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全車ハンコックタイヤ装着。富士スピードウェイで開幕したSUPER GTとDTMの特別交流戦。上位ドライバーが会見

2019年11月22日~24日 開催

左から、BMW最上位のマルコ・ウィットマン選手(11号車 BMW M4 DTM)、DTM王者でアウディのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)、SUPER GT王者の大嶋和也選手(6号車 WAKO'S 4CR LC500)、ホンダ最上位の塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)、ニッサン最上位の松田次生選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)

 SUPER GTとDTMの車両がイコールコンディションで戦う歴史的な戦いである「AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT x DTM 特別交流戦」(以下、特別交流戦)が、11月22日~24日の3日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。

 この交流戦は日本のSUPER GTと、ドイツのシリーズであるDTMが長い時間をかけてレギュレーションを統合してきた成果として、初めて両シリーズが日本で走る歴史的なイベントになる。ドイツからはアウディが4台、BMW3台の合計7台が来日し、SUPER GTからエントリーしている15台のGT500マシンと同じフィールドでレースを行なう。

 初日となった11月22日には、SUPER GT勢が普段使っていないハンコックのワンメイクタイヤをテストする「タイヤテスト走行」、SUPER GTとDTMマシンが混走して走る「フリー走行」などが行なわれた。この日の富士スピードウェイの天候は生憎の雨だが、SUPER GT勢にとっては課題と言われていたハンコックタイヤのウェットタイヤで多くの時間を走れたことは、明日以降の天候も雨になることを考えると、DTMとSUPER GTがイコールコンディションのレースが展開されるという意味では大きな意味があるセッションとなった。

 フリー走行終了後には、DTM、SUPER GTの5メーカーのドライバーの中でそれぞれのシリーズ最上位のドライバーが会見に呼ばれ、記者会見が行なわれた。

長年のSUPER GTとDTMのコラボレーションが実を結ぶ。歴史的な特別交流戦

ドイツのDTMの車両となるAudi RS 5 DTM

 今回行なわれる特別交流戦は、SUPER GTのオーガナイザーであるGTアソシエイション(GTA)とDTMのオーガナイザーであるITRが、車両のレギュレーションを1つ1つ合わせるなど長年取り組みを行なってきた成果の仕上げとして行なわれるものだ。両オーガナイザーが取り組んできたレギュレーションの統一は「クラス1」と呼ばれる規定として完成し、DTMでは2019年から、SUPER GTのGT500では2020年から導入される。すでにSUPER GTもほぼクラス1に準拠するようになっているため、両方のシリーズが1つのレースで戦うことが可能になったのだ。

 ただ、こうしたレースが行なわれるのは、実は今回で2回目になる。すでにドイツで行なわれたDTM最終戦で、SUPER GTから3メーカー(日産、ホンダ、レクサス)が1台ずつ持ち込んで、DTMの公式戦にDTM車両と混ざってレースを行なっている。今回のレースはDTM、SUPER GTどちらもシリーズの1戦ではなく、スペシャルイベントとして行なわれることになっている。こうしたフォーマットのレースが日独共同して行なうのは歴史上初めてのことだ。

 両シリーズの車両は、DTMがクラス1に準拠し、SUPER GTもほぼクラス1に準拠しているため、基本的には性能調整などはなく、両シリーズの車両ともに持てる性能を持って戦うことになる。ただ、ホンダのNSX-GTだけはSUPER GTでもミッドシップが特認となっていることもあり、そのハンデウェイトを積んでのレースとなる。

 また、車両が共通になっても、スポーティングレギュレーションと呼ばれるレースのフォーマットだったり、細かなレースは両レースで異なっている。

 DTMは1時間のレース+1周(途中タイヤ交換だけのピット作業義務づけ、ドライバー交代なし)のスプリントレースで土日それぞれのレース、SUPER GTはタイヤ交換、給油、ドライバー交代ありのセミ耐久(通常のレースでは250~300km程度)となっているが、今回はDTMのフォーマットが採用されるが、通常DTMではスタンディングスタートになっているが、スタートはSUPER GT方式のローリングスタートになる。

DTMの車両にはDRSやプッシュトゥーパスが装着されているが今回のレースでは使われない

 また、DTMでは車両にF1でも装着されているDRS(前の車から1秒以内になるとウィングをより倒してオーバーテイクしやすくする機能)やスーパーフォーミュラでも採用されているプッシュトゥーパス(押すと一時的にエンジンパワーあげられるモードにできる)などが装着されておりこれをレースに利用することができるが、SUPER GT車両ではそれがないため、今回はDTM車両でもそれを使うことができない。

DTMで利用されるハンコックタイヤ

 タイヤはDTMではハンコックタイヤのワンメイク、SUPER GTではブリヂストン、ミシュラン、ダンロップ、横浜ゴムの4メーカーによるコンペティションとなっているが、今回はDTM側がハンコックとエクスクルーシブ契約(そのタイヤ以外では走れない契約のこと)をしているため、全車ハンコックタイヤのワンメイクで走ることになる。

