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F1 開幕戦前にトロロッソ&レッドブル・レーシングのドライバーたちが集合! 2019年シーズンの意気込みを語った

「まず1勝を勝ち取りたい」とホンダ 山本モータースポーツ部長

2019年3月9日 開催

翌週のF1開幕戦に向けた意気込みなどが語られた「2019 ホンダ F1 キックオフ 記者会見」

 本田技研工業は3月9日、東京 青山にあるホンダウエルカムプラザ青山で「Aston Martin Red Bull Racing(アストンマーティン・レッドブル・レーシング)」「Red Bull Toro Rosso Honda(レッドブル・トロロッソ・ホンダ)」のチーム代表&ドライバーが参加する「2019 ホンダ F1 キックオフ 記者会見」を開催した。

 翌週の3月16日~17日(現地時間)に行なわれるオーストラリアグランプリからシーズンが開幕する2019年のF1世界選手権を目前に開かれたこのイベントには、2018年からパワーユニットを供給しているレッドブル・トロロッソ・ホンダのフランツ・トスト チーム代表、ダニール・クビアト選手、アレクサンダー・アルボン選手、2019年から新たにパワーユニット供給がスタートしたアストンマーティン・レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー チーム代表、マックス・フェルスタッペン選手、ピエール・ガスリー選手が参加。

 さらにレッドブル・レーシング モータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ氏、本田技研工業 モータースポーツ部 部長の山本雅史氏とホンダ F1 テクニカルディレクターの田辺豊治氏も出席するなど、ホンダと2つのF1チームの主要人物が集まり、シーズン開幕に向けて進められている準備状況や意気込みなどが語られた。

ホンダ&レッドブル チーム首脳陣

最初にホンダとレッドブルのチーム主要人物3人が登壇

 記者会見は3部構成で実施され、まずはレッドブルのマルコ氏、ホンダの山本部長と田辺ディレクターが登壇して、司会を務めたサッシャ氏からの問いかけに答えた。

レッドブル・レーシング モータースポーツアドバイザー ヘルムート・マルコ氏

 マルコ氏は「まず、レッドブルは自動車産業を代表するビッグブランドであるホンダと協力できることを非常にうれしく思っています。ホンダはF1だけでなくMotoGPもサポートしていますし、ヨーロッパで活躍しているとても若々しく将来を嘱望されるフォーミュラドライバーもサポートしています。われわれは今シーズン、とてもよく準備できていると思います。それはホンダのサポートと、トロロッソでの経験があるからです。ですので、今シーズンがまったく新しい状況ということはありません。昨シーズンのトロロッソとホンダがどのような状況だったのかについて理解を進めていますし、今シーズンに向けてすべてを綿密に準備を進めています。現在はテストを終え、信頼性も非常に良好で今シーズンに向けた展望もよいものとなっています」。

「これまでわれわれはセミワークスチームと呼ばれる体制で15シーズンに渡ってF1に参戦し、大きな成功を収めてきました。そんなわれわれからの『どんなエンジンであるべきか』といった提案を聞いてもらい、マシン開発に貢献してもらってきています。ホンダとのコミュニケーションは良好で、とてもいい関係が築けていると思います。双方でアイデアを出し合って、ホンダ側もわれわれが抱えるであろうシャシー面の課題にも対応してくれています」とコメント。

本田技研工業株式会社 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏

 山本部長は「4月からは『ホンダ F1 マネージングディレクター』として1年間頑張ることになりました。今年の体制は、私たちホンダが新たにF1にコミットメントして、体制を強化していると認識していただき、ホンダがレースで勝ちにこだわるということと、頂点を目指して新たなスタートを切るという強い思いでいます。これからは2チーム体制になっていきますが、こちらにいるヘルムート・マルコさんとトロロッソについて契約を始める時からいろいろな話をさせていただいているので、頂点を目指していくにはトロロッソとレッドブル・レーシングの2チーム4台体制が必要不可欠だと当初から思っていました」と語った。

