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三菱自動車、ゲヒルン、スカパーJSATが共同制作した「特務機関NERV災害対策車両」完成秘話
開発のきっかけは東北大震災だった
2019年12月24日 08:00
- 2019年12月23日 発表
三菱自動車工業、ゲヒルン、スカパーJSATは12月23日、3社が共同製作した災害対策車「特務機関NERV 制式 電源供給・衛星通信車両 5LA-GG3W(改)」を公開。2020年2月1日に東京エリアで「初号機」、札幌エリアで「弐号機」を運用開始予定と発表した。
本プロジェクトは、ゲヒルンの石森代表が発起人。自身は2010年からアニメの「エヴァンゲリオン」シリーズの作品中、敵の襲来に「警報」を発令する組織「特務機関NERV(ネルフ)」にインスパイアされ、同名のTwitterアカウントを開設して、さまざまな警報や防災情報をリアルタイムで独自に発信してきた。そして2011年3月に発生した東日本大震災を機に認知が広がり、それ以降はエヴァンゲリオン版権元に公認された非公式アカウントとして活動を続けている。
また、石森氏が東北大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市の出身で、震災直後すぐに現地に駆け付けたところ「情報連携の遅さ」と「住民の勘違い」が原因で、より被害が大きくなったと痛感。そこで「1人でも多くの人に迅速に防災情報が行き届くように」と、今は地震だけでなく、気象警報、電車遅延などの生活情報も速報で発信している。
この情報配信をするうえでもっとも重要になるのが電源で、現在は東京を起点に北海道や大阪などサーバーなどのバックアップ設備を整えているゲヒルンだが、それでも100%安心とは言えず、今回移動できる電源を確保するプロジェクトを起動。震災直後の荒れた道路でもしっかりと走れる走破性、大量の電源を保持できる大容量バッテリーの搭載(計算ではガソリン満タンで1家族の約10日分の電力を供給できる)、AC100Vコンセントを2口搭載していて計1500Wの電力を取り出すことが可能、エンジンで発電できるハイブリッド車である、車体の安定性とメンテナンス性など、さまざまな困難環境に打ち勝つ要素を持ちあわせている「アウトランダーPHEV」をベース車両に選定したという。
もちろん、搭載する通信モジュールに関しても、17機の衛星により全国どこでも安定してインターネットに直ぐに接続できる、車載に適しているコンパクトサイズの平面アンテナ、システム自体の操作やメンテナンスが比較的簡単、予算も既存品に比べたら安価に押さえられると、多くの条件の中で、安定したWi-Fiサービスの提供を可能とするスカパーJSATのシステムを選択。
そしてこの石森氏の提案に、三菱自動車とスカパーJSATが共感、3社の協力体制により2019年3月の立ち上げからわずか9か月たらずで、災害による長期停電や通信網の途絶時でも、防災情報配信サービスを継続でき、近隣自治体への支援も可能とする災害対策車として仕上げた。
さらに、内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室から準天頂衛星「みちびき」を利用した衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の端末の貸与を受けて、みちびきを利用した災害用通信も確保したことで、本プロジェクトの3つの狙い「自助」「共助」「公助」を実現する。今後はこの車両をモデルケースとして提案して、全国の自治体やさまざまな企業との連携と普及を目指したいという。