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ZFジャパン、日本の高速道路で自動運転レベル2+をデモ。日本で最新試験車両を公開

MobileyeのEyeQ4搭載

ZFジャパンが公開した、レベル2+の自動運転システムを組み込んだ試験車両

 大手サプライヤー「ZF(ゼットエフ)」の日本法人「ゼット・エフ・ジャパン」は、11月18日~11月22日までの5日間にわたって、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)において「Vision Zero Days Japan」と題した試乗会を開催した。Vision Zeroは交通事故ゼロおよびゼロ・エミッションのモビリティを目指す同社の追求目標。Vision Zero Days Japanには国内自動車メーカー9社から約250名が参加し、同社が提供する自動運転、電動化、統合安全、車体の4つの領域の最新テクノロジを搭載した自動車の試乗などを行なった。

 このイベントに合わせてゼット・エフ・ジャパンは同社 代表取締役社長 多田直純氏による記者会見を行なったほか、空飛ぶ絨毯のような乗り心地という意味を込めた同社のダンパー技術などを応用した「フライングカーペット2.0」試乗車などを公開した。

 また、同社が開発している自動運転レベル2+を実現した最新のテスト車両を持ち込み、実際に日本の高速道路上でも自動運転を行なえる様子を公開した。

高速道路上でレーンチェンジを含めた自動運転ができるようになっているZFのレベル2+のシステム

高速道路上でハンズオフ運転を可能にしているレベル2+での自動運転の様子

 今回ZFがVision Zero Days Japanで公開したのは、レベル2の自動運転システムを搭載したAudi A4ベースの車両と、レベル2+の自動運転システムを搭載したオペルのInsigniaベースの車両。いずれも同社がベース車両を元に、レベル2、レベル2+のシステムを組み込んだ車両となる。

MobileyeのEyeQ4ベースの単眼カメラ
前面には中央の見えないところにミッドレンジのレーダーと左右にショートレンジのレーダーを装着している
リアには左右にショートレンジのレーダーが装着されている
リアに積まれたコンピュータシステム、これだけ大きいのは開発段階のため

 レベル2+の車両に関しては、MobileyeのEyeQ4をCVの処理チップとして利用している画角100度の単眼のカメラを用意しており、クルマの前後左右4か所につけられたショートレンジのレーダー(Hella)と、クルマの前方中央につけられたAC1000というミッドレンジのレーダーをセンサーフュージョンし、常時クルマの周囲360度を把握しながらシステムがステアリングやブレーキを制御することができる。このため、高速道路上で直線などでのハンズオフ運転やシステム主導の車線変更などができるようになっている。

自動運転中の様子、タブレットに表示されている周囲の様子で前方右にいるクルマがリアルタイムに反映されている

 今回は雨という悪天候で、自動運転システムにとってはより厳しい条件でのテストになったが、高速道路に入り自動運転モードが有効になった後で工事区間を通過した。今回走った東名高速道路では雨天時は80km/hの速度制限になっていたが、途中に40km/hに速度が制限される区間があると、システムは自動で速度制限が40km/hになったことを認識した。スタッフによればカメラでそうした速度標識を認識し、それに応じてシステムが速度を調整するという。

 高速道路の出口では「Take Over」(運転を代われという意味の英語)が表示され、ドライバーへと制御が移行され、通常のドライバーが運転する状態へと移行した。

本線から出口へ向かうところ、この後先にある40km/hの速度制限の標識を認識し、減速とドライバーへの権限委譲が通知された

低コストで高品質なレベル2自動運転を実現するカメラ+レーダーのシステム

レベル2自動運転システムを組み込んだ試験車両

 レベル2自動運転車両は、同じくEyeQ4ベースのモノラルカメラとミッドレンジのレーダーになるMMRGen21から構成されていた。カメラとミッドレンジのレーダーを組み合わせてフュージョンし、クルマの前方の様子をモニタリングしてドライバーの運転をアシストする。なお、搭載されていたレーダーは開発中のもので、かなり大きかったが、ZFの関係者によればすでに量産となっているバージョンを利用するとコンパクトにできるとのことだった。

カメラ、2つあるように見えるが1つはドライブレコーダー
ミッドレンジレーダー
量産品はこのようにより小さくなっている
コンピュータシステム

 車両の制御範囲はレベル2+に比べるとより狭く、ステアリングやアクセル、ブレーキなどの制御は行なわれるが、車両後方などに関しては見えていないので、自動レーンチェンジなどの仕組みは用意されていない。実際に走行していると、横のレーンをトラックが走行していくと、システムがそれを認識している様子などを確認することができた。

レベル2のシステムが前方を把握している様子

 なお、いずれのシステムも現状ではかなり大がかりなコンピュータシステムを搭載しており、リアのトランクはそのシステムで一杯だった。しかし、すでにZFはPro AIと呼ばれる小型の自動運転用ボードを開発しており、それらを利用すれば将来的にはかなりコンパクトなシステムにすることが可能になる。現在は開発中ということで、ソフトウェアだけを簡単に変更できるようにこういう大がかりなシステムになっているということだった。