試乗インプレッション

ポルシェ「718 ボクスター GTS」、乗り心地を損なわない2シーターオープンスポーツの実力

スポーツマインドを掻き立てるサウンドに心酔

どうです?乗り心地

 ポルシェに乗って人妻と旅をするシリーズ(?)第2弾は、ポルシェ「718 ボクスター GTS」がパートナーとなる。前回は「パナメーラ スポーツツーリスモ」ということもあり、同乗者には後席を味わってもらったわけだが、今回は2シーターだから同行するイラストレーターさん(人妻)はもちろん助手席へご案内。密着空間が楽しめる!? もとい、2人で密な会話が楽しめるかもしれない(笑)。本当はスポーツカーすぎて不満を言われないかがドキドキだったりもする。

 だがしかし、ボクスターは改めてよくできていると感じた。2人の荷物は前後のラゲッジにそれぞれ別個に搭載することが可能で、僕の機内持ち込み可能なサイズのスーツケースはフロントへ、イラストレーターさんの荷物はリアへ積むことに。それでも互いの空間にはまだ余裕が残されているのだから嬉しいところ。2シーターのオープンスポーツというと、荷物は二の次とされそうだが、これなら何泊かの旅でも十分対応してくれる。帰りにお土産が追加になったとしてもOKだ。

 これでオープンドライブが楽しめれば最高……。だが、外はあいにくの雨。仕方なく幌を開けることもなく軽井沢の街をスタートした。前後20インチを装着、そしてポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメントシステム(PASM)を装着して、車高を「S」モデルに対して10mm低くしたというこのGTS。果たしてイラストレーターさんからは不満が出ないのか、しばらく無言で軽井沢の街を走るが……。

 無言だったのは何も人妻が何と言うか不安だったわけじゃない。あまりに快適に、そしてしなやかに街中を駆け抜けたからである。このモデルのスペックを聞けばドタバタと走るのだろうと誰もが想像するだろうが、そんなマナーのわるさは一切ないのだ。それを確認した後に「どうです?乗り心地」と聞けば「やっぱりポルシェって乗り心地いいんですね」と返されたのだから大成功。そう、ポルシェは街中であってもやっぱり凄かったのでありました。

軽井沢往復の小旅行、後半は水平対向4気筒 2.5リッターターボエンジンを搭載する「718 ボクスター GTS」の6速MT仕様(1032万円)をテストドライブ。エンジンの最高出力は269kW(365PS)/6500rpm、最大トルクは420N・m/1900-5500rpm。0-100km/h加速は4.6秒
ブラウンカラーのソフトトップを開閉したところ。ボディサイズは4379×1801×1272mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2475mm。6速MT仕様の車両重量は1375kg。「スポーツクロノパッケージ」に加え、機械式リアディファレンシャルロックを備えた「ポルシェ トルクベクトリング プラス(PTV Plus)」、車高を10mm低く設定する「ポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメントシステム(PASM)」などを標準装備。ボディカラーはグラファイトブルーメタリック
エクステリアでは、フロントに新デザインのスポーツデザインエプロンを採用するとともに、フロントライトモジュールとバイキセノンヘッドライトはGTSモデル特有のブラック仕上げとした。足下ではブラック(サテンフィニッシュ)に塗装された20インチホイールにミシュラン「パイロットスポーツ4」(フロント235/35 ZR20、リア265/35 ZR20)を組み合わせ、ブレーキシステムは前後に対向4ピストン式アルミニウム製モノブロックキャリパーとドリルドディスクを採用
リアまわりではティンテッドテールライトのほか、ブラック塗装のロゴやリアエプロン、スポーツエグゾーストシステムのテールパイプなどが特徴的
インテリアではステアリングホイールトリム、センターコンソール、アームレストなどにアルカンターラを採用。スポーツクロノパッケージのストップウォッチがダッシュボードに配置されるほか、センタートリムにアルカンターラを用いたスポーツシートを標準装備する

何もガマンを強いられることのない造り込み

 後に碓氷峠の旧道を走ろうと、狭苦しいワインディングに突入する。濡れた路面にも関わらず、365PSを発生するGTSのユニットである。Sに対して15PS、旧モデルに対して35PSも引き上げられたというユニットを解放して大丈夫か? そんな心配をしたが、やはりというか、当然ながら全開をできるような状況は訪れず。だが、そんな状況だからこそこのユニットの凄さというか、調教された状況が伝わってきたことも事実。ターボラグを感じることもなく、けれども高回転への伸び感が素晴らしいことも理解できた。

 ターボの存在を感じることなく、自然吸気エンジンかのように軽やかに吹け上がるそのパワーユニットは、なかなか心地いい。それでいてスロットルをOFFにすればパンパンと弾けるような演出も繰り返されるなど、スポーツマインドを掻き立ててくれるところは大満足。これなら飛ばさなくても気持ちいい。さらには、路面の状況を肌で感じさせてくれるステアリングフィールもよし。ポルシェって、やっぱりこういう感触がよくできているんだなと、改めて感じることができた。

 ワインディングを抜けて高速道路に入ろうとしたところで、ちょっと雨がやんできた。ETCレーンを通過したところで、思い付きでルーフを跳ね上げてみた。高速域ならちょっとくらい雨が降ったところで、室内に雨が入るようなことはないだろうと読んでいたからだ。

 すると狙い通り! オープンで走れば前述した弾けるサウンドも、突き抜けるような高回転の音もダイレクトに感じることができ、ボクスター GTSの世界を存分に味わうことが可能。合流路で全開にしてみたが、加速感はなかなか鋭い。0-100km/h加速4.6秒、最高速290km/hはダテじゃなさそうだ。風の巻き込みも少なく、助手席から文句の声が出なかったところもさすがである。

 このような爽快な走りがありつつ、実用面もきちんとできているところ、それが718 ボクスター GTSの素晴らしさ。ポルシェであっても、2シーターであっても、何もガマンを強いられることのない造り込みには、パナメーラ スポーツツーリスモ同様、やっぱりただ感心するばかりだった。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一