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Arm、「arm Tech Symposia」開催。理研の松岡氏がArm採用の“ポスト京”で基調講演
2018年12月18日 18:44
- 2018年12月6日 開催
Armは12月6日、東京都内で「arm Tech Symposia」と題したプライベートイベントを開催した。基調講演では、英ArmのVP Operations, Tools&Servicesのホブソン・バルマン氏が登壇し、「The Fifth Wave of Computing」と題するプレゼンテーションを行なった。
まず、バルマン氏は「これまでにイノベーションの継続的な波があった」と説明した。直近で言えば第3の波がインターネットの登場、第4の波がクラウドにサポートされたモバイルコンピューティング。そして現在が第5の波であるとし、「データドリブンの時代だ」と述べる。
こうした状況の中、バルマン氏が強調したのはエッジ・コンピューティングの重要性で、「エッジベースでの処理の革命は始まったばかりであり、これからも続いていく。データが収集された場所に近いところで処理を行なうことにより、リソースを最大限に活用できる。ローカルでプロセッシングを行ない、必要なものだけをクラウドに送る。これによってクラウドとネットワークに生じるボトルネックを避けられる。必要なデータだけをアップロードすればよい」と、エッジ側で処理することのメリットを説明した。
クルマの自動運転にも言及し、「自動車産業は大きな産業の核であり、現在は自動運転に向けてさまざまな取り組みが行なわれている。社会の変革も大きく関わってくるはずだ」と語った上で、9月に発表された「Coretex-A76AE」に言及。「これは世界初の自動運転に対応できるレベルのプロセッサである。アームのテクノロジーであるSplit-Lock機能を備えている」と話す。
最後にバルマン氏は「第5の波は確実にやってくる。すべてがコンバージェンスされ、業界が様変わりしようとしている。そこでわれわれはさまざまな基盤を提供することに注力している」と述べ、ArmのSVP, Infrastructure Business Lineであるドリュー・ヘンリー氏にバトンを渡した。
ヘンリー氏が話したのは、インターネットが変革の時期を迎えているということだ。「仮に10億台のビデオセンサーから情報を収集すると、400EB(エクサバイト)のデータがインターネット上で流通することになる。これは現在のインターネット上を流れるデータ量の3倍に相当する。こうしたデータを処理し、認識したり機械学習に使ったりするためには、4000万台のサーバーが同時処理をしてデータを加工しなければならない」と、IoT時代におけるデータ量について説明を行なった。その上で「インターネットのインフラは変化する必要がある。こういう仕事に取り組む時期だと考えている」と述べた。
また、先日発表された、AWS(Amazon Web Services)でのArmプロセッサの採用についても語った。こうした取り組みを「まったく新しいもの」と話し、「われわれのプラットフォームを使った独自のプロセッサを開発することが決定された。Armの技術をベースにした独自のCPUであり、これは素晴らしいプロセッサである。Armにとっても極めて重要な出来事であり、誇りに思っている」と話した。
Industry Keynoteとしてプレゼンテーションを行なったのは、理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏で、「ポスト京」と仮に呼ばれているスーパーコンピューターについて説明を行なった。
ポスト京はすでに活用されている「京」の後継として開発が進められているものだ。このポスト京について、松岡氏は「京を継承するものということで、イノベーションが足りないのではと報道されることがあるが、まったくの間違いだ。ポスト京で実現できるイノベーションははるかに大きい」と語った。
このポスト京の開発において、特徴的な手法として説明されたのが「コ・デザイン」と呼ばれるもの。これはプロセッサのアーキテクチャからアプリケーションのアルゴリズム全体にまたがって協調設計をするという手法である。このコ・デザインを進める中で選定された、ターゲットとする複数のアプリにおいて、ポスト京は現状の京に対して100倍以上の性能向上を見込む。
最後に松岡氏は「ポスト京によってさまざまなイノベーションが期待できる。また、このポスト京で培われた技術は、われわれの理研に入るマシンだけでなく、エッジからクラウドまで、幅広いエコシステムの中で活かされる」と語った。