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日産、ツインモーター4WD搭載の新型EVレーシングカー「リーフ NISMO RC」を世界初公開し、銀座で説明会
2018年11月30日 19:43
- 2018年11月30日 開催
日産自動車は11月30日、現行モデルの2代目「リーフ」をベースとした新型EV(電気自動車)レーシングカー「リーフ NISMO RC」を、東京都中央区銀座にあるブランド発信拠点「NISSAN CROSSING(ニッサン クロッシング)」で世界初公開した。
新しいリーフ NISMO RCでは、初代モデルからパワートレーンを大幅に変更。従来はモーター、バッテリー、インバーターといったパワートレーンの主要要素をキャビン後方に一括配置して後輪を駆動するMRレイアウトを採用していたが、2代目のリーフ NISMO RCは最高出力120kWを発生するモーターをキャビン前方にも追加。前後輪の駆動力配分をVCM(Vehicle Control Module)で可変制御している。また、モーターの追加によって最高出力と最大トルクが2倍以上になり、システム合計で最高出力240kW、最大トルク640Nmを発生する。
このほか、新型リーフ NISMO RCに関する詳細は、関連記事の「日産、4輪駆動EVレーシングカー新型『リーフ NISMO RC』。先代から2倍以上の最高出力&最大トルクで0-100km/h加速は3.4秒」を参照していただきたい。
フォーミュラEで学んだことを市販車の開発に生かせる
発表会では新型リーフ NISMO RCの紹介に先立ち、新たに参戦を開始する「FIA フォーミュラE選手権」の参戦体制などについての発表が行なわれた。
最初に登壇した日産自動車 日産グローバル・モータースポーツ・ディレクター マイケル・カルカモ氏は、
フォーミュラEに参戦することに非常にわくわくしていると語り、その理由は日産がEVのパイオニアであり、第2世代となるリーフも成功を収めていること、フォーミュラEのドライバーたちが感じるのと同様のキビキビしたハンドリングや力強い加速をリーフユーザーにも体感してもらえる部分。また、モータースポーツが自動車技術の進歩と合わせて進んでいる現在はフォーミュラE参戦の絶好の機会だとした。
さらにカルカモ氏はフォーミュラEはユニークな点として、ドライバーはバッテリーの効率がいい使い方ができるよう管理し、レースが終わるまで最大限の速度を維持し続けることが求められることを紹介。そのために日産を含む全チームが取り組み、開発努力が未来のEVの改善に直接的につながっていき、日産にとってEVテクノロジー開発の基盤になるとアピール。フォーミュラEでは同じマシンを使うレギュレーションになっているので空力開発に多額の予算が必要になったりはせず、モーターやインバーターなどの開発に注力可能。レーストラックで学んだことを市販車の開発に生かせるとした。
カルカモ氏に続いて登壇した日産自動車 常務執行役員 ルー ドゥ・ブリース氏は、「日本の自動車メーカーとして初めてフォーミュラEに参戦することを大変誇りに思う」とコメント。日産ではリーフなどの販売でEV市場のリーダーとなっており、これまでにもモータースポーツで輝かしい歴史を持っているが、フォーミュラEに参戦することを決定したのはそれだけではなく、日産が推進している「ニッサン インテリジェント モビリティ」の考え方が原点にあると説明。
ニッサン インテリジェント モビリティでは、あらゆるシーンでユーザーに自信を持ってもらえる「インテリジェント ドライビング」、ワクワクするドライビングでありながら、よりクリーンで効率的な走りを提供する「インテリジェント パワー」、提供するクルマを幅広く社会とつなげる「インテリジェント インテグレーション」の3つを柱として、電動化の技術はインテリジェント パワーの戦略で心臓のような存在であると解説。日産にとってドライビングはA地点からB地点に移動させる手段ではなく、パワフルでエキサイティングな運転体験を提供することで、この実現には電動化技術より有効な手段はないと語った。
ブリース氏はフォーミュラE参戦が世界中の人に「日産がEVのリーダーである」とアピールする絶好の機会であり、日産ブランドが電動化技術で持っているわくわく感を表現でき、EVが持つポテンシャルをしっかりと強調。さらにカルカモ氏も述べたように、サーキットで学んだことを市販モデルに活用し、よりわくわくするEV作りが可能になるとした。
日産がフォーミュラEに参戦する意義について解説したブリース氏は、続いて参戦パーとなる「e.dams」の共同創設者およびチーム監督であるジャンポール・ドリオ氏を紹介。続けて12月15日(現地時間)にサウジアラビアのリヤドで開幕するフォーミュラEのシーズン5(2018年12月~2019年7月)におけるドライバー体制を発表した。
ドライバーには元F1ドライバーであり、フォーミュラEが設立された2014年シーズンからe.damsに所属。2015年~2016年に行なわれたシーズン2で年間優勝を手に入れたセバスチャン・ブエミ選手に加え、26歳のイギリス人ドライバーであるオリバー・ローランド選手がレースに出場。このほかに高星明誠選手がリザーブドライバー兼テストドライバーを務め、ヤン・マーデンボロー選手がチーム公式シミュレータードライバーを務める計4人体制でシーズンを戦う。
ブリース氏は4人のドライバーについて解説したほか、週末に富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されるファン感謝イベント「NISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY 2018 Supported by MOTUL」で高星選手が日産のフォーミュラEマシンをドライブして走行シーンを来場者に披露することを紹介。これは国内で一般向けに日産のフォーミュラEマシンが走行シーンを披露する初めての機会になるという。
最後にブリース氏は、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)によって開発された新型リーフ NISMO RCのアンベールを行なってプレゼンテーションを締めくくった。
新型リーフ NISMO RCの車両解説は、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル COO 松村基宏氏が担当。
松村氏は「この日産 リーフ NISMO RCというクルマは、ニッサン インテリジェント モビリティのインテリジェント ドライビング、あるいはインテリジェント パワーの2つのキーワードを具現化するため、リーフをモチーフにしたレーシングコンセプトの車両を開発するという依頼から生み出されたクルマです」と開発コンセプトを紹介。すべてに渡ってNISMO内で開発を行なったと語った。
車体はカーボンモノコックを中心に、前後にカーボンサブフレームを付帯。カーボンサブフレームは前後共通となっており、キャビン部分などにはカーボン補強したロールケージが設定されている。
パワートレーンには量産車のリーフで使っているモーターやインバーターを活用していることが特徴となっており、バッテリーも量産品のセルパッケージを使って「いかにスムーズに電気を使えるか」をテーマに開発を進めていったという。4輪駆動システムは加速だけでなく、減速時のエネルギー回生、前後トルク配分による旋回性向上などさまざまなメリットを持ち、高い自由度も備えているが、現段階では開発途中でいろいろなパターン、モードなどを設定して評価しているという。
搭載数を1個から2個に増やしたモーターと4輪駆動システムにより、0-100km/h加速はタイム半減となる3.4秒を実現。バッテリーの大型化などを受けて重量は150kgほど重くなったが、フロントのダウンフォースは50%増となっており、走行性能を高めることができたと松村氏は語っている。