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日本からも参戦のDTM最終戦、第1レースは今季王者のアウディのレネ・ラスト選手が優勝
SUPER GT勢は、ホンダ NSXのバトン選手の9位が最上位に
2019年10月6日 18:25
- 2019年10月5日~6日(現地時間) 開催
ドイツ・ホッケンハイムリンクで10月5日~6日(現地時間)、ドイツのツーリングカー選手権であるDTMの最終戦が2日間に渡って開催されている。このレースに、DTMの歴史上初めて日本の自動車メーカーのレーシングカーが参戦している。日本から参戦しているのは、SUPER GTのGT500クラスに参戦しているジェンソン・バトン選手(1号車 Honda NSX-GT)、松田次生選手(35号車 MOTUL AUTECH GT-R)、平川亮選手(37号車 LEXUS TEAM TOM'S LC500)の3選手で、ホンダ、日産、レクサス(トヨタ自動車)がそれぞれ1台ずつとなっている。
レース1は、すでに今シーズンのチャンピオンを前戦で決めているレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sport RS 5 DTM)がポールポジションからスタートして優勝。2位にはBMWのマルコ・ウィットマン選手(11号車 Schaeffler BMW M4 DTM)、3位はアウディのマイク・ロッケンフェラー選手(99号車 Akrapovic Audi RS 5 DTM)が入った。
日本勢はバトン選手の9位が最上位で、平川選手が13位、松田選手はフォーメーションラップに向かう段階でプロペラシャフトにトラブルが発生し、レース後半までに修復して走り出したものの、規定周回に届かずリタイアに終わった。
SUPER GTに参加している3メーカーの3チームがDTMに参加する歴史的なレース
SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(GTA)と、DTMのプロモーターであるITRは、以前より車両規則やパワーユニット規則の同一化を目指して活動してきており、同じ規則の下で相互にレースができるようにすることを目指してきた。
2019年、DTM側が2.0リッター4気筒ターボエンジンを導入し、2020年からSUPER GT GT500側が「クラス1」という規定による車両を導入することにより、細部に違いはあるが、ほぼ同じような規定でレースができるようになっている。
そうした一連の流れを受け、DTMのシリーズ最終戦となるホッケンハイムリンクでのレースに、SUPER GT GT500に参戦するメーカー(レクサス/日産/ホンダ)が1台ずつ車両を持ち込み、初めてDTMに日本の車両が参加するという歴史的なできごとが実現した。
参加したのはレクサスが37号車 LEXUS TEAM TOM'S LC500、日産が35号車 MOTUL AUTECH GT-R(普段はSUPER GTで23号車として走っているチーム)、ホンダが1号車 Honda NSX-GTとなった。ドライバーは37号車が平川亮選手とニック・キャシディ選手、33号車が松田次生選手とロニー・クインタレッリ選手、1号車がジェンソン・バトン選手となった。DTMでは土日それぞれにレースがあるため、1人だけの参加となったバトン選手は土日共に走り、残りの2チームは1人が土曜日、そしてもう1人が日曜日に走るという展開になった。
また、DTMは韓国のタイヤメーカーであるハンコックのワンメイク供給となっているため、SUPER GTの3チームも、普段SUPER GTで使っているタイヤではなく、ハンコックのタイヤを利用する必要がある。今回のレースでは、シリーズ戦ではまったく使ったことのないハンコックタイヤの特性を掴むことがSUPER GTの3チームにとって大きな課題になりそうだ。
ハンコックタイヤに悩んだ日本の3チーム。ポールポジションは今季王者のアウディ・ラスト選手
木曜日に急きょ設けられた特別走行、そして金曜日に設けられた練習走行の時間で、SUPER GTの3チームはハンコックタイヤに慣れること、そして情報を収集することに力を入れるが、SUPER GTで普段利用しているタイヤとの差に戸惑うチームが多く、なかなかセッティングが進まない。特に金曜日のフリー走行1回目は雨となり、ウェットタイヤを利用するものの各チームともグリップしないと語り、戸惑いが広がった。
DTMでハンコックから供給されるのは、6セットのドライタイヤと3セットのウェットタイヤという内訳で、それぞれ1種類のタイヤで幅広いコンディションに対応することになる。ソフト、ミディアムとコンディションに合わせたタイヤを持ち込んだりする普段のSUPER GT GT500レースとは様相が異なっており、そうした難しい状況に対応することが各チームに求められることになった。
そうして迎えた土曜日の予選では、午前中から降り続いた雨により、難しいコンディションとなった。特に後半に向けて雨は徐々にあがり、ドライに近付いていく中での悩ましいタイヤ選択となった。
