウムイオンキャパシタ 500F 2.2V~3.8V(2400J) タブ片出し型
高耐熱リチウムイオンキャパシタ 500F 2.2V~3.8V(2400J) タブ両出し型
高耐熱リチウムイオンキャパシタ 2000F 2.2V~3.8V(9600J)
シートタイプなので、必要に応じてスタックし、モジュール状態で使える

 利用するメーカーは用途によって85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの形態を選べばよく、独自に充放電システム設計をしなくても利用可能なのは、自動車産業以外の用途も考えているため。ジェイテクトでは建設機械や農業機械、電車やバス・トラック、医療機器や人工衛星などへも利用可能であるとする。

 実際の試乗は、大型SUVであるトヨタ「ランドクルーザー」をジェイテクトが改造したもので行なった。このランドクルーザーは12V車でRP-EPS(ラックパラレルEPS)に加え、85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの高出力化補助電源システムを装備。EPS高負荷時には12Vバッテリーの電圧に加え85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの電圧(2直列、6V)を加えることで、ステアリング操作を変わりなく行なえるようになっている。

改造されたランクルの車内
RP-EPSを装備する
ミラーで見たRP-EPS

 ドライバーとして実際にスラロームコースを運転してみたが、85℃耐熱リチウムイオンキャパシタの高出力化システムをONにした場合とOFFにした場合では、ONにしたほうが圧倒的にスラロームをこなしやすかった。OFFではある程度しっかり力を入れないとステアリングホイールを回すのが難しく、ラクラク操作というわけにはいかない。この高出力化は、結構影響するのだなと感じた。

 もう一つはバックアップ電源としての使い方で、円旋回をしているときにEPSの電源を落とすというもの。EPSに限らずパワステの場合、電源がなくなってしまうと急に“重ステ”となり、高速道路などでは極めて危険な状態になりがち。ジェイテクトの提案する85℃耐熱リチウムイオンキャパシタのバックアップ電源があれば、そういった際にも数分EPSの動作を維持して、安全にステアリング操作できるというものだ。こちらも実際にメインシステムの遮断を行なったが、何の問題もなくバックアップ電源が動作し、円旋回し続けることができた。

電圧変動。システムOFFのオレンジのラインは高負荷時に電圧が落ち込んでいる
こちらは運転を終えた際のトルク線図。オレンジに比べ、グリーンのラインが中央に集まっており、操舵トルクが小さかったことが分かる

 油圧システムの場合、ブレーキシステムのX配管に代表されるように、バックアップシステムと構築するのに空間設計などがとても大変となる。また、将来的に電動化・自動化を考えた場合、油圧というものがクルマで使われ続けるのかは難しい問題だ。EPSであれば電動化・自動化の流れに向いており、電気のためバックアップ電源の構築も油圧に比べれば容易だ。85℃耐熱リチウムイオンキャパシタであれば、充電も速く、困ったときの昇圧用途や瞬時の短時間バックアップ用途などに向いているだろう。

 クルマにどの程度のロバスト性を求め、どの程度のコストをかけるかというのは商品設計の問題だが、1人のユーザーとしては自分の運転するクルマは安全なクルマであってほしいと思うし、いざというときは何らかのコントロールが効いてほしい。自動ブレーキを持つクルマが当たり前になったように、ユーザーの意識やクルマという商品の構成次第では、このようなバックアップシステムが強く望まれる時代がすぐそこに来ているのかもしれないと感じた。