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【F1日本GP 2019】FP2は、2台のメルセデスが先行。レッドブル・ホンダとフェラーリが追いかける

田辺ホンダF1 テクニカルディレクターは、サーキット閉鎖の土曜日にテレワークでデータ分析

2019年10月11日~13日 開催

マックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)

 10月11日~13日の3日間にわたり、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「2019 FIA F1世界選手権 シリーズ第17戦 日本グランプリレース」が開催されている。大型で猛烈とされる台風19号(ハギビス)の影響で10月12日のスケジュールはすべてキャンセルされ、サーキットはクローズとなることがすでに決定(別記事参照)している。

 初日となる10月11日は曇りの天候の中、雨は降ることはなく練習走行1(FP1、1時間30分)、練習走行2(FP2、1時間30分)が行なわれた。

 FP1、FP2の両方でトップタイムをマークしたのはバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)。2位はチームメイトでポイントリーダーのルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)が続いており、メルセデスの2台が強いF1日本GPとなりそうな情勢だ。

 FP2でそのメルセデスに0.281秒差で続いたのはホンダ勢のエースとなるマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)で、チームメイトのアレクサンダー・アルボン選手(23号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)も初めての鈴鹿でチームメイトから約0.3秒遅れの6位といい位置につけている。

 フェルスタッペン選手に続く4位と5位はシャルル・ルクレール選手(16号車 フェラーリ)、セバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)で、トップ6に続く中段勢のトップはマクラーレンのカルロス・サインツ選手(55号車 マクラーレン・ルノー)がつけている。

FP3がなくなったことでFP2の重要性が増す。メルセデスが強く、レッドブル、フェラーリが続く

FP2でトップタイムをマークしたバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)

 大型で猛烈とされる台風19号(英語名:ハギビス)の接近に伴い、FIA、JAF、鈴鹿サーキットの三者が協議し、観客の安全などに配慮するため、F1日本GPのスケジュールのうち10月12日(土)の全セッションがキャンセルになり、一部の関係者を除き、観客やメディア関係者、F1関係者などに対してサーキットは閉鎖ということになった(ホテルエリアは営業を続ける)。

 これにより予選は10月13日(日)の10時から行なわれることになり、2010年以来の3度目のワンデーレース(もう一度は2004年)になることが決定している。現在台風19号は徐々に東にずれていっている状況であり、それほど影響が出ないかもしれないが、何より重要なことは観客の安全であり、それを第一に考えてこのことを決断したFIA、JAF、鈴鹿サーキットの決断を支持したい。

 その半面、競技面への影響が避けられないのも事実で、特に大きな影響として、通常であれば予選の2時間前に行なわれる練習走行3(FP3)が中止になった。予選のシミュレーションなどが行なえないという意味で、予選結果に大きな影響を与えることになりそうだ。このため、各チームはFP2で予選に向けてのシミュレーションなどを行なうことになり、FP2の順位が予選の順位に近い可能性が高い。

山本尚貴選手(38号車 トロロッソ・ホンダ)

 FP1で大きな話題になったのは、言うまでもなく山本尚貴選手がトロロッソ・ホンダから走行を担当したことだ。チームメイトのダニール・クビアト選手と遜色のないタイムで走り、スピンしたりクラッシュしたりということもなくプログラムをすべてこなして見せたことは、関係者に大いに評価された。

FP1結果
順位カーナンバードライバー車両タイム周回数
177バルテリ・ボッタスメルセデス1分28秒73126
244ルイス・ハミルトンメルセデス1分28秒807+0.076秒25
35セバスチャン・ベッテルフェラーリ1分29秒720+0.989秒26
416シャルル・ルクレールフェラーリ1分29秒912+1.181秒20
533マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ1分30秒046+1.315秒22
623アレクサンダー・アルボンレッドブル・レーシング・ホンダ1分30秒375+1.644秒24
755カルロス・サインツマクラーレン・ルノー1分30秒702+1.971秒21
811セルジオ・ペレスレーシング・ポイント・BWT・メルセデス1分30秒810+2.079秒21
918ローレンス・ストロールレーシング・ポイント・BWT・メルセデス1分30秒959+2.228秒27
104ランド・ノリスマクラーレン・ルノー1分31秒001+2.270秒24
118ロマン・グロージャンハース・フェラーリ1分31秒283+2.552秒25
127キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1分31秒307+2.576秒27
1327ニコ・ヒュルケンブルグルノー1分31秒426+2.695秒29
143ダニエル・リカルドルノー1分31秒563+2.832秒25
1520ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ1分31秒785+3.054秒22
1626ダニール・クビアトスクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分31秒920+3.189秒23
1738山本尚貴スクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分32秒018+3.287秒30
1863ジョージ・ラッセルウィリアムズ・メルセデス1分32秒800+4.069秒23
1988ロバート・クビサウィリアムズ・メルセデス1分33秒484+4.753秒27
2099アントニオ・ジョヴィナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1分36秒887+8.156秒4

