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目まぐるしく変わる天候に振り回されたSUPER GT 2019公式テスト。トップタイムは12号車 カルソニック IMPUL GT-R

本番前のSUPER GTや岡山国際サーキットをお値打ちに体感できるファン感謝デーにて

2019年3月16日~17日 開催

公式テストでトップタイムを記録した12号車 カルソニック IMPUL GT-R(先頭)

 2019年のSUPER GT開幕戦(4月13日~14日)の舞台となる岡山国際サーキット(岡山県美作市)で、3月16日~17日に公式テストが行なわれた。このテストは岡山国際サーキットのファン感謝デーを兼ねており、大勢のレースファンがサーキットに詰めかけた。

 SUPER GTではレースシーズンが始まる前にファンにテストの模様を公開しているが、この岡山国際サーキットは開幕戦の舞台となり、さらに開幕のひと月前という時期なので、2019シーズンにエントリーするマシンが全車参加するものとなっている。また、今シーズンのカラーリングが仕上がっているマシンも多いので、そこも見どころになっている。

岡山国際サーキットファン感謝デーはSUPER GTの公式テストが見学できる。2019年仕様のGTマシンをいち早く見られるチャンスだ

 そんな岡山国際サーキットファン感謝デーだが、この日の入場料金は前売りで2000円(土曜日、日曜日とも)、当日券は2200円(土曜日、日曜日とも)と安価に設定されている。また、普段は別途パスの購入が必要なパドックまで入ることができるし、ピットウォークに相当する「オープンピット」にも参加可能と非常にお得なものになっている。

 さらに数量限定ではあるが、レースシーズンでは3万7800円のピットラウンジパスが8000円(土曜日、日曜日とも)というスペシャルプライスで提供される。また、通常3万5000円のコースサイドテラスパスも同様に8000円だ。さらに最上級のクラブハウスラウンジパスも1万2000円になるなど、ファン感謝デーは普段のレースではなかなか利用できないサーキットの施設を体験するにもいい機会になっている。

 岡山国際サーキット関係者からは「昨年、一部施設のリニューアルをしていて、今年も駐車場の拡充や観客席側のトイレ整備などを行なって開幕に備えています。また、2020年のSUPER GTではGT500マシンが大きく変わると聞いていますので、今のマシンでのレースを岡山国際サーキットで見られるのは今回が最後になります。ぜひご来場いただければと思います」というコメントが聞けた。

ファン感謝デーは入場料が安価な設定。SUPER GT開幕戦の「OKAYMA GT300km RACE」の前売り券購入者は入場が無料だ
入場料のみでパドックまで入ることができる
監督やドライバーのサインをもらうチャンスもある
グランドスタンド裏は“グルメ大集合!!”と銘打った屋台村
子供用の遊具や地元警察のパトカー展示、建設機械の乗り込みコーナーもあった
人気だったのが高所作業車の乗車体験。行列ができている時間もあった
オープンピットの時間。ピットレーンでは作業中のマシンの見学ができ、一部ドライバーはサインにも応じていた
ホームストレートではサーキットクイーンの撮影会と岡山国際サーキットの車両展示が行なわれた
コースに落ちているタイヤカスなどを記念に拾う人も多くいた
スバル レガシィ アウトバック
日産 フェアレディZ ニスモスポーツリセッティング Sチューン
日産 GT-R(左ハンドル車)
トヨタ 86
レクサス RC300h
ホンダ NSX(SUPER GT セーフティカー)

 公式テスト初日は深夜から早朝にかけてサーキット周辺に降雪があったが道路に積もることはなく、サーキットへのアクセス道路も夏タイヤで走行できる状態。しかし、コースコンディションの確認などから走行開始の時刻が30分遅れ、走行開始となった。

 走行時間は午前と午後に設けていて、それぞれ2時間の設定。これは300kmレースと同じレベルのものなので、公式テストではレース4回ぶんの走行が可能な設定だ。この時間を使って各チームはそれぞれの課題をこなしていくのだが、その内容について「LEXUS TEAM WedsSport BANDOH」の坂東正敬監督に話をうかがった。

