ニュース
GTAとITR、両プロモーターがホッケンハイムで共同記者会見
交流戦に向けたスポーティングレギュレーションは最終決定に向けて話し合い中
2019年10月8日 11:06
- 2019年10月6日(現地時間) 開催
SUPER GTに参戦している日本の3メーカー(ホンダ、日産、レクサス)の車両が歴史上初めてDTMの公式戦に参加している「DTM最終戦 ホッケンハイムファイナル'19」が10月4日~6日(現地時間)の3日間、ドイツ ホッケンハイムにあるホッケンハイムリンクで開催された。
会場となったホッケンハイムリンクで10月6日(現地時間)に、SUPER GTをプロモートするGTアソシエイション、DTMをプロモートするITRが共同記者会見を行なった。
GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「日本の3メーカーの車両を公式戦に受け入れていただき、ドイツの関係者に感謝したい。これはスタートに過ぎず、今後も関係を発展させていきたい」と述べ、今回のSUPER GT勢のDTM参戦と11月に行なわれる「AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT×DTM 特別交流戦」などで両シリーズの関係を深めていき、将来的にはグローバルなシリーズに発展させていきたいと夢を持っていると語った。
また、坂東代表は記者から特別交流戦のスポーティングレギュレーションについて聞かれると、レギュレーションはまだ最終決定されておらず、DTM車両にだけ装着されている「DRS」や「プッシュトゥパス」の仕様などについて現在もSUPER GT側とDTM側で話し合いが続いており、最終決定されていないことを示唆した。
歴史的なSUPER GTとDTMの公式戦での混走を歓迎した2人の代表
――今回、SUPER GTの3メーカーがDTMの公式戦に出場することが実現した。そして11月末には富士スピードウェイでドリームレースが実現する。お2人にまずその感想を。
ベルガー氏:昨日、SUPER GTの皆さんと一緒にレースをすることができて嬉しい。両団体が以前から1つの「クラス1」という規定を実現しようと努力してきて、それが形になった。今回6つのマニファクチャラーで1つのレースを催すことができた。これはより大きな未来に向けた偉大な第1歩になると確信しており、今後両者の協力を続けていきたい。
坂東氏:この場を設けていただいて嬉しく思う。ITRとともに長い間、クラス1と規則、交流戦というものを考えてきて、ようやくここにたどり着くことができた。ドイツメーカー、ドイツのファン、関係者に、日本のマニファクチャラーを代表して感謝を表したい。これでようやくスタートに立つことができた、大きなステップだ。
――日本から来た3台は、とくに金曜日の雨の中で苦戦しているように見えた。これについてはどう思うか?
ベルガー氏:日本から来た皆さんは学ぶのが非常に早い。ジェンソン(ジェンソン・バトン選手)のラップタイムを見れば、それは明らかだ。不幸にも、木曜日は短時間、金曜日は雨と十分なセットアップを施す時間がなかった。とくにタイヤに関してはSUPER GTとDTMは異なる使い方をしている。われわれが利用しているハンコックタイヤはワンメイクだが、競争がある日本のSUPER GTのタイヤとはグリップレベルなども大きく異なっていて、ドライバーの乗り方もセットアップも異なっており、完璧とは言えない状況だった。しかし、ジェンソンのクルマはだんだんとよくなってきており、最後はいいレベルになっていた。他の2台は厳しかったが、今日はより競争力を発揮することができるのではないだろうか。
ただし、残念ながら今日も雨で、日本の皆さんにとっては厳しい状況になってしまっている。ただ、今後はこのデータが富士に役立つと思うし、富士では異なる風景になるのではないだろうか。
坂東氏:2つのシリーズのスポーティングレギュレーションが違う中で大きな違いが出ている。一番大きいのがタイヤの違いだ。ドライであればもっと早く順応できる状況もあるかなと思っていたが、今日も雨ということで、セットアップが苦しい状況。富士の特別交流戦に向けてはお互いに話をしながら、いい形で招いて、日本でいいレースができればと考えている。
――富士スピードウェイに行くアウディのドライバーが、レネ・ラスト選手、マイク・ロッケンフェラー選手、ロイック・デュバル選手、そしてブノア・トレルイエ選手に決定した。その感想を教えてほしい
ベルガー氏:非常に素晴らしいラインアップで高い競争力がある。今回の最終戦には日本のクルマが3台来て、富士にはドイツから7台がいくことになる。残念ながらイギリスのクルマは行かないが……。富士ではいいレースを見せることができると思う。
――BMWからはアレックス・ザナルディ選手がラインアップに含まれているが?
坂東氏:日本では2020年にオリンピック、パラリンピックがある。ザナルディ選手は大事故で大きなケガを負ったのに、復帰してWTCCなどで活躍したほか、ロンドンパラリンピックで金メダルを取るという偉業を実現している。日本のそうしたアスリートにとっても、ザナルディ選手が交流戦に参加してもらうことは大きな意味がある。
GTAの坂東代表「交流戦のスポーティングレギュレーションはよく相談して決めていきたい」
――11月の交流戦のレギュレーションはどうなっているのか?
