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マイクロソフト、中小企業やスタートアップのMaaS実現を支援する「MaaSリファレンスアーキテクチャー」導入
MaaS導入時に必要なユーザー認証やセキュリティなどの共通部分を提供
2019年8月28日 15:52
- 2019年8月27日 開催
米Microsoftの日本法人となる日本マイクロソフト(以下、両社を合わせてMicrosoft)は8月27日、都内の同社本社において記者会見を開催し、自動車、電車、飛行機などの複数の交通システムを1つに統合してユーザーの利便性を向上させるMaaS(マース、Mobility as a Service)に関する取り組みを説明した。
この中で、MicrosoftはMaaS Tech Japanの支援を受けて開発した「MaaSリファレンスアーキテクチャー」を、同社の顧客などに提供していくことを明らかにした。MaaSリファレンスアーキテクチャーは、同社の顧客企業などがMaaSを導入するときに必要となるユーザー認証やセキュリティなどの共通部分をMicrosoftが提供し、これまでよりも容易にシステムを構築できることが特徴となる。
MaaSとは、デジタルの技術を利用して自動車による移動サービス(タクシー、バスやライドシェアなど)、鉄道による移動サービスなどを、スマートフォンなどで利用できるようにする仕組みのこと。現在、日本をはじめとした多くの国で移動手段の未来として大きな注目を集めている。
自動車メーカーもこれからはテクノロジーカンパニーになっていく必要がある時代
冒頭、日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部長 ヘニー・ローブシャー氏が、今回の取り組みの概要に関して説明した。ローブシャー氏は「自動車もすでに単なる自動車メーカーではいられなくなりつつある。自動車メーカーもテクノロジーカンパニーになっていく必要があり、複数の産業間で協力して実現していく必要がある」と述べ、業界、業種などの垣根を越えてオープンイノベーションを実現していく必要があると指摘した。
その例として、MicrosoftがAdobe、SAPなどと取り組みを発表しているOpen Data Initiativeを紹介し、1つの企業だけでなく複数の企業間などでデータをやりとりする仕組みが今後は必要になると強調した。
そして、MicrosoftのMaaSへの取り組みとしてMaaSリファレンスアーキテクチャーの導入、エコシステムの構築、技術者育成プログラム、新規ビジネス開発支援などを挙げ、MicrosoftがMaaS導入支援に積極的に取り組んでいくと説明した。
次いで登壇したのは、日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 運輸・サービス営業統括本部 インダストリーエグゼクティブ 清水宏之氏。清水氏は「国土交通省でもさまざまな議論が行なわれるなど、日本でもMaaSの導入機運は高まっている。さまざまな事業者がMaaSの導入をしようと取り組んでおり、大都市で行なえる交通サービスだけでなく、観光向けなども含めてサービスの連携が必要だと考えられている」と述べ、今後多くの企業がMaaSに取り組んでいくだろうが、その時に重要になるのは複数のサービスが連携できるような仕組みだと指摘した。
MaaS事業に参入したい企業にとって高い開発のハードルを、Microsoftとパートナーが軽減
また、清水氏は「MaaS事業に参入したい企業にとって、開発者が足りないといったリソースの問題、そしてほかのサービスと連携する手間を抑えなければいけないなどの課題がある。例えば、MaaSのサービスを行なう上で個人認証やセキュリティをどのように実現していくかだ」と述べ、そうした課題を抱える事業者向けに開発をより容易に行なえる基盤としてMaaSリファレンスアーキテクチャーの導入を行なっていくと説明した。
清水氏によれば、MaaSリファレンスアーキテクチャーはそうしたリソースが十分ではない中小企業やスタートアップなどがMaaS事業に参入するにあたって、競争領域ではない部分(例えば個人認証やセキュリティの実現)をMicrosoftが標準環境として提供し、顧客企業は事業者間で差別化すべき領域を開発することで、リファレンスアーキテクチャーがない場合に比べて低コストでより早く事業化することが可能になると説明した。
また、MicrosoftのパートナーとなるSI(System Integrator、ITシステムを構築するサービス事業者のこと)パートナー、さらには各種のアプリケーションを開発するソリューションパートナー(Microsoft的な言い方ではISV、独立系のソフトウェア開発事業者のこと)がシステム構築やソフトウェア開発などの手助けをすることで、MaaS事業者がより早く事業化することを助けるという。
清水氏によれば、同社の企業ユーザー向けのサービスである「Office 365」のビジネスユーザーをターゲットにしたサンプルアプリケーションをすでに開発しており、その機能の一部を公開した。
それによれば、スマートフォン上で動くアプリケーションから交通手段(サンプルの場合は都バスのみが対象に)を検索し、そこから経費申請までができるようになっていた。そうした複数の機能を統合したMaaSアプリの開発にリファレンスアーキテクチャーを利用することで、簡単に作ることができるとした。
いち事業者だけでは実現するのは難しいが、複数の事業者が集まることで未来の姿を実現できる
今回、Microsoftが提供するMaaSリファレンスアーキテクチャーは、自身もMaaSプラットフォーム事業を展開しているMaaS Tech Japanと協力して開発が行なわれている。
MaaS Tech Japan 代表取締役CEOの日高洋祐氏は、「MaaSというとライドシェア、カーシェアなどが注目されているが、どちらかと言えば都市レベルでの大きな変化になる。言ってみればフィーチャーフォンからスマートフォンに変わるようなものだ」と述べ、MaaSにより単に新しい交通サービスが登場するだけでなく、そこにフィーチャーフォンからスマートフォンになって利便性が向上したような変化を都市にもたらすものだと強調した。
その上で「いち事業者だけでは、そうした変化を促すことは難しい。しかし、事業者と事業者がこのMicrosoftのリファレンスアーキテクチャー上で連携することで、未来の姿を実現することができる」と述べ、MaaS事業者にとってもこうした基盤を活用することがメリットになると説明した。