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ユピテル、「IT・IoT・AI」をテーマに研究開発する新拠点「ユピテル静岡研究所」竣工式

等身大の「バーチャルLei」も展示

2019年3月22日 開催

ユピテル静岡研究所に設置された等身大「バーチャルLei」

 ユピテルは3月22日、静岡県静岡市葵区に新設する「ユピテル静岡研究所」の竣工式を開催し、合わせて報道機関向けの内覧会を実施した。

 ユピテルといえば多彩なドライブレコーダーを扱うメーカーとして近年注目を集めているが、このほかにもポータブルカーナビやレーダー探知機、エンジンスターター、カーセキュリティなどのカー用品、ゴルフナビやGPSレシーバー、サイクルコンピューターなどのスポーツ用品をラインアップしている。

4月15日にオープンする「ユピテル静岡研究所」(静岡県静岡市葵区長沼 1012-1)

 4月15日にオープンするユピテル静岡研究所は、ユピテルとユピテルのグループ会社2社、ユピテルと以前から取引のある静岡県内の企業の計4社が集まる施設で、ユピテルでは主に施設2階のオフィスフロアを使い、愛知県岡崎市にある「ユピテル 技術・生産センター」やグループ企業の「ユピテル鹿児島」のスタッフ計10人前後が移籍して、ITやIoT、AI(人工知能)の開発を行なう。

 1階はユピテル以外の3社がオフィスとして利用するスペースに加え、ユピテル製品などを紹介する常設ショールームとなり、営業時間の10時~17時に一般公開される。また、ショールームエリアでは、JR静岡駅近くにあるユピテルの複合施設「ITパレット」で実施している小学生向けの「ロボット教室」をこちらでも実施したり、受け付け近くに設置したカフェスペースで発表会や製品体験会などを実施する予定になっているとのこと。

 なお、オフィスや開発エリアと一般公開エリアの区分は、入口に虹彩認証のロックを設置して入室を管理する。

施設名にはユピテルが掲げる「シズコンバレー」の文字も
入口にある受け付け脇では、ユピテルのキャラクター「霧島レイ」をモチーフとしたコンセプトモデル「バーチャルLei」の大型パネル版がお出迎え
1階の常設ショールーム。壁面でドライブレコーダーやポータブルナビといったユピテルの主要製品を展示する
バーチャルホームロボットとして開発中の「バーチャルLei」も展示
ユピテルの自然対話型AIロボット「ユピ坊(ゆぴぼう)」。ショールームでは頭上に設置されたユピテル製品の紹介を担当していた
当日は来賓向けの軽食が振る舞われていたカフェスペースでは、発表会や製品体験会などを実施する予定
フロア中央は2階まで吹き抜けになっており、等身大サイズの「バーチャルLei」が設置されている。現在は事前入力したワードを手動操作で発話させているが、将来的にはカメラなどを設置して来場者を検知。ユピ坊のように応対を行なうようにするとのこと
ユピテル静岡研究所の等身大「バーチャルLei」(53秒)
ユピテル静岡研究所のフロア表。中2階スペースにミーティングルームが設置されている。1階~中2階にかけてはコンクリートやスチールといった建材がむき出しのモダンな構成となっている
開発部署となる2階の入口は、虹彩認証によって入室を管理
円筒形フロアをメインとする2階部分は、1階などと変わって木材を積極的に利用。外周部分をガラス張りとして外光が入りやすくなっている。開発担当者の自由な発想が生まれやすいよう、リラックスできる環境を整えているとのこと
開放的なオープンデッキも設定
竣工式に先だって神事も実施された
株式会社ユピテル 代表取締役会長 兼CEO 安楽憲彦氏

 竣工式では施主の代表として、ユピテル 代表取締役会長 兼CEO 安楽憲彦氏があいさつを実施。安楽CEOは新施設が小さな事故もなく無事完成したことについて施工業者などに深い感謝の意を述べたほか、ユピテルなど4社でスタートする“シズコンバレー”の構想に、大小を問わずさまざまなIT企業が参加してほしいとコメントした。

「ロボット教室に参加した子供から世界に技術発信する人材が生まれてほしい」と安楽CEO

トークセッション「しずおか発の次世代産業育成をめざして」

 このほか当日は、ユピテルの安楽CEOに加えて静岡県 副知事 難波喬司氏、静岡市 経済局長 池田文信氏の3人によるトークセッション「しずおか発の次世代産業育成をめざして」を実施。

 ITやIoT、AIといった先進技術を扱うIT企業を静岡県に誘致することで、雇用の創出と次世代人材の育成などを進めていくというユピテルが掲げる構想「シズコンバレー」について対話形式で紹介する場となっており、この中で安楽CEOは、静岡県は日本の中心にあたるほか、ユピテルの本社がある東京 品川やユピテル 技術・生産センターのある岡崎市から新幹線や高速道路などを使って1時間ほどでアクセスでき、鹿児島県にあるユピテル鹿児島からも飛行機を使って行き来できるといった地の利があると解説。

シズコンバレーの構想について解説する安楽CEO

 シズコンバレーという名称にはシリコンバレーをお手本に、IoTやAIといったソフトウェア開発を中心に、生産設備などの大きな投資を不要としながら産業を育成していきたいとの思いを込めていることを説明し、「今までなかったもの、新しいものを創造していこう」との方向性を示した。

 このほかに安楽CEOは、2018年2月にオープンさせたITパレットは累計2500人以上が来場しており、小学生向けに行なっているロボット教室も、約230人の子供たちが簡単なプログラミングについて学んでいると紹介。このような場でIT技術に触れた子供の中から技術者として頭角を現わす人材が生まれ、静岡の地から世界に技術発信していってほしいとの期待を述べた。

静岡県 副知事 難波喬司氏

 静岡県の難波副知事は、静岡県は「もの作り県」として有名だが、今後は新産業の育成も重要になっていると語り、そのためにIT、IoT、AIがキーになるとして、ユピテル静岡研究所はその狙いにまさに合致した施設だとコメント。シズコンバレーの構想を新産業育成に向けた発信源にしたいと語り、具体的に中心となる技術は5G(第5世代移動通信システム)やAI、準天頂衛星システムになるとの考えを示した。

 また、5GやAIなどを進めていく基礎になるIT技術はそれ自身が産業であることに加え、周辺を取り巻くさまざまな産業を活性化していく点でも重要だとした。そんなIT技術を進めていくためには、さまざまな人材から「ここに来たら面白いことがある」と思ってもらうことが先決で、ユピテルが手がけているような取り組みに静岡県としても着手し、若い世代の教育といった人材育成に向け、実際に予算も確保しているとアピールした。

静岡市 経済局長 池田文信氏

 静岡市の池田経済局長は、静岡市では「海洋・エネルギー産業」「清水港・ロジスティクス産業」「食品・ヘルスケア産業」「観光・ブランド産業」「文化・クリエイティブ産業」の5つを戦略産業に位置付けているが、新産業、次世代産業を生み出すのは難しく、このためには地域の力を結集することが大事になると語った。

 その地域の力にあたるのは、地域で活動する企業や大学などで、静岡市としても産学連携に向けた「産学交流センター」などを運営しているほか、静岡県が運営している産業支援機関とも連携して、新産業の創出に向けたプラットフォーム作りに取り組んでいきたいとコメント。ユピテルのITパレットで進めているロボット教室について「小さいときから親しむことは非常に大切なこと」と評価して、将来的な産業創出に向けた人材育成につながり、この静岡一帯にさまざまな人が集まってくることが大きな意味を持つとした。