本田技研工業株式会社 ホンダ F1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏

 田辺ディレクターは「(バルセロナでの開幕前のテストは)8日間の長いテストでしたが、基本的にわれわれのプログラムとチーム側のプログラムを順調にこなすことができたと思っています。いろいろなアクシデントやマイナートラブルは出ましたが、それもテストの期間で洗い出してから開幕戦に向かうというのがテストの意義でもあります。基本的には非常にプロダクティブなテストができたと思っています」。

「初めてパワーユニットをトロロッソとレッドブル・レーシングのクルマに積んだということで、クルマに積んだ後のパワーユニットを精査して、第1戦に向けてデータ的な部分を含めて見直して、準備を進めています」と説明した。

レッドブル・トロロッソ・ホンダ

レッドブル・トロロッソ・ホンダの3人

 続いてレッドブル・トロロッソ・ホンダのトスト代表、クビアト選手、アルボン選手の3人が登壇した。

フランツ・トスト チーム代表

 トスト代表は「ホンダとは2018年をとおしていろいろ取り組ませてもらい、協力体制は成功裏に進んだと思います。トロロッソとしては、ホンダのようなアジアの大企業と提携するのは初の試みとなりました。(2人のドライバーについては)とても満足してます。クビアトはとてもスキルの高いドライバーで、過去のチャンピオンシップやGP3でも活躍して成功を収めています。アルボンもとても競争力あるドライバーだと思っています。この2人のドライバーに走ってもらい、素晴らしいフィードバックをもらえることをうれしく思います。技術的にも、マシンとタイヤの感触を伝えてくれる面でもそうです。パワーユニットは非常に力強くなっていますのでシーズンが始まることをとても楽しみにしています」

「(チームに多彩な国のメンバーが集まっていることについて)このようにいろいろな文化を1つのところに持ってくるのはなかなか面白いですね。1つ気を付けなければならないのは、ものの考え方がそれぞれ異なるということです。ただ、今のところかなりいい状況で進められています。われわれのチームは互いによくケアしていますし、ドライバーについても同じことが言えます。一体感が出てきたと思いますし、なにより重要な目標はパフォーマンスをよくして結果を残していくこと。レースで勝つことをファンが求めているのですからね。チームを一体化する秘訣というものはとくになくて、それぞれがみんなのやり方をどれだけ理解できるかだと思います。非常に多国籍なチームなので、それぞれのパーソナリティをどれだけ理解できるかに尽きると思います」。

「(2019年からレッドブル・レーシングでもホンダのパワーユニットを採用したことについて)両者でできるだけ情報共有するようにしています。もちろん、レギュレーションで許される範囲内で、ですが。重要なのは両チームで協力することです。ホンダのパワーユニットという共通点がありますし、ホンダにとっても2チームからフィードバックを得ることはとても大きなメリットです。データもそれだけきちんと手に入れることができ、開発のスピードアップにつなげることができます。われわれは『レッドブル・テクノロジー』と協力できることを非常にうれしく思います。レッドブル・テクノロジーは、私がピットレーンで最もレベルの高いテクニカルなチームだと思うからです。なので、レッドブル・レーシングとホンダが契約を締結した時はとてもうれしく思いました。それがホンダが選手権を戦っていく上でベストな方法だと感じたからです」と語り、チームの実情やホンダの2チーム体制化の影響などを紹介した。

ダニール・クビアト選手

 クビアト選手は「(バルセロナテストは)とても生産性の高いテストができたと思います。たくさんの周回を走ることができて大変参考になりました。フランツ(トスト代表)も言っていましたが、エンジンからのフィードバックもよかったですし、ホンダのおかげで多くの周回を走れました。ですので、本当に開幕戦を楽しみにしています。(テストで運転した2018年シーズンのマシンとの比較については)運転したのがアブダビで、今回のバルセロナとはコンディションが違うので比較は難しいですね。ただ、新しいマシンは毎日改善が見られています。もうレース本番で走るコンディションが整っていると思います」