ベルガー氏:基本的にはDTMのルールに基づいて行なわれる。同じハンコックタイヤ、同じBPの燃料、スタンディングスタートなどが日本のレースでも使われることになる。次回もこうした交流戦があれば、彼らのルールを受け入れる可能性はあると考えている。
――今回はDTMのTV放送でもSUPER GTとのコラボレーションに大きな注目が集まっていた。このことは日本での富士のチケットセールスに影響を与えるか?
坂東氏:富士は非常に長いストレートがあり、ブレーキングが難しいサーキットだ。しかし、富士スピードウェイは鈴鹿サーキットと並び、日本で1、2を争う設備が充実したサーキットだ。そこにドイツの皆さまをお迎えできることを嬉しく思っている。とくに西日が当たった時の富士山はとてもきれいになるだろう。時期的にちょっと寒いかもしれないが、よい景色の中でレースができると考えている。スポーティングレギュレーションに関してはよく相談しながら決めていきたい。
――今回のコラボレーションはDTM、SUPER GTそれぞれのマニファクチャラーにとって陣容を拡大するようなことにつながるのだろうか?
ベルガー氏:すでに述べたとおり、最終的には夢があるが、そこにたどり着くのは簡単ではなく、ステップバイステップで進めていく必要がある。まずは日本で行なわれるレースを成功させることだ。欧州側としては他に興味がある国にもクラス1を提供できるように、レギュレーションの調整を行なっている。現時点でもいくつかの調整すべき小さな課題があり、道半ばと言ったところだ。無駄な問題が起きるのを防ぐ意味でもステップバイステップで取り組んでいく。ただ、一般論としてはいい方向に向かっている。
坂東氏:日本ではドメスティックなモータースポーツに参加するトヨタ、日産、ホンダという3つのマニファクチャラーがあり、ドイツにはドイツメーカーとアストンマーティンがこちらもドメスティックなレースとして行なわれているが、その2つを合わせて6つのマニファクチャラーが競うのがクラス1の考え方だ。それにより、マニファクチャラーがグローバルに展開したいと考えれば、それに貢献できる体制が整った。これが最初の1歩であり、世界を見つめてより多くのマニファクチャラーが参加できる環境を整えていきたい。
――最初の1歩という話だが、ITRとGTAによるグローバルのフル選手権の可能性は?
ベルガー氏:坂東さんに最初の言葉を(笑)。
坂東氏:マニファクチャラーの営業戦略にとっても大きな効果があると思う。1つのレギュレーションにこれだけのマニファクチャラーが集まっているのは世界的に見ても例を見ないものだ。今後それを進めていけば、これまでとは違う考え方が出てくるのではないだろうか。ワールドカップを作るのは将来の大きな夢となる。
ベルガー氏:われわれ2人の共通の目標は、まずは一緒にレースをすることだった。これからステップバイステップで実現していけばいい。まずはここ(DTM)でレースをして、富士の交流戦に取り組んでいく。来年どうするかが次の目標だ。
――坂東氏に。2020年、2021年に日本のマニファクチャラーがDTMに参戦する可能性はあるか?
坂東氏:難しい観点になるが、そうしたことへの第1歩が今回のレースだし、交流戦だ。この2つを来年に向けて意味があるものにしていかなければならない。
――今回、SUPER GTの3台がDTMに参加したことはDTMに影響を与えているか?
ベルガー氏:大きな影響がある。メディアもファンも、SUPER GTの3台に大きな注目をしている。実際、昨日のTV中継は土曜日に行なわれたレース1としては今年最も多かった。ファンは6ブランドがそろったことを楽しんでいるし、今日もエキサイティングなレースに期待したい。
――SUPER GTとDTMのコラボレーションは、今回はDTMのフィナーレにSUPER GTの車両が参加しているが、来年以降もこの形なのか?それとも別の形になるのか?
ベルガー氏:今回ドイツの選手権に日本のメーカーが参戦し、将来はその逆にSUPER GTにドイツのメーカーが参加するかもしれない。どちらの可能性もよいものだ。そして、選手権とは別に11月に行なわれる交流戦のような形もいいものだ。どっちもいい方法だと思う。
――ベルガー氏に。将来的にはDTMに日本のメーカーが参戦することはあり得るのか?
ベルガー氏:可能性は話し合っているが、詳細を明らかにすることはできない。例えば2つのシリーズにはいくつかの違いがある。タイヤ交換や燃料の給油、さらにはレースフォーマットなどがその代表的な例と言えるだろう。来年はもっと状況がよくなると考えており、どうしたらいいかをいろいろとブレインストーミングしながら検討している段階だ。だが、今はその詳細を説明する段階にはない。それは次のステップになると考えている。
――ベルガー氏と坂東さんに。11月にレースをすることはDTMにとってもいいことだと思うが、それを欧州で行なう可能性はあるか? 欧州のファンにとってもいいことだと思うが……。
ベルガー氏:そうしたことを考えたこともある。一般論としてそうしたことも検討したこともある。そうしたデマンドがあることも認識しており、とくに12月~3月まではウインターシーズンとなり、レースもないので検討の余地はあると考えている。
坂東氏:今回、DTMファイナルにわれわれの3台を迎え入れていただき、シリーズの最終戦に招き入れていただいたことを心より感謝している。今回は最終戦を前にチャンピオンが決まっていたが、仮に最終戦にチャンピオンシップがかかったままであったことを考えると、快く受け入れていただいたドイツのファンの皆さま、関係者の皆さまに心より感謝したい。