試乗インプレッション
“2019年モデル”に進化する三菱自動車「アウトランダーPHEV」プロトタイプをサーキット走行でチェック
ランエボで言うなら“エボX”くらいまで来た!?
2018年7月20日 10:00
三菱自動車工業の稼ぎ頭である「アウトランダーPHEV」は、2013年の登場以来、この2018年5月までに全世界で15万8365台を販売したそうだ。そのうち日本は4万2815台と大健闘。他にはないSUVタイプとして世界初となるプラグインハイブリッド車という独自の立ち位置はゆるぎないもののように感じる。だが、三菱自動車は現状に甘んじることなく、さらなる飛躍を決意。間もなくパワーユニットをはじめ、あらゆる領域を進化させた改良型のアウトランダーPHEVを発売する。
2019年モデルとなるであろうプロトタイプの試乗が許されたのは、袖ヶ浦フォレストレースウェイというサーキット。SUVでサーキットとはさすがは三菱自動車。とはいえ「発表前だからクローズドコースなんですよ」というのがお約束なのだが、聞けば「存分に味わっていただいても大丈夫ですよ」という。それほどクルマに自信があるのだろう。
新生アウトランダーは、エクステリアからインテリアまで質感アップを果たしたことは写真を見ても分かるとおりで、詳細はそちらをご覧いただきたいと思う。それ以上に変化しているのがパワーユニットの大幅な改良だ。エンジンは2.0リッターからアトキンソンサイクルを採用した2.4リッターへと拡大。エンジンを高効率に使えるよう、エンジン回転数を引き下げることが狙いのようだ。加えてエアクリーナーボックスからマフラーまで防音対策を見直し、静粛性にもこだわったところがポイントの1つだ。そのほか、ジェネレーター最大出力+10%、駆動用バッテリー容量+15%、バッテリー出力+10%、リアモーター出力+10kWを達成。部品の約9割を変更したという。おかげでエンジンが始動しにくくなり、ここでも静粛性に寄与。EV航続可能距離は60kmから65kmへ。EV走行領域も拡大され、最高速は125km/hから135km/hに引き上げられている。
一方でシャシーやボディ、そして4WDシステムの「S-AWC」についても今回は大幅に改良している。まず、ボディについては2017年モデルの「S Edition」でリアまわりに用いていた構造用接着剤を、どのグレードにも追加しつつ使用領域を拡大。以前はリアフェンダー内側やテールゲート両サイドに終わっていたものを、前後ドアの開口部にも流し込んだ模様。足まわりについては、ビルシュタイン製を採用しないモデルにも改良が加えられている。これは主にショックアブソーバーのピストン径を引き上げたところがポイント。2013年モデルがフロント30mm、リア28mmだったのに対し、2016年モデルではフロント32mm、リア30mmとなったが、2019年モデルではさらに奢りフロント35mm、リア32mmにしたという。その上でステアリングのギヤ比をクイック化。スポーティなハンドリングが期待できそうだ。
S-AWCについては「SPORT」モードと「SNOW」モードを追加することで、走行性能をさらに引き上げようとしている。SPORTモードを選択した場合、トルク特性もシャープになるが、それに合わせて駆動力配分をリア寄りにして積極的に曲げていこうとしている。これによってヨーレートはより高く発生し、曲がりやすくなるということのようだ。一方でSNOWモードはトルク特性を穏やかにしてコントロールしやすくするほか、リアへのトルク配分はSPORTほど積極的には行なわないようにセットされている。
サーキットを存分に味わえる走りはお見事!
今回は2017年モデルのS Editionから試乗を開始し、続いて2019年モデルのベースとも言える「G Plus Package」、最後に2019年モデルのS Editionに乗るスケジュールとなった。まず、改めて2017年モデルに試乗してみると、これはこれで熟成されているようにも感じる。これ単体で乗ればわるくはないし、狙いどおり動くようにも感じるのだが……。ただ、以前に一般道で試乗した際は、荒れた路面でハーシュネスがきつかったりしたことを思い出した。もう少しボディがしっかりしていればな、と思ったものである。
その後に2019年モデルのG Plus Packageで走り出すと、まず驚いたのが確かに静かになっていることだった。エンジンを遠く感じるような錯覚にさえ陥るほど。ただ、インバーターなどの音が若干目立った感覚があるのは気のせいではないだろう。あちらを静かにすればこちらがうるさくなる、というのはよくある話。今後はそんなところも気を遣ってほしいところだ。
パワートレーンについては力強さが全領域で増した感覚があり、無駄にアクセルを踏まずして速度が増していくような感覚があるところはマル。フットワークはストロークする感覚が豊かになっており、路面からの入力をうまくいなしてくれている。それでいてクイックにレスポンスするステアリングがあるから、クルマが小さく感じる。キビキビとした中に豊かな乗り心地がある、そんな感触なのだ。質感は明らかに引き上げられ、見た目どおりの乗り味が展開されているとでも言えばいいだろうか? いずれにせよ、かなり大人な感触の1台になったというのが正直なところだ。
最後に乗ったS Editionは、足まわりが引き締められ、無駄な動きが少なくなっているところがあいかわらずウリのようだ。SUVにも関わらずサーキットを存分に味わえるその走りはお見事! SPORTモードに入れれば、狙ったラインよりも内側に立ち上がる駆動配分を見せつけてくれる。リアモーター出力の向上はこんなところにも役立つのかと、改めて感心させられるところだ。感覚的だが、クルマの車体半分くらい内側のラインを通れるS-AWCのセッティングは絶妙としか言いようがない。SUVでここまでできるなんて思いもしなかった。これが“新生アウトランダーPHEV”の実力だ。これは何も限界域の話ばかりではない。このSPORTモードは普通に走ったとしても、確実に安全にコーナーをクリアするツールとして役立つに違いない。
SUVであることを言い訳にせず、まるでランエボのように進化を続けるアウトランダーPHEVは、ランエボで言うところのXくらいまで来たような気がする。ステージを変えて発進したこのクルマは、次にどんな世界を見せてくれるのか? 公道で走れることも楽しみだし、これからの販売台数がどう飛躍していくのかも期待しておきたいところだ。