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WRC 日本ラウンド開催に向けFIAも視察した「新城ラリー 2018」
全日本ダートトライアルのチャンピオンマシンもデモラン
2018年11月12日 12:08
- 2018年11月3日~4日 開催
11月2日~4日、愛知県新城市で「新城ラリー 2018」が開催された。ここ数年は「JAF全日本ラリー選手権」と「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ」(TGRラリーチャレンジ)の2つの大会を併催する形で催されてきたが、2018年はTGRラリーチャレンジの会場が豊田市周辺に変更となったため、JAF全日本ラリー選手権 第11戦(最終戦)単独の開催となった。また、今大会は2020年のWRC 日本ラウンド開催に向けたキャンディデートイベントとして、FIA(国際自動車連盟)の視察団も来日して各ステージの視察が行なわれた。
大会のメイン会場となる県営新城総合公園には、参戦マシンのメンテナンスを行なうサービスパークのほか、競技やデモランが行なわれる特設コース、TOYOTA GAZOO Racing PARKをはじめとするさまざまな企業ブースや飲食ブースなどが用意され、初めてラリーを観戦する人でも楽しめる内容となっていたのも例年どおりだ。
なお、全日本戦のみの開催となった今年の新城ラリーだが、来場者数は過去最高を記録した2017年と変わらず5万4000人(主催者発表)と、新城市の人口を上まわる多くのファンが会場に足を運んだ。
セレモニアルスタート
競技前日の11月2日には、市内にある新城文化会館でセレモニアルスタートが行なわれ、翌日に戦いを控えたラリーカーが集まったファンが並ぶ中を走行した。このセレモニアルスタートでは地元新城高校の吹奏楽部による演奏が毎年行なわれてきたが、新城高校は今年度をもって市内の新城東高校と統合され、2019年には新城有教館高校として新たなスタートを切るとのこと。よって「新城高校の吹奏楽部」としては最後の演奏となったが、新しい高校になってもぜひこのラリーのスタートを盛り上げ続けてほしいものだ。また、会場には今年から初めて大型ビジョンが導入され、選手名などが分かりやすくなった。
新城では圧倒的速さを誇ってきた勝田範彦選手を破り、新井敏弘選手が初優勝
岐阜で行なわれた前戦の第9戦で勝利し、すでにシリーズチャンピオンを決めた新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)だが、ここ新城でも速さを見せつけて今季6勝目を挙げた。
コース幅が狭く、細かく曲がりくねったSSが続く新城ラリーをあまり好んでいなかった新井選手は、新城ラリー初優勝の大きな勝因として今年から投入されたタイヤ「ADVAN A052」を挙げた。2位には、この新城ラリーにめっぽう強い勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)。3位には奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)が続いた。
また、トヨタ 86などが数多くエントリーしているJN4クラスには、元F1ドライバーにして国内のSUPER GTでもチャンピオンを獲得しているヘイキ・コバライネン選手が参戦。選手権外のオープンクラスではトヨタ S800やチェリー X1、フォード エスコートなど懐かしのマシンも多数参加し、激しくも賑やかな戦いとなった。
県営新城総合公園で行なわれたデモランやさまざまなブース
新城ラリーの魅力は、ラリー競技の他にもさまざまな催しが行なわれ、日ごろはあまりモータースポーツに接する機会のない人でも気軽に立ち寄って楽しめるよう工夫されていることだろう。
広大な芝生広場に設置されたTOYOTA GAZOO Racing PARKには、トヨタの新旧ラリーカーが展示されたほか、大人から子供まで楽しめるさまざまなアトラクションを用意。その他の企業ブースでも車両やパーツの展示、音楽ライブなどが催されていた。また、“働くクルマ”の出展スペースでは、自衛隊から警察、消防、NEXCO中日本、JAFなどのさまざまな働くクルマが集められ、こちらは主に子供向けのサービスが充実。会場全体に親子連れが多いのも納得の充実ぶりだ。
