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BMW、新型「3シリーズ」のヘッドライトは「E46」をイメージ。デザイナー永島譲二氏による「BMWデザイン・サロン」

新型「Z4」「3シリーズ」「8シリーズ」のデザイン解説

2018年11月5日 開催

BMW AG BMWデザイン部門 エクステリア・クリエイティブ・ディレクター 永島譲二氏

 ビー・エム・ダブリューは11月5日、独BMWグループで活躍する日本人デザイナーの永島譲二氏による「BMWデザイン・サロン」を開催した。

 永島氏は1988年から独BMWグループのデザイン部門に所属し、これまでに「Z3」(1996年)、「5シリーズ」(1996年)、「3シリーズ」(2005年)などのデザインを手掛けたほか、コンセプトカーのデザイン開発にも関わっている。

 今回のデザイン・サロンでは、まもなく市場に導入される新型3シリーズに加え「8シリーズ」「Z4」といった新型のデザインについて、「今回ご紹介する3モデルは自分のプロジェクトではないけれども、Z4と8シリーズのコンセプトカーはプロジェクトマネージャーを務めました。ミュンヘンを出るときに担当のデザイナーとも詳しく話をしてきましたので、今回ご紹介させていただきます」と、イラストを交えながら解説した。

永島氏はBMWデザイン・サロンが始まるまで、BMWモデルを黙々とスケッチし続けていた

キドニーグリルとヘッドライトでイメージを形成し、大きくなるボディはデザインで小さく見せる

2019年春の登場が予告されている新型「Z4」について解説する永島氏

 まずはZ4について触れ、フロントデザインでは、BMWが特徴としている「ダブルラウンド」という丸い要素(もしくは同じ形)が2つ並んだデザインのヘッドライトを、Z4では水平基調ではなく、縦に(実際は少し斜めに)2つ並べたことが大きなトピックであると説明。また、キドニーグリルでは端にある頂点の位置がこれまでより下がったことがポイントだと紹介した。キドニーグリルのデザインについては8シリーズも同じで、「スポーツカーについては、頂点を下げたキドニーにする」というアイデアを取り入れたと話した。

スポーティモデルのみキドニーグリルの頂点がこれまでの位置(写真の×印)から下方に変更されたが、永島氏は「今後も継承されるかどうかはまだ分からない」とした

 さらに、BMWとして初めて採用したというキドニーグリルのメッシュについては、近くで見ると「羽の生えたような立体的な形をしている」と述べ、これまでとの違いを出す試みだとした。

 サイドビューについては、これまでフロントからリアにかけての少し下がるようなラインを特徴としてきたが、今回のZ4はフロントからリアにかけて上がるようなラインを採用。このラインは「ボーンライン」と呼ばれ、フロント側は影になり、リアに向かうにつれて明るくなる“ねじれ”の面を作り出し、Z4だけでなく3シリーズ、8シリーズにも共通する特徴として「走りのパワーの象徴として、駆動輪であるリアホイールを強調する」と解説した。

キドニーグリルのメッシュは、近くで見ると立体的な形になっているとのこと
BMWの特徴でもある後輪駆動をアピールするサイドのボーンラインについて説明する永島氏

 続けて、「パリモーターショー 2018」で世界初公開された3シリーズについては、ヘッドライトの下部にボディカラーが入り込むデザインについて、1990年代の3シリーズ「E46」をイメージしたと紹介。「3シリーズはアイコニックなクルマで、3シリーズというイメージが強いので、オマージュ的な意味でフロントにE46のモチーフを用いました」と永島氏は話した。

10月に開催された「パリモーターショー 2018」で世界初公開されたばかりの新型「3シリーズ」のヘッドライトは、1990年代の3シリーズ「E46」をイメージ

 また、「人の平均身長が大きくなるため、クルマはモデルチェンジを繰り返すごとに大型化していきます。新しい3シリーズは、ちょっと前の5シリーズと同じくらいの全長を持ちます。そうすると、いかにコンパクトに見せるかというところがキーになってきます。この3シリーズはリアが回り込むようなデザインで、フロントから見ると全長が短く見えるようになっています」と解説。

 サイドデザインについては、これまでのBMWにあったフロントとリアを結ぶ「ジッケライン」をベルトラインに近い位置まで持って行き、ドアの中央あたりにボーンラインを入れることで、光と影を強調してボディを薄く見せる効果を狙ったとした。

リアを回り込むようなデザインにして、フロントから見ると丸みを帯びて短く見えるような工夫がされている
サイドのボディラインについて。「ボディカラーが白なので分かりづらいかもしれない」と話しつつ、写真に書き込みをしながらボーンラインやリアホイールを強調するデザインを説明

 最後に8シリーズについては、「先代の『6シリーズ』の後継になる」と話し、「大きくてスポーティなツアラーという性格から、もうちょっとコンパクトスポーツ的に変わって、アグレッシブになった」と紹介。

 Z4と同様に、フロントデザインでは頂点が下方に位置するキドニーグリルとその上に配置されるヘッドライトが3シリーズと異なる部分で、サイドではリアフェンダーを強調するような強いショルダーラインを採用。さらに、エアブリーザーを始点にしてリアホイールまで陰影を強調する剣の先のようなデザインを用いて視覚的な重量を減らす効果を狙ったという。

ロー&ワイドでスポーツクーペらしいデザインの新型「8シリーズ」は、頂点が下方に位置するキドニーグリルと、キドニーグリルの上に少し斜めがかって配置されたヘッドライトがスポーティなイメージアイコンとなる
サイドのキャラクターラインは、フロントホイールの後方に位置するエアブリーザーを始点に、リアにかけて細くなる剣の先のようなデザインで陰影を強調

 リアは、立体的なL字型に浮かび上がる立体的なテールランプを採用して、暗くてもBMWと分かるようなアイコン的なデザインを用いたこと、幅広のショルダーデザインにすることで、駆動輪であるリアホイールを強調するとともに、視覚的な安定感と幅広で“カッコイイ”と思わせるデザインにしたことを解説した。

8シリーズのリアデザインについて、かなり幅広のショルダーラインにすることで、リアを強調していると永島氏は解説

 永島氏の解説の後には質疑応答が行なわれ、「セダンやクーペではあまり奇抜なデザインはできなくなってきているのか? その場合、SUVが新しいクリエイティブの場になってきているのか?」という質問に対して、永島氏は「現在のBMWの生産はSUVが約36%を占めています。SUVの率は増えてきていますが、セダンは世界的にも市場が縮小してきています。セダンのデザインはシルエットを比べたらほとんど一緒です。同じくクラスの他車モデルと比べて30mmも違っていたら、大きな違いになります。ところがSUVはまだまだどんな形でも表現できます。四角い面だけを使ったようなミリタリー調のデザインもありますし、流麗なデザインでもSUVになります。SUVは将来的に、まだデザイン的なチャレンジをすることができるのではないかと思っています」と今後のデザインについて語った。

会場に並べられたデザインスケッチのパネル