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【インタビュー】ディフェンディングチャンピオンとして2019年シーズンのSUPER GTに臨む1号車 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン両選手に聞く

「去年の開幕戦、2位で尚貴はがっかりしていた。勝たないとダメだって思った」とバトン選手

1号車 RAYBRIG NSX-GTをドライブするジェンソン・バトン選手(左)と山本尚貴選手(右)

 4月13日~14日の2日間に渡り、2019年のSUPER GT開幕戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」が岡山県にある岡山国際サーキットで行なわれる。それに先だって、4月12日には各チームによる搬入作業などが行なわれたが、2018年のチャンピオンチームである1号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS)にインタビューを行なう機会を得たので、その模様をお届けする。

 レースでポイントを取るたびにウェイトハンデが積載されていくSUPER GTは、本質的に勝ち続けるのが難しいレースであり、ましてやチャンピオンの2連覇はかなり難しいとされている。SUPER GTになってからは過去2回あるだけだ。その中で、2009年のF1王者であるジェンソン・バトン選手と、2018年にスーパーフォーミュラとSUPER GTの2冠を達成した山本尚貴選手という2人のドライバーはどう戦っていくのか質問してきた。

重要なことは昨年と同じチーム、同じスタッフ、そして同じドライバーで戦えることだと山本選手

富士スピードウェイでシーズンオフのテスト走行をする1号車 RAYBRIG NSX-GT

――昨シーズンはジェンソンが初参戦で、初めて山本選手とコンビを組んだ年にチャンピオンを獲って、両選手にとって素晴らしい年だったと思うが、今シーズンもタイトルを防衛することは可能か?

ジェンソン・バトン選手:いつでもそういう質問はドライバーにとって奇妙な質問だ。というのもチャンピオンになれば、翌年には自動的にディフェンディングチャンピオンになる。ドライバーにそんな質問をすれば、「もちろんタイトルの防衛を目指して頑張ります」と言うに決まっているからだ(笑)。日ごろから言っているように、SUPER GTは実に魅力的なチャンピオンシップだ。どのメーカーも競争力が高く、タイヤ戦争も激しく行なわれており、かつドライバーもみな優秀だ。それだけでなく、SUPER GTは多くのスポンサーやサポーターに支えられており、何より熱心なファンが応援してくれる。本当に素晴らしいシリーズであり、僕が参戦している理由だ。

ジェンソン・バトン選手

山本尚貴選手:チャンピオンを獲得した次のシーズンということで、より注目されるシーズンになることは理解している。戦い方が重要になると考えており、ジェンソンとのコンビも2年目になり、同じチーム、同じスタッフ、同じドライバーというチャンピオンを獲った時と変わらない体制で臨むことができ、それが強みとなる。それを生かして2連覇を目指して戦っていきたい。

RAYBRIG NSX-GTは昨シーズンまで100号車だったが、2019年はチャンピオンナンバーの1号車となっている

――山本選手は昨年、スーパーフォーミュラとSUPER GTで2冠という、この国のレース史でも果たした人が少ない偉業を成し遂げた。文字どおりこの国のレース界でトップに君臨する存在になったと思うが、これからどういう方向を目指していくのか?

山本選手:現状に満足しているわけではない。もっともっと勝って、もっともっとタイトルを獲りたいという欲が増えた。もちろん、2冠を達成したことで自分をお褒めいただけるような機会が増え、それはとてもありがたいことだと思っていますが、それは自分1人の力で成し遂げたのではなく、チームやエンジニアの力に助けられたからだ。また、スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲った後にSUPER GTの最終戦があり、ものすごいプレッシャーの中で戦うことになったが、その時はジェンソンに大いに助けてもらった。2冠を実現できたのは、そうしたJBの助けがあったからこそであり、そこにチームやエンジニアがみんなで実現してくれたものだと考えている。

山本尚貴選手

――昨年のタイトルを獲るには山本選手とのパートナーシップが重要だったと(バトン選手は)以前口にしていたが、それは今年も変わらないか?

