ニュース

日産、2019年度 第1四半期決算。売上高は12.7%減の2兆3724億円ながら純利益94.5%減の64億円は四半期で過去最低

厳しい結果になるとの予想を少し下まわる結果と軽部CFO

2019年7月25日 開催

日産自動車株式会社 代表取締役社長 CEO 西川廣人氏

 日産自動車は7月25日、2019年度 第1四半期決算を発表。同日に神奈川県横浜市のグローバル本社で決算説明会を開催した。

 第1四半期の売上高は前年同期(2兆7166億円)比で12.7%減となる2兆3724億円、営業利益は同(1091億円)98.5%減の16億円、当期純利益は同(1158億円)94.5%減の64億円。また、第四半期累計3か月のグローバル販売台数は同(131万台)6.0%減の123万1000台となっている。なお、営業利益、当期純利益の数字は日産の第1四半期として過去最低のものになるとのこと。

日産自動車株式会社 CFO(最高財務責任者)軽部博氏

 第1四半期の決算実績を発表した日産自動車 CFO(最高財務責任者)軽部博氏は、グローバル販売台数について「6.8%減だった全体需要を上まわることができました」と、販売面についてはわるい数字ではないことを説明。地域別では中国は全体需要が大きく落ち込む状況でも販売台数を伸ばしているが、米国、欧州、日本などの主要市場で全体需要を下まわっている。また、中国を除いた販売台数では、全体需要が6.8%減に対して日産は8.8%減となっており、中国を除く卸売り台数では対前年比13.5%減となり、これが第1四半期の収益を圧迫していると語った。一方で販売会社の在庫水準は第1四半期の3か月で6万8000台減少し、適正化が進んでいると位置付けた。

 前年同期比で98.5%減の16億円となった営業利益については、為替、規制対応コスト、商品性向上、原材料価格といった外部環境の変化による影響で423億円、中国を除く卸売り台数の減少といった販売活動による影響で605億円と大きな減益要因になっている。研究開発費や生産費用の増加、その他の項目といった減益は購買コストの削減の増益では補いきれず、モノづくり、その他の項目では47億円の減益要因と分析。「第1四半期の営業利益は厳しい結果になると予想しておりましたが、その予想を少し下まわる結果となりました」とコメントしている。

2019年度 第1四半期決算の総括。日産では販売店の過剰在庫を適正化するため卸売り台数を抑制。収益を押し下げる大きな要因になっているが、活動の成果は出つつあり、下半期の収益改善につなげていきたいとしている
2019年度 第1四半期決算の主要財務指標
販売台数は全体需要の落ち込みと比較するとわるくない数字

 主要市場における販売実績については、日本市場では前年同期(13万台)比2.6%減の12万6000台で、登録車はモデルの経年影響で販売が減少しているものの、軽自動車は3月に発売した「デイズ」が好調で販売台数を大きく伸ばしている。

 中国では「シルフィ」「キャシュカイ」「エクストレイル」といった日産ブランドの既存車種が好調で、2018年11月に発売した「ヴェヌーシア T60」の純増もあって前年同期(33万6000台)比2.3%増の34万4000台となった。

 米国では主要車種の経年、販売正常化の取り組みを継続していることなどの影響で前年同期(36万5000台)比3.7%減の35万1000台。ただし、5月以降は台あたりの販売奨励金が前年を下まわり、プライシングの改善なども寄与して1台ごとの平均売価は前年を上まわっているとのこと。販売会社の抱える在庫台数も減少して適正化が進んでいるなど活動の結果も出つつあり、今後も着実に続けて収益の回復を少しずつ実現していけるとの考えを示した。

 欧州では引き続き環境規制に対応するために行なっているパワートレーン切り替えの影響などにより、販売台数は前年同期(16万2000台)比16.3%減の13万5000台となった。

主要市場の販売実績。中国では全体需要が減少した状況で販売台数を伸ばしている
2019年度 第1四半期決算の財務実績
営業利益の増減分析

質疑応答

報道関係者からの質問に答える西川社長

 決算説明会の後半では日産自動車 代表取締役社長 CEO 西川廣人氏と報道関係者による質疑応答が行なわれた。

 日産が進めている事業改革の成果が出ているかどうか、2022年の中期計画終了までにどこに注目して見ると分かるのかという質問に対し、西川社長は「自分たちの意思で行なう『ここは止めます』『この部分でコストを削ります』といった部分はかなり明確にお伝えできますし、おそらく皆さんから見ても分かりやすい形になるかと思います。難しいのは売り上げを増やしていくというところだと思いますので、私も工夫して説明しようと思ったのですが、なかなか難しくて実績でお見せるしかない。販売台数に関しては非常にコンサバティブに見ていて、現状は550万台ぐらいですが、600万台でも収益が出るという前提にしております。1台あたりの売上高とか確実に利益が出ているかとか、ある期間ごとに見ていただくと、われわれの取り組みが見えてくるのではないかと」。

「とくにアメリカのリカバリーというところでは、販売台数そのものをガーンと大きく伸ばすことは考えていません。考えているのは販売の質を改善することで、フリートを減らすということより、本当の意味でお客さまに販売するリテール(小売り)の部分を大幅に増やそうと思っています。このリテールがどれぐらい動いているのかを見ていただくと、われわれの試みが実を結んでいるのかどうかを見ていただけると思います」と回答。

 6月の株主総会を経て、日産が「指名委員会等設置会社」に移行したことを受け、今後の自身の身の処し方について問われ、西川社長は「皆さんから『総会が終わってひと段落ですね』と言われるのですが、7月というのは一番忙しい時期であります。新しい委員会制も始まって、その中でいろいろなことが動いています。私としても果たすべき責任のうちの大きなマイルストーンを1つ越えたなと思っていますので、ここから先はできる限り早い段階で指名委員会に後継の議論をしていただいて、新しい仕組みでは私が決めることはできませんので、私としてはできる限りのサポートをさせていただいて、次世代の人がマネージメントをできる状況を作っていきたい」。

「今日お話をした、(売上高を)14.5兆円まで持っていく、(営業利益率は)6%。そして今仕込んでいる『ニッサン インテリジェント モビリティ』を実現していく。こういった部分をロードマップに乗せるところは、私やこれまでやってきた人間の責任でありますし、今やっている最中です。その先に残る宿題や、その次の3年間、6年間に向けた準備というのは、次世代の皆さんにやっていただきたい。日産の経営会議のメンバーを見ていただいてお分かりのように、当面やってきた部分を継続して果たしていくためのメンバーと、次を担っていくメンバーとで、ちょうど今は混成の状態になっています。次の部分は次世代を担うグループに見ていただこうと考えています」と語っている。

日産自動車 2019年度第1四半期決算発表記者会見(1時間6秒)