 FP1が終わり、予選に向けて最後の走行機会となったFP2では各チームがさまざまなプログラムをこなしていった。そうした中で午前中に引き続きトップタイムをマークしたのはバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)で、2位となったチームメイトのルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)にコンマ1秒の差をつけてトップタイムをマークした。今回のメルセデスはクルマが完全に決まっている印象で、走りだしから安定して速く、レッドブル・レーシングやフェラーリと言ったほかのトップ3チームとの競争という観点では頭が1つ抜けている印象だ。

FP2で2位になったルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

 そのメルセデスに続いたのはホンダ勢のエースとなるマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)だ。昨年もこのレースで表彰台に上がっているフェルスタッペン選手は、ボッタス選手から0.281秒遅れの3位につけており、フェラーリ勢を上回って見せた。チームメイトのアレクサンダー・アルボン選手(23号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)も6位でチームメイトとの差はわずかに0.336秒で、初めての鈴鹿サーキットで、かつF1での初走行としては上々の結果と言える。

アレクサンダー・アルボン選手(23号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)

 午前中はレッドブル勢を上回っていたフェラーリ勢は午後にはやや失速し、レッドブル勢の方が勢いがあるように見える。最近勢いがあるシャルル・ルクレール選手(16号車 フェラーリ)は4位、セバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)は5位となっており、いずれもトップとは0.356秒、0.591秒と小さい差で、日曜日の予選が楽しみだと言える。

シャルル・ルクレール選手(16号車 フェラーリ)

 トップ6に続いたのはマクラーレンのカルロス・サインツ選手(55号車 マクラーレン・ルノー)で、ロングランも安定しており、日曜日の決勝レースでのトップ3チーム以外の争いで優位につけた形になる。

カルロス・サインツ選手(55号車 マクラーレン・ルノー)

 トロロッソ・ホンダ勢は、ピエール・ガスリー選手(10号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が9位、ダニール・クビアト選手(26号車 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が12位と好位置につけており、ホンダの地元での4台入賞に向けて好スタートを切った形だ。

FP2結果
順位カーナンバードライバー車両タイム周回数
177バルテリ・ボッタスメルセデス1分27秒78533
244ルイス・ハミルトンメルセデス1分27秒885+0.100秒34
333マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ1分28秒066+0.281秒24
416シャルル・ルクレールフェラーリ1分28秒141+0.356秒28
55セバスチャン・ベッテルフェラーリ1分28秒376+0.591秒37
623アレクサンダー・アルボンレッドブル・レーシング・ホンダ1分28秒402+0.617秒34
755カルロス・サインツマクラーレン・ルノー1分29秒051+1.266秒29
811セルジオ・ペレスレーシング・ポイント・BWT・メルセデス1分29秒299+1.514秒28
910ピエール・ガスリースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分29秒354+1.569秒34
104ランド・ノリスマクラーレン・ルノー1分29秒358+1.573秒35
117キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1分29秒477+1.692秒29
1226ダニール・クビアトスクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分29秒512+1.727秒35
138ロマン・グロージャンハース・フェラーリ1分29秒553+1.768秒28
1418ランス・ストロールレーシング・ポイント・BWT・メルセデス1分29秒597+1.812秒27
1599アントニオ・ジョヴィナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1分29秒651+1.866秒33
1620ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ1分29秒749+1.964秒31
173ダニエル・リカルドルノー1分29秒859+2.074秒30
1827ニコ・ヒュルケンブルグルノー1分30秒334+2.549秒29
1988ロバート・クビサウィリアムズ・メルセデス1分30秒916+3.131秒35
2063ジョージ・ラッセルウィリアムズ・メルセデス1分31秒071+3.286秒36

サーキットに来ることができない土曜日は、ホテルでテレワークすると田辺テクニカルディレクター

ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏

 FP1、FP2の終了後には、ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏の会見が行なわれた。田辺テクニカルディレクターは、FP1、FP2の様子や今回のレースからエクソンモービルが投入した、本田技術研究所の先進開発研究所も協力して開発した新燃料を投入した結果などに関して説明した。

──田辺氏からまずは今日のまとめを。

田辺氏:FP1の途中に、台風の接近により明日は我々も立ち入れないという判断が下された。これにより日曜日に予選とレースを行なうことになったため、今日の練習走行で予選と決勝に向けたセットを出すことになった。

 午前中のFP1では路面がよくなかったため多くの車両があまり走らなかったが、FP2では多くの車両が周回を重ねていた。レッドブルの2台に関しては、FP1ではバランスがあまりよくなかったが、FP2に向けて改善ができた。それでもまだ両ドライバーとも満足していないと言ってるので、レースに向けて改善していく。トロロッソに関しては2台ともFP1はあまりよくなかったが、FP2で改善してきた。引き続きレースに向けて改善して臨む。

 また、FP1では山本尚貴選手がドライブした。彼は今回のレースで初めてのF1マシンに乗るのを公式セッションでという難しい状況の中で、レッドブルからも、トロロッソからもよかったと評価さていた。きちんと走ってくれて、パワーユニットへのフィードバックも満足いく結果だ。ホンダにとってのホームレースで、トップカテゴリーになるホンダのドライバーが乗ることは若いドライバーにとっても大きな意味があったと考えている。

 なお、今回は全車がスペック4を使用しており、昨日説明しているエクソンモービルの新しい燃料を投入している。今のところ大きな問題は発生しておらず、今後も最適化を図っていく。

──新しい燃料を導入した結果について教えてほしい。シーズン中の投入にリスクはないのか?

