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Arm、IoTプラットフォーム「Arm Mbed Platform」アピール
2018年5月10日 19:28
- 2018年5月10日 開催
ソフトバンクグループ100%子会社の半導体設計企業Armの日本法人となるアームは5月10日、都内で記者説明会を開催した。同社がIoT(Internet of Things)デバイス向けの開発プラットフォームとなる「Arm Mbed Platform」(アーム・エンベッド・プラットフォーム)に関する説明を行なった。
Arm Mbed PlatformはIoT機器向けのOSとなる「Mbed OS」、それと連携してIoT機器の管理やアプリケーションのプラットフォームとなるMbed Cloudの2つのモジュールからなり、それぞれArmが提供するIoT向けのIPデザインを採用したマイクロコントローラなどと連携して動作する。
11兆ドルの市場規模になると予測されているIoT市場、2035年までに1兆個を超えると予想
冒頭で挨拶に立ったアーム 代表取締役社長 内海弦氏は「Armは2~3年前にIoT専門の事業部を立ち上げた。Armにとって日本市場は親会社であるソフトバンクの本拠地ということもあるが、IoTの先端市場であるため重要という認識。IoTも日本発の新しいトレンドができていくと考えており、物流、エネルギー、スマートシティなどに特化した事業が立ち上がっていくだろう」と述べ、Armとしても今後IoT戦略の中で新しいアプリケーションなどを生み出す力がある日本市場を重視していくと強調した。
Arm IoTサービスグループ プレジデント ディペッシュ・パテル氏は、そうしたArmのIoT戦略について説明した。パテル氏は「調査会社によれば、IoTの市場規模は11兆ドルにも達するという。なぜそうした価値が発生するのかと言えば、産業界がIoTを導入すると、故障予知によりダウンタイムを最小化してアウトアップを最大化出来たりすることが可能になり、導入すると5~10%程度のランニングコストの削減につながる。まあ従業員のワークライフバランスの貢献にもなる」と述べ、特に産業界でIoTのニーズが強く、今後IoTが急速に普及していくだろうとした。
パテル氏はすでに多くのデバイスがネットワークに接続できる機能を有し、例えばスマートフォンのようなコンピューティングデバイスがその代表例だが、今後はよりシンプルな半導体を内蔵したIoTが爆発的に増えていき、2035年には1兆個を超えるだろうと述べた。
その上でIoTを実現していくには、いくつかの課題があり、それを克服していく必要があるとした。「IoTを利活用するには3つの大きな課題がある。それがデバイスの多様性、エンドツーエンドで実現されなければならないセキュリティ、そしてそれらを適切に管理していくことだ」とパテル氏は述べ、自動車のような大きなデバイスから、ほとんど電力を使わずにバッテリーだけで数年使えるような小型のデバイスまで様々なデバイスに対応していけるスケーラビリティがあること、またインターネットにつながる以上ハッキングされたりしないにする高いセキュリティ性を確保すること、さらにはクラウドを活用してそれらを適切に管理していく仕組みが必要だと説明した。
省電力なArmプロセッサと、MBed OS/MBed Cloudを組み合わせるArm MBed Platform
そうした課題に対してArmは、各種のソリューションを提供していくという。例えば、多種多様なデバイスという意味では、スマートフォンなどに多く使われている省電力のArmプロセッサという特徴を、IoTにも活かせるような半導体のデザインを顧客に提供しているという。
セキュリティという観点では、PSAやTrustZoneというArmプロセッサと一緒にIoTにも提供される。プラットフォーム向けのセキュリティ機能であるPSAを利用すると、デバイス向けの一貫性のあるセキュリティが提供できるとパテル氏は説明した。
そして、ArmがIoT向けに積極的に展開しているMbed OSとMBed Cloudを利用することで、IoT機器の管理なども楽になるという。Mbed OSは非常に小さなOSになっており、あまり処理能力が高くないマイクロコントローラでも高いセキュリティ性を確保したまま、クラウドに接続して様々なアプリケーションを活用できる。パテル氏は「専門知識がないユーザーでも、デバイスメーカーが提供するデバイスを購入して、MBed OSを使えばすぐに利用できる。重要なことはシンプルであることだ」と述べ、MBed OSを利用することでシンプルに導入できるデバイスが構成できると強調した。
また、MBed Cloudに関しては「デバイスがクラウドに接続されたら、適切にデバイスを管理しないといけない。例えばファームウェアを常に最新にしたり、必要のなくなったデバイスはクラウドから切り離さないといけない。そうした管理を行うのがMBed Cloudだ」と述べ、Arm自身がIoTに特化したクラウドサービスを提供することで、Armの顧客がより簡単にIoTのプラットフォームを導入していけると強調した。なお、MBed Cloudはその名の通りクラウドとしても使うこともできるし、顧客となる企業がポリシーでパブリッククラウドにはデータを置かないとしているのであれば、オンプレミス(自社内に置くサーバーのこと)での運用も可能だと述べた。
パテル氏はこうしたIoTのアプリケーションとして全館で照明の管理やロギングなどを行えるスマートビルディング、各種メーターがインターネットにつながるスマートメーター、さらには荷主が荷物の状態を始めから終わりまでチェックできるスマートロジスティックスなどについて言及した。
そして、具体的な活用事例として同社のパートナーとなるGMOクラウドが、MBed Cloudを利用して電子認証サービスを提供している事例を紹介した。パテル氏は「完全なソリューションを提供するならパートナーが大事で、Armは様々なレイヤーでパートナーがおり、そのパートナーと協力してソリューションを提供している」と述べ、Armだけでなくパートナーと協力して協力していくことが大事だと強調した。