「チームの雰囲気はとても前向きです。ホンダとトロロッソのコラボレーションはとてもうまくいっています。ホンダには本当に勤勉な人たちが多いですね。常に改善を目指していて、どうやって前進していこうかと目指していつも夜遅くまで頑張ってくれています。最高の成績を残したいとみんなが思っていますので、今の雰囲気にはとても満足してます。開幕戦に向けての“宿題”はちゃんとこなしてきました。やはりそれが一番重要な部分だと思います。あとはメルボルンに行って、われわれの仕事をベストを尽くしてしっかりとやるだけだと思います」とコメント。

アレクサンダー・アルボン選手

 アルボン選手は「テストでは500周というたくさんの周回を走りました。これはホンダ(のパワーユニット)の信頼性の高さを証明するものだと思います。テストで初めて4日間走行しましたが、距離を稼ぐことはとても重要でした。一番望む最大限にいい結果が出たと思います。トロロッソはこれまでにもステップアップのジュニアドライバーを起用してきたチームなので、とてもスムーズにチームに溶け込むことができました。エンジニアやホンダの方々が私がルーキーだということを理解してくれていて、準備を手伝ってくれています」。

「開幕戦に向けて自信を持っています。先ほども言ったように、4日間のテストはとてもスムーズに進めることができてたくさんの距離を走れました。もちろん学ぶことはまだまだありますが、開幕戦は比較的スムーズにいけるかと思います。(ほかのドライバーに学ぶことはあるかという問いかけに対して)もちろん。(チームメイトの)ダニールは経験豊富な選手ですから、彼の発言に耳を傾けたいと思うことがあります。4日間のテストでもダニールといろいろな意見交換をしました。朝に話したことのフィードバックを他のドライバーに聞いたり、お互いに意見を聞くことはとてもよかったと思います。車両に対する意見などでみんなから学ぶことはとても多いですね。でも、最終的には自分でやるしかない。自分で戦う、フォーカスしてやるしかないんです」と語り、ルーキーイヤーながら準備が整って自信を持ってシーズンに臨むと語った。

アストンマーティン・レッドブル・レーシング

アストンマーティン・レッドブル・レーシングの3人

 最後に、アストンマーティン・レッドブル・レーシングのホーナー代表、フェルスタッペン選手、ガスリー選手が登壇した。

クリスチャン・ホーナー チーム代表

 ホーナー代表は「マルコさんも言っていましたが、ホンダとの関係構築でレッドブル・レーシングに新しい時代がもたらされました。信頼性、パフォーマンス、シャシーとの組み合わせなどが良好で、われわれとしてはとてもポジティブなプレシーズンを迎えています。同時にシーズンに向けても期待感にあふれています。ホンダとの関係は素晴らしく、コミュニケーションもうまくいっています。イギリスにあるファクトリーはホンダのファクトリーと1kmも離れていませんし、ホンダのレスポンスはこれまでに経験したことのないスピード感です。お互いによく知る機会があって、とてもシームレスな関係になっています」。

「F1におけるV8エンジン時代が2013年末に終わってしまってから、パワーユニットにおいて“ミッシングリンク”になってしまっていました。現在はメルセデスが5年連続で世界チャンピオンになり、フェラーリも活躍してベンチマークになっています。新たにホンダとの関係が生まれ、2社とのギャップを埋めることを期待しています。この2社にメーカーとして挑んでいけるように戦いたいです。レッドブルは『限界への挑戦』を続けていますし、ホンダも同じアプローチをとってくれていることをうれしく思います。ただ、フィニッシュまで完走することは最初の条件ですので、信頼性は重要な要素です。テストでの走行距離はレッドブル・レーシングも多く、またトロロッソでもウインターテストの走行距離を長くとることができたのは励みになることだと思います。この12か月でパワーユニットの安定性における進捗がホンダでも素晴らしく進んでいます」。

「1万マイル離れたオーストラリアで行なわれる開幕戦に向けて、チームはとても忙しくしています。また、ピエールが先週クラッシュした影響でもっと忙しくなってしまっていますね。しかし、ホンダとのパートナーシップが始まったことでファクトリーのモチベーションは高まって、活気が出ています」と語り、2018年までトップ争いを続けていたメルセデス、フェラーリに続く勢力になるという目標を語った。