田辺氏:エンジンの燃焼に合うような形で開発してきて、パワーアップを果たしていることを確認した。そして、今回耐久性に関しても問題がないことを確認できた。リスクは基本的にないと判断しており、実際に問題なく走れている。

──山本選手のPU側のへのフィードバックとは具体的にどんな内容なのか?

田辺氏:ドライバビリティ関連や、パワーデリバリー関連などになるが、実はまだゆっくり話できていないので、この後ゆっくり話しましょうという話にしている。

──今日のFP2での3番手のタイムは、予想より手応えを感じているのか?

田辺氏:まだ初日なので分かりません……。あ、でも今回は今日しかない(苦笑)。ドライバー達がクルマの方でなんだかんだと言ってて納得していない部分があるので、日曜日の予選に向けてセットアップを進めていきたい。

──これまでの所は想定していた感じか?

田辺氏:そのとおりだ。基本的には順調に想定されていたことをやっている状況だ。

──今回はFP3がなくなったことがFP1の時点で分かったが、予定していたプログラムの組み替えなどはあったのか?

田辺氏:FP2でやる予定だった要素とFP3でやる予定だった要素を足して、その中で優先順位をつけて低いモノを除き、セッションの終わりの方に雨が降るかもしれないということがあったので、優先順位が高いものから実行していった。

──今回山本選手がFP1に乗ったことで、いつもの金土にやってるプログラムとの違いがあったと思うが、その影響は?

田辺氏:ガスリー選手に関して言うと、山本選手がしっかりフィードバックをしていたこともあってさほど影響がなかったと思う。出だしちょっとでそれなりのクルマができていれば、ぱっといけるし、結果的にもタイムをだしていた。しわ寄せがネガティブな方に来たかということはないと思う。

──明日(土曜日)はすべての予定がキャンセルということですが、田辺氏は何をしているのか?

田辺氏:まだ決まっていない。ここには来られないですが、明日も仕事をすることになると思います、復習と予習だ(笑)。この後FIAがチームとのミーティングの中でカーフュー(作業時間の制限のこと)や今日の作業は何時までに終わるべきなのかなどを、話し合ったりして決めると聞いているので、それを聞いてから決めることになる。それによりサクラ(HPD Sakura)やミルトンキーンズも動きを決めることになる。

 走行データなどは基本的にはサクラに行っているので、(インターネットの)速度の問題もあるが在宅勤務的なことも今の時代は代替できるので。

──明日の予定がキャンセルになったことに関して、田辺氏自身としてはどう感じているか?

田辺氏:一番重要なことは、せっかく日本のファンの皆さんが楽しみにして来てくださっているのに、土曜日走れないということを申し訳なく思っている。自分がファンであれば楽しみにして来ているだろうから、本当にがっかりすると思う。またホンダとしても、地元レースで普通にセッションをこなしてと望んでいたのでがっかりしている。

──日曜日ワンデーになると何かリスクはあるか?

田辺氏:予選が終わってから全くトラブルがなければ何も影響はない。もちろんトラブルがないことを想定しているが、通常であれば何か予選でトラブルがあっても一晩あってレースなら時間があるので対処可能だが、ワンデーレースではそれがないので時間が無い状況になる、それがリスクと言える。

──ホンダが置かれている状況はマクラーレンと組んでいた時とは大きく変わったが、それを実感することはあるか?

田辺氏:私が担当するようになった去年も、トロロッソのユニフォームを着ているファンが沢山いるとチームの関係者がびっくりしていた。彼らの本拠地であるイタリアでもこんなことはないと。驚きと同時にうれしさを感じた。今年もまわりの人に聞くと、レッドブルのユニフォームを着ているファンの方が増えたと聞いている。そのように期待値が高まると一方で、その裏返しとしてプレッシャーが高まっている。ただ、プレッシャーはもっと頑張る燃料になっている。

──こうした地元GPでは会社の偉い人が来場したりなどして大変ではないか?

田辺氏:私は技術側の人間なので特に大丈夫だ(笑)。こうした囲み会見も普段は数名の方とやっているだけだが、今回の日本GPではこんなに多数の方に来ていただいて、質問に答えさせていただいている。また、ホンダのトップが来てくれたりすることは、それだけF1に注意してくれているということであり、現場の担当者としてはうれしいし励みになる。