GT500クラスの19号車 WedsSport ADVAN LC500を走らせる「LEXUS TEAM WedsSport BANDOH」の坂東正敬監督。GT500クラスの監督では最年少で、レースへの情熱は高く、応援するファンは多い。また、レースだけでなくクルマ趣味全体の盛り上がりについても常に考えている人物で、幅広い層に人気が高い

 坂東監督によると「岡山のテストでは各チームいろいろとやることがあるでしょうが、その1つに開幕戦を想定したタイヤテストという面があります。レースで使うタイヤにはさまざまな種類があります。よく言われるコンパウンドが硬い、柔らかいという違いだけでなく、路面の状況に合わせるためタイヤの構造を変えたものまでもあります。そしてそれらを数種類用意して、どれがいいかを試すわけです。ざっくり言うと『寒い岡山用』『例年通りの岡山用』、そして『暑い岡山用』という感じです。そして開幕戦の1週間前になったらレース日程の天気予報を見て、サーキットに持ち込むタイヤを決めるのですが、今回のテストのように気温が低すぎると、テストで取れるデータの量が減ってしまいますのでここはちょっと困ってます。また、GT300クラスだと開幕戦でタイヤ無交換、もしくは片側のみ交換という作戦も立てられるので、そういった面を考慮してテストを行なっていたチームもあるでしょう」と説明してくれた。

 続けて「僕らのチームはレクサス陣営で唯一、横浜タイヤを使っていますが、サーキットによって得意不得意はあります。そこでシリーズの8戦中、どこを狙っていくのかを考えてタイヤを開発していくのです。去年のデータを参照にすると、菅生、タイ、もてぎといったところは横浜タイヤのいいところが発揮できるのではないかと考えています」とシーズンの見通しに関しても語ってくれた。

19号車 WedsSport ADVAN LC500。レクサス勢では唯一横浜タイヤを装着している

不安定な天候で始まった公式テスト1日目はカルソニック IMPUL GT-Rがトップ

 さて、SUPER GT 2019公式テストの1日目だが、前記したようにセッション1は降雪の影響でスタートが遅れ、路面もしばらくウェットとなった。その後は日差しも戻り、路面も乾いていったが、セッション2のスタート前に再び天気は崩れてウェット路面に逆戻り。気温も上がらず路面温度は14℃ぐらいと低いままで、雨こそあがってくれたが路面の乾きが遅かった。

 そんな状況の中、GT500クラスのセッション1では12号車 カルソニック IMPUL GT-Rが1分17秒852のタイムをマークしてこの時間の1位となる。2位は23号車のMOTUL AUTEC GT-Rでタイムは1分18秒853。3位は6号車 WAKO'S 4CR LC500でタイムは1分18秒876だ。ホンダ勢のトップは8号車のARTA NSX-GTが1分19秒140で8位に付けた。

 午後のセッション2では、12号車 カルソニック IMPUL GT-Rの佐々木大樹選手が2018年のレコードタイムを大きく上まわる1分17秒167というタイムをマークする。2位は36号車のauTOM'S LC500の1分18秒058で、トップとのタイム差は0.891秒。続く3位は38号車のZENT CERUMO LC500の1分18秒220となる。1日目はセッション2の上位が1日目の総合リザルト順となった。なお、ホンダ勢の上位は17号車のKEIHIN NSX-GTの7位。タイムは1分18秒381。

公式テスト1日目の総合リザルトは、12号車 カルソニック IMPUL GT-Rがトップ
2位はauTOM'S LC500
3位はZENT CERUMO LC500
1日目のホンダ勢のトップはKEIHIN NSX-GTの7位

 2日目のセッション3はウェット路面でスタート。3号車のCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが1分26秒556でトップに立つ。2位は23号車のMOTUL AUTECH GT-Rが1分26秒671。3位は38号車 ZENT CERUMO LC500でタイムは1分27秒234となった。

 2日目の午後は開幕戦のスタート進行の練習も行なわれた。グリッド整列からフォーメーションラップまでは天気はよかったのだが、黒い雲が急速に近づくと天気は大荒れ。大粒の雨から一瞬雪になり、路面はあっという間にウェット。スリックタイヤでは走れない状況になったので全車ピットへ戻った。