マックス・フェルスタッペン選手

 フェルスタッペン選手は「テストはとてもよかったです。ホンダと一緒に働けることをうれしく思っています。お互いにとって新しい関係ですが、シェイクダウン前日の夜は興奮して眠れませんでした。新しいパワーユニットの感触を確かめることができて、それはうれしい驚きでした。エンジンの挙動はとてもよかったです。バルセロナで2週間行なわれたテストでは、レッドブルとホンダの協力関係はとてもスムーズでした。全員が何をするべきか明確に分かっていて、みんな仕事に集中できていました。そんな関係がすでにできあがってスタートできたことがとてもうれしいです。われわれがエンジニアに提供したフィードバックが、すぐに改善されるというのは大きな変化で、これまでのシーズンとはまったく違います」。

「今シーズンは、少なくともこれまでを上まわるいい結果を出したい。でも、まだ開幕戦も始まっていないので、今の段階では目標を明確には言えないですね。まずはオーストラリアの結果を見ていきたいと思います。やはり一貫性を持ってシーズンで走りたいですね。信頼性やパフォーマンスもそうですし、シーズン中にたくさんの学びを得られればいいですね。そうすれば改善していくことが可能になると思います。ただ、マシンとエンジンの基本性能はとても強い状態になっていると感じています。開幕戦ではいい結果を出してたくさんのポイントを獲得することを目標にしています」とコメントした。

ピエール・ガスリー選手

 ガスリー選手は「F1では2年目のシーズンで、新しいチームになって環境も変わり、とにかく慣れることが必要です。2018年末から協力を始めて、2019年は一番いい形で準備ができていると感じます。ホンダに対して一番感心したのは、去年よりもどんどん改良していって、2つのパッケージ、2つのパワーユニットを用意してくれたことです。そしてパフォーマンスはかなり改善されていて、信頼性もテストを開始した最初のころからとても高いです」。

「(ホンダとの関係性が2年目になっていることについて)できるだけ去年の経験をフィードバックするように心がけています。チームにもマックスにも伝えています。また、日本の文化から学んだことも共有しようとしています。2017年に初めて日本に来た時は、自分がトロロッソに行くことなんて予想もしていませんでした。そしてレッドブルに移籍するなんてクレイジーなストーリーですよね。レースで結果を残し、ファンの皆さんに喜んでもらうことが一番大切ですし、私もうれしいです。それが今年の目標ですね」。

「まだ自分は学ばなければいけないことも多いのですが、レッドブルは過去にチャンピオンを獲得したことのあるチームですから、自分を成長させてできるだけポイントを獲得し、チームに貢献したいです。テストの結果も非常によく、ポテンシャルの高いパッケージになっていますので、開幕戦でもできるだけたくさんのポイントを獲得したいです。そして何レースかが終わった後には何が達成できるかが見えてくるはずです。今の自分の立場では、シーズン前半にできるだけたくさんの経験を積んで、チームのために一番いい結果を出したいと思います」と述べ、ファンやチームのために多くのポイント獲得を目指すとした。

「まず1勝を勝ち取りたい」と語る山本部長

 最後に山本部長がマイクを握り、「本当に皆さんの強い期待をひしひしと感じます。新たに今年は2チーム4台体制で、いよいよ来週からシーズンが始まります。ここにいらっしゃるヘルムート・マルコさん、クリスティアン・ホーナーさん、フランツ・トストさん、ドライバーの4人とチームメンバーなど今日は多くの人が来てくれて、このような場でスタートできることを本当にうれしく思っています。ホンダではHRD Sakura、ミルトン・キーンズで来週の開幕に向けてギリギリまで懸命に努力を続けてくれています。このようにシーズンをスタートすることができて本当にうれしく、メディアの皆さま、ファンの皆さまに今年1年応援していただければと思っていますし、まずは何よりも、皆さんと喜びを大きく分かち合えるよう、まず1勝を勝ち取りたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。1年頑張っていきます!」と力強く必勝を目指すことを宣言して記者会見を締めくくった。

会場となったホンダウエルカムプラザ青山の正面玄関前に、4台のホンダ F1マシンが展示された
2019 Honda F1 Kick Off 記者会見(1時間3分25秒)