そうした中で終始予選をリードしたのは、すでに前戦のレースでDTMの2019年チャンピオンが決定しているレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sport RS 5 DTM)だ。ラスト選手はアウディ・スポーツ(アウディのレース関連のブランド)のワークスチームであるアウディ・スポーツ・チーム・ロズベルグのエースで、2017年にもDTM王者に輝いている実力者だ。今年も最終戦を残してDTMチャンピオンに輝いており、シーズンを総括するイベントの最初のレースで見事にポールポジションを獲得した。
予選2位はBMWのエースとなるマルコ・ウィットマン選手(11号車 Schaeffler BMW M4 DTM)で、今シーズンはアウディ勢が圧倒的に強いという状況の中で、BMW勢の中で唯一多くのレースで入賞しており、今回もアウディ勢の独走劇にストップをかけるべくいい位置につけている。3位はシリーズランキング4位で、もう1つのアウディワークスであるアウディ・スポーツ・チーム・フェニックスのマイク・ロッケンフェラー選手(99号車 Akrapovic Audi RS 5 DTM)となった。それに対してランキング2位のアウディ・スポーツ・チーム・アプト・スポーツラインのニコ・ミューラー選手(51号車 Castrol EDGE Audi RS 5 DTM)は11位に終わっており、レースでの挽回が期待されるところだ。
注目の日本勢は、バトン選手(1号車 Honda NSX-GT)が6位となる好タイムをマークして注目を集めた。前輪が暖まりにくいというミッドシップならではの課題を抱えたバトン選手はハンコックタイヤの扱いに戸惑い、ウェットタイヤで走れるような状態ではないと後に説明した状況ながら、持ち前の難しいコンディションへの高い適応能力を発揮。序盤から上位に位置しており、終盤のタイムアタックで最終的に6位に相当するタイムをマーク。3台のSUPER GT勢で唯一上位グリッドにつけることに成功した。
ドライはともかく、ウェットではまったく走れる状況ではないと語った平川選手(37号車 LEXUS TEAM TOM'S LC500)と松田選手(35号車 MOTUL AUTECH GT-R)はそれぞれ予選で20位と21位にとどまっており、午後に行なわれるレース1では最後尾からの追い上げを目指す展開となった。
予選結果
順位 | カーナンバー | ドライバー | エントラント | 車両 | タイム | 周回数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | Rene Rast (DEU) | Audi Sport Team Rosberg | Audi Sport RS 5 DTM | 01:45.6 | 10 |
2 | 11 | Marco Wittmann (DEU) | BMW Team RMG | Schaeffler BMW M4 DTM | 01:45.7 | 10 |
3 | 99 | Mike Rockenfeller (DEU) | Audi Sport Team Phoenix | Akrapovic Audi RS 5 DTM | 01:45.8 | 10 |
4 | 27 | Jonathan Aberdein (RSA) | WRT Team Audi Sport | WRT Audi RS 5 DTM | 01:45.9 | 11 |
5 | 28 | Loic Duval (FRA) | Audi Sport Team Phoenix | MASCOT WORKWEAR Audi RS 5 DTM | 01:45.9 | 8 |
6 | 1 | Jenson Button (GBR) | Team Kunimitsu | Honda NSX-GT | 01:46.2 | 10 |
7 | 16 | Timo Glock (DEU) | BMW Team RMR | JIVS BMW M4 DTM | 01:46.3 | 11 |
8 | 4 | Robin Frijns (NLD) | Audi Sport Team Abt Sportsline | Aral Ultimate Audi RS 5 DTM | 01:46.4 | 11 |
9 | 31 | Sheldon Van der Linde (RSA) | BMW Team RBM | Shell BMW M4 DTM | 01:46.4 | 11 |
10 | 47 | Joel Eriksson (SWE) | BMW Team RBM | CATL BMW M4 DTM | 01:46.6 | 11 |
11 | 51 | Nico Muller (CHE) | Audi Sport Team Abt Sportsline | Castrol EDGE Audi RS 5 DTM | 01:47.0 | 11 |
12 | 62 | Ferdinand von Habsburg (AUT) | R-Motorsport 2 | Aston Martin Vantage DTM | 01:46.8 | 12 |
13 | 23 | Daniel Juncadella (ESP) | R-Motorsport 2 | Aston Martin Vantage DTM | 01:47.0 | 12 |
14 | 76 | Jake Dennis (GBR) | R-Motorsport 1 | Aston Martin Vantage DTM | 01:47.0 | 12 |