 しばらくすると天候は回復したが、路面はウェットのままセッション4がスタート。結果は6号車 WAKO'S 4CR LC500が1分17秒849でトップ。2位は38号車 ZENT CERUMO LC500が1分18秒210で2位。3位は39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500でタイムは1分18秒239とレクサス勢が上位を独占した。また、2日目の総合リザルトでも同3台がトップ3となった。

2日目総合トップはWAKO'S 4CR LC500。2位は1日目の3位だったZENT CERUMO LC500
DENSO KOBELCO SARD LC500
2日間通してNSX-GTは上位に来ていないが、GT500関係者によると非公開テストでは1号車のRAYBRIG NSX-GTが今回のトップタイム以上の数字を出していたという噂が出ていたようなので、NSXーGT勢の沈黙は意図的なものなのかもしれない

GT300クラスは4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGがトップ

 GT300クラスでは、1日目のセッション1で96号車のK-tunes RC F GT3がトップ。タイムは1分26秒208。2位は25号車のHOPPY 86 MCでタイムは1分26秒249。3位は10号車のGAINER TANAX triple a GT-Rの1分26秒589となる。

 午後のセッション2は4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGが1分25秒867で1位。2位は96号車のK-tunes RC F GT3でタイムは1分25秒913。3位は2号車 シンティアム・アップル・ロータスの1分25秒953と続いた。そして1日目の総合リザルトもセッション2と同様だった。

トップの4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG
2位は96号車のK-tunes RC F GT3
3位になったのは2号車 シンティアム・アップル・ロータス

 GT300クラスの2日目、午前のセッション3では65号車 LEON PYRAMID AMGが1分32秒720でトップ。2位は4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGで1分33秒579。3位は34号車のModulo KENWOOD NSX GT3でタイムは1分34秒117となった。

 最後のセッション4は、ウェット路面から始まって徐々に乾いていく展開で、96号車のK-tunes RC F GT3が18周目に1分25秒455のトップタイムをマーク。2位が25号車のHOPPY 86 MCで1分25秒694。3位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTでタイムは1分25秒945となった。なお、総合リザルトは1日目に続いて午後の走行(セッション4)のタイム順だった。

2日目午前のセッション3はLEON PYRAMID AMGがトップ
2日目総合トップはK-tunes RC F GT3。2位はHOPPY 86 MC
3位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTが上がってきた

 さて、そんな結果になった岡山国際サーキットファン感謝デーの公式テストだが、これが終わって約1か月後にはいよいよSUPER GTが開幕する。前出の坂東監督によると「岡山国際サーキットはお客さんとコースの距離が近いので迫力ある走りが見られます。また、走りがよく見える分、例えばタイヤの違いによる走行ラインの差が分かりやすかったりするのも面白いですよ。それにここは抜きにくいコースと言われていますが、そのぶんバトルは白熱しますし、クルマの仕上がりを観察しつつ“どこで抜くか”を予想しながら、コーナーを移動するのもいいでしょう」と見どころを教えてくれた。

 さらに裏話的なこととして「シーズンオフの開発についてはどこのチームも隠していますが、それが一気に出てくるのが開幕戦です。ただ、開発の方向が合っているとは限りません。下手をしたら大ゴケということもありますので、これも見どころでしょう。あと、開幕戦ではドライバー同士、誰がどのクルマに乗っているか分かっていない状況です。テスト中は一緒に走っていますが、それぞれの仕事があるので誰がどのクルマなのかを覚えている暇がないのです。するとちょっとラフなドライブをするドライバーがいても、その人がどのクルマに乗っているか分からないのです。そこに抜きにくさも加わるので、岡山は接触が多いんですよ」と教えてくれた。

 そんな見どころも多い2019 AUTOBACS SUPER GT開幕戦 岡山国際サーキットは4月13日~14日に行なわれる。SUPER GTファンはもちろん、SUPER GTを生で見たことがないという人も、この機会にサーキットへ足を運んではいかがだろうか。