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アーム、自動運転分野の取り組みなど説明した「Japan Media Day 2019」

2019年4月4日 開催

アーム 代表取締役社長 内海弦氏

 英Armの日本法人アームは4月4日、5G、ML(machine learning:機械学習)/AIなどクライアント・コンピューティング分野の最新動向、オートモーティブ/自動運転分野における最新の取り組みなどについて説明する「Japan Media Day 2019」を開催した。

 イベントの冒頭にあいさつをした、アーム 代表取締役社長 内海弦氏は「Armはプロセッサの会社で1年間に200億デバイス、およそ人口の3倍くらいの数のArmが入ったものが出荷されており、それはスマホだけでなく白物家電、AV機器、クルマももちろん含まれます。100円もしないデバイスからサーバーまで使われており、用途としてこんなに使われるプロセッサはない」とArmについて紹介。

 Armが採用される理由は2つあるといい、内海氏は「1つは電力効率が非常にいい、人口の3倍も出ているデバイスが電気をセーブすると全世界でセーブができる。電源がない電池で動くようなデバイスでも使え、クルマも最近はEVですので電力効率が求められ、電力効率がいいので世界中のさまざまな半導体ベンダーに使われている」と説明。

 2つめはセキュリティといい、内海氏は「スマートフォンは比較的早期からArmが使われて、アプリケーションプロセッサでアプリが動いていても非常にセキュアでセキュリティのレベルを高めてきた、今やIotのデバイスでも重要となってきている。10年前にマイコンでセキュリティを考えている人は誰もいなかった、Armはいままでのスマートフォンのノウハウを活かして、IoTの50円とか100円とかの安いデバイスまでもともとセキュリティを入れていた。この2つのおかげで世界中で使われている。セキュアで電力効率がいい、これが私どもの強み。その上に成り立ってさまざまな取り組みを行っている」とコメントした。

5G、ML/AI などクライアント・コンピューティング分野の最新動向

英Arm マーケティングプログラム担当バイスプレジデント イアン・スマイス(Ian Smythe)氏

 続いて登壇した、英Arm マーケティングプログラム担当バイスプレジデント イアン・スマイス(Ian Smythe)氏からは、5G、ML/AIなどクライアント・コンピューティング分野の最新動向について説明があった。

 5Gについては、大容量のデータ転送、低遅延、大規模な接続性といった5Gにより広がるモバイルの世界の特徴を示し、スマイス氏は、ハイパフォーマンスな「Cortex-A」、高速な「Cortex-R」、コンパクトで低電力の「Cortex-M」といったラインアップを用意していることを紹介。スマートフォン、AR、スマートTV、ウェアラブル、ML、において新しい体験を提供することが期待できるとの考えを示した。

5Gへの取り組みを示すスライド

 MLについては、オープンソースのプラットフォーム「Arm NN」をLinaroを通じて開発環境を提供するとともに、ハードウェアとして「Cortex」「Neoverse」といったCPU、「Mali」といったGPU、機械学習プロセッサーのNPUを用意していることを紹介。さらに、次世代のアーキテクチャ「Helium」へ投資していることを紹介して、AIをエッジコンピューターに搭載する課題に向けて取り組んでいることを強調、スマイス氏は「AIがエッジに来た時にわれわれが有利になる」との見方を示した。

ML(machine learning:機械学習)に向けての取り組みを紹介するスライド

 このほかにもCPUとGPUのロードマップが紹介され、2020年に発表するCPU「Hercules」については「Cortex-A75」と比べて2.5倍のパフォーマンスを実現することを強調、GPUについては「Mali-G76」が用意されることが示された。

オートモーティブ/自動運転分野における最新の取り組み

英Arm ADAS/自動運転プラットフォーム戦略 ディレクター 新井相俊氏

 英Arm ADAS/自動運転プラットフォーム戦略 ディレクター 新井相俊氏からは、オートモーティブ/自動運転分野における最新の取り組みについて説明された。

 新井氏は、米国でGM(ゼネラルモーターズ)などが行なっている自動運転の実証実験では2000W~3000Wを消費するサーバーとGPUをトランクに積んでソフトウェアを監視していることを指摘、新井氏は「これでは技術に広がりがなく、Armが狙っているのは10倍以上の電力削減、10倍以上のコスト削減して、実行可能な自動運転を提供していきたい」との目標を示した。

 新井氏のプレゼンテーションでは、現在、ArmではAutomotive Enhanced(AE)と車載用に強化された製品をラインアップしていることを紹介。機能安全を重視した開発環境を提供するソリューションとして「Cortex-A76AE」「Cortex-A65AE」といったCortex製品の事例を示した。

車載製品での取り組みを示すスライド

 また、将来的なオートモーティブ製品のロードマップが紹介され「Cortex-A76AE」より15%パフォーマンス向上させる「Hercules-AE」、リアルタイムプロセッサ「Cortex-R52」の後継となる「Cortex-R」を開発していることを紹介。

オートモーティブ製品のロードマップ

 さらに、将来に向けてArmでは自動運転に向けたエコシステムを作っているといい、「mapbox」「Civil Maps」といった地図の会社をパートナーを迎えて話を始めているほか、「DEEPSCALE」「Brodmann 17」といったアルゴリズムを開発する会社と、Armプロセッサに最適化された消費電力が低くパフォーマンスの高いアルゴリズムをOEMに提供できるように活動しているという。

自動運転に向けたエコシステムを示すスライド

 新井氏は「Armでは、機能安全を満たして自動運転を実現するソフトウェアとエコシステムを構築することをサポートし、それに必要なCPU、GPU、NPU、ISP、ソフトウェアといったプラットフォームを提供していく。オートモーティブに対して一番重要なのは安全で、自動運転時代にテクノロジーリーダーとして貢献していきたい」との意気込みを示した。

Armを採用するパートナー企業
自動運転の実現に向けた取り組みを示すスライド