 このため、11月22日に行なわれたフリー走行でも、SUPER GT勢とDTM勢が入り交じった結果になったり、普段と違うタイヤを履いていることもあり、普段はあまり上位には来ないようなチームが上位を走っていたりとなかなか興味深い結果になっている。

 なお、エントリーリストは下記のとおりで、通常は2人のドライバーで走っているSUPER GTは2人のドライバーが土日のどちらかを走り、DTMは1人のドライバーが土日の両方を走る。なお、1号車のジェンソン・バトン選手、17号車のベルトラン・バゲット選手は今回別のレースに出るために欠席になっている。それぞれ山本尚貴選手と塚越広大選手が土日両方を走ることになる。なお、レースは土日それぞれに予選と決勝が行なわれるワンデー形式となる。

カーナンバーマシン第1レースドライバー(土曜日)第2レースドライバー(日曜日)
00BMW M4 DTM小林可夢偉小林可夢偉
1RAYBRIG NSX-GT山本 尚貴山本 尚貴
3CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rフレデリック・マコヴィッキ平手 晃平
4BMW M4 DTMアレッサンドロ・ザナルディアレッサンドロ・ザナルディ
6WAKO'S 4CR LC500山下 健太大嶋 和也
8ARTA NSX-GT伊沢 拓也野尻 智紀
11BMW M4 DTMマルコ・ウィットマンマルコ・ウィットマン
12カルソニック IMPUL GT-R佐々木 大樹ジェームス・ロシター
16MOTUL MUGEN NSX-GT武藤 英紀中嶋 大祐
17KEIHIN NSX-GT塚越 広大塚越 広大
19WedsSport ADVAN LC500坪井 翔国本 雄資
21Audi Sports Japan RS5 DTMブノワ・トレルイエブノワ・トレルイエ
23MOTUL AUTECH GT-Rロニー・クインタレッリ松田 次生
24リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rヤン・マーデンボロー高星 明誠
28BMC Airfilter Audi RS 5 DTMロイク・デュバルロイク・デュバル
33Audi Sports RS 5 DTMレネ・ラストレネ・ラスト
36au TOM'S LC500関口 雄飛中嶋 一貴
37KeePer TOM'S LC500ニック・キャシディ平川 亮
38ZENT CERUMO LC500立川 祐路石浦 宏明
39DENSO KOBELCO SARD LC500中山 雄一ヘイキ・コバライネン
64Modulo Epson NSX-GT牧野 任祐ナレイン・カーティケヤン
99Akrapovic Audi RS 5 DTMマイク・ロッケンフェラーマイク・ロッケンフェラー

ハンコックタイヤを初めて試す大嶋選手と塚越選手は、最初の感触はわるくないと評価

 そうしたフリー走行の終了後には、DTM、SUPER GTの5メーカーのドライバーの中でそれぞれのシリーズ最上位のドライバーが会見に呼ばれ、記者会見が行なわれた。出席したのはDTM王者でアウディのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)、BMW最上位のマルコ・ウィットマン選手(11号車 BMW M4 DTM)、SUPER GT王者の大嶋和也選手(6号車 WAKO'S 4CR LC500)、ホンダ最上位の塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)、ニッサン最上位の松田次生選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)。

──それぞれのメーカーでトップの成績を残したドライバーに来てもらっている、それぞれのシーズンを振り返ってもらいたい。

レネ・ラスト選手

レネ・ラスト選手:ここに来れたことは本当に嬉しいし、クールなことだ。今年は2回目のチャンピオンを取れて、いくつかの記録を作ることもできた。すべての週末をスムーズに過ごせるなど、アウディにとって成功したシーズンだったと言って良い。SUPER GTの車両と日本で走ることは、それぞれにとって夢だったことだから、それが実現して嬉しい。

マルコ・ウィットマン選手

マルコ・ウィットマン選手:ここに来ることができて本当に嬉しい。シーズンは悪くはなかったが、浮き沈みが激しくもあった。最初のシーズンに勝てて、ランキング3位で終われたことはよかった。レネとアウディが強いシーズンで大変だったけど、来シーズンに向けてこの冬に開発を続けて、来年は雪辱を果たしたい。今週末は天候は心配だけど、レースを楽しみたい。

大嶋和也選手

大嶋和也選手:今シーズンはエンジニアもチームメイトも変わって新しいシーズンに臨んだ。チームは長い間優勝から遠ざかっていたので、まずは優勝をターゲットに、やってきたが、第4戦と第5戦と連勝して、それからは目標を高く持って、チャンピオン獲ろうと戦ってきた。それからのパフォーマンスも高くて、チャンピオン獲れて本当に嬉しく思っている。今週末は日本のチャンピオンとしてDTM勢に負けないように頑張りたい。