15 | 7 | Bruno Spengler (CAN) | BMW Team RMG | BMW Bank M4 DTM | 01:47.0 | 11 |
16 | 3 | "Paul Di Resta (GBR) | R-Motorsport 1 | Aston Martin Vantage DTM | 01:47.1 | 12 |
17 | 25 | Philipp Eng (AUT) | BMW Team RMR | ZF BMW M4 DTM | 01:47.5 | 11 |
18 | 53 | Jamie Green (GBR) | BMW Team RMR | Hoffmann Group Audi RS 5 DTM | 01:47.6 | 10 |
19 | 21 | Pietro Fittipaldi (BRA) | WRT Team Audi Sport | WRT Audi RS 5 DTM | 01:47.8 | 11 |
20 | 37 | 平川亮 (JPN) | Lexus Team KeePer TOM'S | Lexus LC500 | 01:49.2 | 11 |
21 | 35 | 松田次生(JPN) | Nismo | Nissan/ R35 | 01:49.3 | 11 |
レース1で優勝したのは今季王者のアウディ・ラスト選手。日本勢ではホンダ・バトン選手の9位が最上位
13時半から行なわれたレース1では、ローリングスタートのSUPER GTとは異なりスタンディングスタートになるDTMのスタートに向けて各車が走り始めると、グリッドには松田選手の35号車が取り残されていた。結局35号車はそのままマーシャルカーに引かれてピットに戻り、そこからマシンの修復に取りかかることになった。
松田選手によれば壊れたのはプロペラシャフトで、直前にも兆候があったようだが、すでにグリッドにいる状態ではどうしようもなく立ち往生してしまったのだ。これにより、松田選手の勝負権ははなくなってしまったが、日曜日にチームメイトのクインタレッリ選手が走るレース2や、同じくハンコックタイヤが使われる11月の交流戦に向けての情報収集という意味もあり、NISMOのメカニックが大至急修復に入り、30分足らずで松田選手をコースに送り出すことに成功した。1時間+1周というレース周回を考えると、完走扱いになるには難しい状況になっていたが、それでもデータ取りのために松田選手は走り続けてチェッカーを受けた。
同じく最後尾グリッドからスタートした平川選手(37号車 LEXUS TEAM TOM'S LC500)は1周目が終わった時点でピットインし、タイヤを交換する作戦を取った。これは元々チームは変則2回のピットストップを考えていたためで、後半にセーフティカーなどが出て、その1回分のタイヤ交換のロスタイムが意味がなくなることに賭ける戦略だ。
レース1は、ポールスタートのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sport RS 5 DTM)がレースを引っ張り、終始レース1をリードした。このラスト選手についていけたのは2位を走るマルコ・ウィットマン選手(11号車 Schaeffler BMW M4 DTM)、3位を走るマイク・ロッケンフェラー選手(99号車 Akrapovic Audi RS 5 DTM)選手となった。6位からスタートしたジェンソン・バトン選手(1号車 Honda NSX-GT)はスタートで順位を2つ落として8位でレースの隊列に加わった。
バトン選手は終始前のマシンを追いかけるものの、DTM車両にあるDRS(ドラッグリダクションシステム、スイッチを押すとリアウイングが倒れてドラッグを減らし、ストレートでのタイムを稼ぐ仕組み。F1に導入さているものと同じシステム)やプッシュトゥーパス(スイッチで30馬力が追加されるシステム)などと合わせて、それらを持たないSUPER GT規定の車両の不利は否めず、苦しいレース展開をしていた。しかも、バトン選手は1度は必ず入らなければいけないタイヤ交換の作業に、DTM勢よりも10秒以上長くかかってしまうというチームのミスも発生。隊列に戻るとほぼ最後尾の17位まで落ちてしまっていた。
ところが、その後コース脇に止まった車両が出たことでセーフティカーが出され、まだピットに入っていなかった車両はみなピットインすることになった。その間にバトン選手、そしてそのタイミングでピットインして予定していた2回目のタイヤ交換を終えていた平川選手は前との差を大きく縮めることに成功し、再びレースができる環境に。ここから2台とも追い上げていき、最終的にバトン選手は9位、そして平川選手は13位まで追い上げたところでチェッカーを迎えた。なお、今回SUPER GTの3台は賞典外となるため、9位に入ったバトン選手にポイントは付与されないが、歴史的なレースで、かつデータのほとんどないハンコックタイヤを使いこなして9位に入ったバトン選手には多くの賞賛が与えられていた。
レースは結局、1度だけウィットマン選手にオーバーテイクされたがすぐ翌周に抜き返したアウディのラスト選手がポールトゥウィンで優勝。2位はBMWのウィットマン選手、3位はアウディのロッケンフェラー選手。4位はアウディ・スポーツ・チーム・アプト・スポーツラインのロビン・フラインス選手(4号車 Aral Ultimate Audi RS 5 DTM)、5位はアウディ・スポーツ・チーム・フェニックスのロイク・デュバル選手(28号車 MASCOT WORKWEAR Audi RS 5 DTM)、6位はBMW・チーム・RMRのティモ・グロック選手(16号車 JIVS BMW M4 DTM)となり、アウディ勢が上位6台のうち4台を占めるという圧倒的な結果となった。