バトン選手:もちろんだ、彼とパートナーを組むことはとても重要だった。ただ、今年は去年とは状況が異なっている。昨年の尚貴はレースやチャンピオンシップの経験があり、準備ができていた。しかし、僕はそうではなかった。その時に尚貴のインプットには本当に助けられた。彼はいつでもクルマの扱い方、戦略、セットアップとすべてにおいてオープンな姿勢で助けてくれた。その結果が去年のチャンピオンだったと言っていい。

 だが、今年はもう違う。僕にも経験があり、クルマの扱い方も、セットアップも、戦略も理解している。今の状況はとてもハッピーだし、自信もある。チャンピオンシップを争うのにいいポジションにいると思う。1回だって獲るのが難しいのに、2回連続なんてとても厳しいと思うけど、チャレンジしてみるさ。

チャンピオンを見据えてシーズンを戦うという山本選手に対して、バトン選手が「尚貴は2位じゃ満足しない」と暴露?

3月に行なわれた岡山公式テストを走る1号車 RAYBRIG NSX-GT

――バトン選手は、昨年初参戦で初王者という、それ以上望みようのない最上の結果を手に入れた。そのまま勝ち逃げすることもできたと思うが、それでも2年目への挑戦というよりハードな道を選んだ理由は?

バトン選手:シンプルにこのカテゴリーを僕はとても愛しているんだ。3つのマニファクチャラーがいて、4つのタイヤメーカーが激しく争っていて、GT300車両をオーバーテイクしながらGT500同士がレースをする、本当に素晴らしいシリーズだ。そして何よりも、才能があるドライバーがそろっている。特に今シーズンはSUPER GTの新しい歴史として、DTMとの交流戦が行なわれる。DTMと一緒にレースをするのは本当に楽しみだし、日本の速くて才能があるドライバーたちが欧州に行ってレースをすることは本当にいいことだと思っている。彼らは才能があって速いのに、それが欧州では理解されていないからだ。

DTMと一緒にレースをするのは本当に楽しみだと語るバトン選手

――シーズンオフのテスト結果に関してはどうか?

バトン選手:英語でいうと「Mixed Bag」(筆者注:英語でよいモノとわるいモノがごっちゃ混ぜになっているという意味の言葉)とでも言うべき、あるテストではよかったけど、あるテストではそうでもないという結果だった。だが、重要なコトはシーズンに向けてちゃんと情報を得ることができたことだ。最後のテストではいくつかの解決すべき課題が見つかっていて、バランスにまだ満足できていない。そこはまだ改善する余地がある。

バトン選手は開幕前のテストについて「Mixed Bag」と表現

――シーズンオフにはミッドシップの特例によるウェイトハンデが改訂され、昨年にプラスして5kg増えて初年度の設定である29kgに戻ることになった。その影響はあるのか?

山本選手:影響がないと言えば嘘になる。そういう足かせを科せられる状態で戦いをしなければいけないことは承知はしているが、他のメーカーの開発も進んでいる中で、彼らの方がうまくいっているのではないかということを感じている。オフシーズンのテストでは同じブリヂストンタイヤを履く8号車(ARTA NSX-GT)と17号車(KEIHIN NSX-GT)に対しても遅れを取っている感じを受けており、最低でもホンダのトップにいなければならないのにという思いがある。

ディフェンディングチャンピオンとして「最低でもホンダのトップにいなければならない」との意気込みを口にした山本選手

――今シーズンの戦い方は?

山本選手:2連覇を目指した戦い方をしたい。ノーハンデで勝てれば最高だが、開幕戦で勝ったものがチャンピオンになれるわけではないので、シーズン全体を見据えた戦い方をしていきたい。

NSX-GTはミッドシップの特例によるウェイトハンデが改訂され、2018年から5kg増のウェイトハンデ29kgで今シーズンを戦う

バトン選手:もちろんわれわれはチャンピオンを獲るためにここにいる。そしてチャンピオンを獲ればみんなの記憶に残るし、最高の気分だ。だけど、それと同時にレースに勝つことも重要だ。いつだってレースに勝つことは気持ちを奮い起こしてくれる。そうしたエモーションはいつだって大事だ。

 そしてチャンピオンを獲るためには、やはり勝たないとダメだ。だって、去年のこのレースではデビューレースで2位になったし、いいリザルトだと自分では思ったが、ここにいる彼(山本選手)は2位でがっかりしていたんだぜ(笑)。