塚越広大選手

塚越広大選手:今シーズンはバゲット選手が加入して新体制で臨んだが、シーズン前半は安定した結果を出すことができず、ポイントを積み重ねることができなかった。その結果としてチャンピオンを獲ることが難しくなってしまった。その反面、オートポリス、スポーツランドSUGOのレースでポールを取れたのは自信になった、特にSUGOではSUPER GTが速くなってきたことを形としてタイムを刻めたことはよかった。バゲット選手も出たがっていたが、別にGT3のレースがあるということで出場できなくなってしまい残念がっていた。彼の分まで頑張らないといけない。日本でやる以上、DTM勢には負けていられないと思っている。

松田次生選手

松田次生選手:昨年はランキング8位と苦しい展開だったが、今年チャンピオンをとるために総力戦で今シーズンに臨んだ。ポールや表彰台には4回登るなどしてランキングも8位から3位になったが、レクサス勢が強かった。その中で3位になったのはいい実績になったと思うので、それを来年に生かしたい。交流戦に関しては、DTMとドイツで走って(その時は厳しい結果だったが)ここ富士では路面はドイツとは違ってグリップも高いし、いいバトルができればいいと思っている。

──明日からの交流戦に向けた意気込みを

ラスト選手:ホッケンハイムのDTM最終戦ではSUPER GT勢は苦しんでいたが、今回の練習走行を振り返ってみると、タイムが近くなってきていると感じている。FP1は日本勢が速く、FP2では我々も慣れてきてタイムをあげることで来て、少しアドバンテージがある状況になった。逆に我々はドライだと少し苦戦している。週末は本当に天候次第だと考えている。イコールコンディションになるといいが、どうなるかはまだわからない。どちらにせ、いいレースを見せたいと考えている、観客にいいショーを見せたいんだ。SUPER GTとDTMが一緒に走ることができるということを証明しないといけないと思うからだ。

ウィットマン選手:一緒にレースができることは本当に素晴らしいことで、やっとそれが現実になった。僕ら(BMW)はちょっと苦戦している、特にウェットは難しい。現時点では状況は厳しいけど、明日、明後日は性能を改善して、良い週末をして、SUPER GTといいレースがしたい。

ラスト選手とウィットマン選手もシーズンには関係ないレースということもありリラックスモードだった

大嶋選手:今回始まる前は、DTMが速いと思っていたが、昨日のドライでは戦えそうだなと感じたが、ウェットになってからはDTM勢がきている。今日はアクシデント、トラブルがあってあまり走れなかったけど、レクサス勢で力をあわせて戦って行きたい。

塚越選手:SUPER GTのレースで、車種が増えて、台数が増えるのはすごくうれしいなぁと思って見ていた。ホッケンハイムの結果を見る限り大変そうだというのは理解していたが、日本側やるのだから負けられないなというのはある。来季はNSXがFRになるので、現在のミッドシップは最後のレース。有終の美を飾れるようにホンダ勢が一丸となって結果を残したい。イベントが成功するようによいレースを見せることができるように頑張りたい。

松田選手:DTMの車両とSUPER GTの車両はDRSだったり、DTMで使っている車と比べると異なる部分がある。ラスト選手が言ってたとおり、GTとDTMが一緒に走ることが大事。お互いにしっかりレースをして、何が足りないかということを、このレースで、DTMとGTAが話あって、ガチガチあたるというレースよりかはクリーンなレースができればと思っている。

──ハンコックを初めて走らせる塚越選手と大嶋選手、率直な印象を教えて欲しい。

大嶋選手:思っていたよりも、グリップも高くて、タイヤがしっかりしてて変な動きはない。そんなに乗りにくいなという印象はないが、縦方向に比べて横方向のグリップが足りないなという印象があってそこは調整する必要があった。ドライはつかめた気がするけど、ウェットはまだわからない。

塚越選手:大嶋選手と同じで予想していたよりはスムーズに走れた。走りだしから、順調には乗れていて、コントロールタイヤとしては素晴らしいタイヤなんじゃないかと。その反面、改めてSGTのタイヤの競争のすごさも改めて感じた。ドライもレインも、まだつかみ切れていない部分もあるので、セット変更に関しては素直に反応するので、どうやっていいところを見つけようという試行錯誤の段階。SUPER GTで他のタイヤを履くことはできないので、今後SUPER GTに戻ったときにいいタイヤを作る勉強になったかなと思っている。

──松田選手にホッケンハイムでの経験が生かされている部分はあるか?

松田選手:基本的には日本で走っているベースがあるので、ホッケンハイムで勉強したベースセットの中間ぐらいを狙ってやっている。ウェットに関しては悪くないけど、ドライはどうかなと思っているところ。晴れたらどうするかはまだ悩んでいる。