また、会場内に設置されたSS競技コースでは全日本選手権の走りが間近で観戦でき、全日本ダートトライアル選手権の優勝マシンやWRCを戦うトヨタのヤリスWRCがデモランを行なって会場を沸かせた。中でもヤリスWRCは、2017年にこの車両でシーズンを戦ったユホ・ハンニネン選手がこのデモランのために来日するなど、国内外のトップドライバーによる共演はここでしか見られない貴重なものとなった。
閉会式でも盛り上がるWRC誘致話
「はじめた時は『何年もつか?』などと言われた新城ラリーも早15回目。年々みなさんに盛り上げていただいて、いよいよ世界に手が届く新城ラリーとなってきました」と語り、閉会式の冒頭からWRC開催をにおわせるのは、大会会長を務める新城市長の穂積亮次氏。新城市がこれからもモータースポーツ、そしてスポーツツーリズムを盛り上げていくと宣言して閉会式は始まった。
大会名誉会長を務める愛知県知事 大村秀章氏は、ユホ・ハンニネン選手がドライブするヤリスWRCに同乗し、「信じていたとはいえ、あのスピードで壁に突っ込んでいくような走りで、思わず体が固まってしまった」と、苦笑いを浮かべつつ感想を述べた。また、今大会がFIAの視察が行なわれるキャンディデートイベントであったことに触れて「大変高い評価だったと聞いております」と明かし、2020年にWRCが愛知県で開催されることに大いに期待していると語った。
トヨタ自動車 副社長の友山茂樹氏は関係者への感謝の意を述べた後、WRCについて次のように語った。
「実はですね、今日はモリゾウこと社長の豊田はサボっています(笑)。岡山のスーパー耐久に自身がレーサーとして出場しておりまして、今日はちょっと欠席させていただいておりますが、ウチの社長がラリーを始めたのは、この新城ラリーからでございます。それが発展して、トヨタはWRCに参戦いたしました。WRCは今年で挑戦2年目となりますが、現在12戦中表彰台8回、4回優勝しております。マニファクチャラーズタイトルのトップを走っております(会場拍手)。これも皆さんのご支援のおかげです。この場をお借りしまして御礼を申し上げます」。
「この新城ラリーがなければトヨタ自動車のWRC参戦もありませんでした。こういう素晴らしい機会をいただいたことに報いるためにも、国内のラリーのますますの発展にこれからも務めていきたいと思っております。TOYOTA GAZOO Racingのホームグラウンドは、実はトミ・マキネン監督の母国であるフィンランドなんですけど、もう1つのホームグラウンドはここ新城だと思います(会場再び拍手)。WRCも残すところあと1戦、再来週(11月15日~18日)オーストラリアであるのですが、ここで何とかマニファクチャラーズタイトルをとって、この新城に凱旋帰国してまいりたいと思います。皆さまこれからも応援よろしくお願いいたします」。
続いて登壇したのは、大会名誉顧問を務める国会議員、そしてモータースポーツ振興議員連盟会長の古屋圭司氏。古屋氏は仕事の関係でギリギリでの到着となったが、登壇するなりK4GPマシンで出した自身の富士スピードウェイでのラップタイムを披露し、自身が現役モータースポーツ愛好家であることをアピール。
登壇していきなりのサーキット話に、ラリー関係者にはピンと来にくい部分もあったようだが、古屋氏は構うことなく「今、ちょうどミシェル・ムートンさんをはじめFIAの関係者も来ていまして、2020年にはこの新城をはじめ岡崎、そして私の地元中津川市、恵那市(岐阜)こういったところを舞台にやることが事実上の内定でございます。と、勝手に私が言ってもいけないのですが(笑)」と発言し、少々暴走気味。その後も勢いは止まらず、世界一の自動車産業を持ちながら、日本にはモータースポーツ文化が育っていないと語り、身近で見られるラリーはモータースポーツ文化育成の最大のツールになるとアピールした。
熱く語った古屋氏の後は、大会組織委員長 勝田照夫氏が今大会を締めくくった。まずは今回の運営体制を説明。ラリー経験者のオフィシャルが120名、ボランティアが230名、新城市役所の職員が120名、さらに今年はトヨタ自動車の技術部からのボランティアが計170名。このほかにも地元の警察署、消防署、地元のボランティアがこの新城ラリーを支えていると報告。また、トヨタ自動車をはじめとする35台ものトヨタグループの社員送迎用バスや三菱自動車工業のバス2台。そういった協力のもとに新城ラリーの成功があると感謝の意を述べ、これからも盛り上げていきたいと語った。