10月6日の13時30分(現地時間)からはレース2が予定されており、ホンダは引き続きバトン選手がドライブ。レクサスはニック・キャシディ選手、日産はロニー・クインタレッリ選手にドライバーを変更してレースに参加する予定だ。
第1レース結果
順位 | カーナンバー | ドライバー | エントラント | 車両 | 周回数 | 時間 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | Rene Rast (DEU) | Audi Sport Team Rosberg | Audi Sport RS 5 DTM | 38 | 1時間01分01秒 |
2 | 11 | Marco Wittmann (DEU) | BMW Team RMG | Schaeffler BMW M4 DTM | 38 | 1時間01分03秒 |
3 | 99 | Mike Rockenfeller (DEU) | Audi Sport Team Phoenix | Akrapovic Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間01分12秒 |
4 | 4 | Robin Frijns (NLD) | Audi Sport Team Abt Sportsline | Aral Ultimate Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間01分19秒 |
5 | 28 | Loic Duval (FRA) | Audi Sport Team Phoenix | MASCOT WORKWEAR Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間01分25秒 |
6 | 16 | Timo Glock (DEU) | BMW Team RMR | JIVS BMW M4 DTM | 38 | 1時間01分27秒 |
7 | 3 | Paul Di Resta (GBR) | R-Motorsport 1 | Aston Martin Vantage DTM | 38 | 1時間01分27秒 |
8 | 7 | Bruno Spengler (CAN) | BMW Team RMG | BMW Bank M4 DTM | 38 | 1時間01分28秒 |
9 | 1 | Jenson Button (GBR) | Team Kunimitsu | Honda NSX-GT | 38 | 1時間01分32秒 |
10 | 47 | Joel Eriksson (SWE) | BMW Team RBM | CATL BMW M4 DTM | 38 | 1時間01分33秒 |
11 | 76 | Jake Dennis (GBR) | R-Motorsport 1 | Aston Martin Vantage DTM | 38 | 1時間01分39秒 |
12 | 53 | Jamie Green (GBR) | Audi Sport Team Rosberg | Hoffmann Group Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間01分39秒 |
13 | 37 | Ryo Hirakawa (JPN) | Lexus Team KeePer TOM'S | LEXUS TEAM TOM'S LC500 | 38 | 1時間01分42秒 |
14 | 27 | Jonathan Aberdein (RSA) | WRT Team Audi Sport | WRT Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間01分48秒 |
15 | 21 | Pietro Fittipaldi (BRA) | WRT Team Audi Sport | WRT Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間02分00秒 |
16 | 31 | Sheldon Van der Linde (RSA) | BMW Team RBM | Shell BMW M4 DTM | 38 | 1時間02分01秒 |
17 | 51 | Nico Muller (CHE) | Audi Sport Team Abt Sportsline | Castrol EDGE Audi RS 5 DTM | 38 | 1時間02分03秒 |
R | 35 | 松田次生(JPN) | Nismo | Nissan/ R35 | 21 | ー |
R | 23 | Daniel Juncadella (ESP) | R-Motorsport 2 | Aston Martin Vantage DTM | 20 | ー |
R | 25 | Philipp Eng (AUT) | BMW Team RMR | ZF BMW M4 DTM | 17 | ー |