試乗インプレッション

これぞオールラウンドスポーツカー。ポルシェ「パナメーラ スポーツツーリスモ」でロングドライブ

高速道路やワインディングなど、4 E-ハイブリッドもしっかりポルシェでした

後席3名乗車仕様のスポーツツーリスモ

 オールラウンドスポーツカーのデザインとコンセプトを持つという「パナメーラ4 E-ハイブリッド スポーツツーリスモ」に乗ってロングドライブに出かけた。行先は軽井沢。しかもイラストレーター様(人妻)とともに、である。ポルシェ、軽井沢、そして人妻。これぞ成功者の週末といった感覚を持つのはオレだけか!? いずれにせよ、ポルシェは借り物であり、軽井沢はたまたまロケに都合がよく、人妻はお仕事で同乗しているだけというのが本当のところ(当たり前)。いらぬ妄想が先走り過ぎているが、落ち着きを取り戻してひとまずクルマを見ていくことにしよう。

 すでに成功を収めたといっていいスポーツサルーンの「パナメーラ」をベースとしたスポーツツーリスモは、ワゴンというかシューティングブレークというか、とにかくルーフを少し引き上げてラゲッジスペースを確保した形をとったところが特徴的な1台だ。

 ルーフエンドにはセグメント初となる大型の「アダプティブエクステンディブルルーフスポイラー」が装着され、伸びやかなデザインを実現。このスポイラーは走行モードによって角度が調整され、リアアクスルに50kgのダウンフォースを追加することも可能。170km/hで自動的にアップするほか、スポーツ/スポーツ+モードを選択した場合は自動的にパフォーマンスポジションに動くらしい。また、パノラミックスライディングルーフを開くとルーススポイラーは+26度に調整され、それにより風切り音も軽減するというから面白い。いずれにせよ、ボディ形状を改めようとも走りに対する姿勢を変えるつもりはないようだ。

今回試乗したのはV型6気筒 2.9リッターツインターボエンジンを搭載するPHV(プラグインハイブリッド)モデル「パナメーラ4 E-ハイブリッド スポーツツーリスモ」(1521万3000円)。パナメーラ スポーツツーリスモは2017年のジュネーブモーターショーでプロダクションモデルが世界初公開された、5名乗車が可能なワゴンモデル。ボディサイズは5049×1937×1428mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2950mm
パナメーラ スポーツツーリスモのエクステリアデザインを担当した山下周一氏によれば、「ポルシェにとってすべてのクルマはスポーツカーでなくてはなりません。社内ではワゴンとは呼びません」とのことで、ラゲッジルームを増やしながら、いかにスポーツカーとして見せるかが課題だったという。それを解決したのがボンネットより高い位置にあるうねりのあるフロントフェンダー、後方に行くに従って傾斜したルーフライン、力強く幅広なリアフェンダーといったもの。足下はオプション設定の20インチホイールにミシュラン「パイロットスポーツ4」(フロント275/40 ZR20、リア315/35 ZR20)の組み合わせ

 ラゲッジ容量は520Lとパナメーラよりも20L大きくなったそうだが、今回のハイブリッドはバッテリーを床下に搭載していることもあって425Lとやや少ない。床下が見込めないハイブリッドモデルなら、このスポーツツーリスモのスタイルは必須となるのか!? ちなみに、今回は1泊2日分の荷物を積む程度だったから広すぎるくらいには感じた。まあ、これでも足りないならリアシートを折りたたむことも可能なわけだし、いずれにせよこれでラゲッジスペースが狭いなんていう人がいたなら、全く別のタイプのボディを選ぶべきだと勧めたい。それくらい十分な広さがそこにあったのだ。

パナメーラ4 E-ハイブリッド スポーツツーリスモのラゲッジ容量は425Lだが、40:20:40分割の後席を倒すことで1295Lまで拡大可能

 スポーツツーリスモのもう1つの特徴として挙げておきたいのは、後席が3名乗車に変更されたと言うことだ。パナメーラシリーズとしては初となるこの仕様は、センターコンソールをまたぐ形になることからも分かるように、あくまでエマージェンシー的なものといえる。また、乗降性が容易に感じたし、室内に入ってからも頭上空間に圧迫感がないところが好感触だ。これならロングドライブで後席に押し込まれたとしても文句はないだろう。

スポーツツーリスモのハイライトは後席が3名乗車になった点。インテリアカラーはブラック/ルクソールベージュで、ボーズサラウンドサウンドシステム、メモリー機能付き電動シート(前席)、断熱遮音プライバシーガラスといったオプションを装備。メーターパネル中央のアナログ式のレブカウンターは「ポルシェ 356」に敬意を示したもの

 パワートレーンはV6 2.9リッターで330PSを発生。それにモーター出力136PSが加わるというのだから贅沢だ。総合出力としては462PSだそうで、これでもシリーズ中では真ん中あたりのスペックというから驚くばかり。さすがはポルシェである。ちなみにハイブリッドを謳うが、実は充電することも可能。急速充電には対応していないが、自宅で充電して近所にお買い物くらいの使い方であれはEVとしても役立ちそう。つまりはPHV(プラグインハイブリッド)なのだ。

パナメーラ4 E-ハイブリッド スポーツツーリスモが搭載するV型6気筒 2.9リッターツインターボエンジンは最高出力243kW(330PS)/5250-6500rpm、最大トルク450N・m/1750-5000rpmを発生。これに136PS/2800rpm、400N・m/100-2300rpmのモーターを組み合わせ、総合出力は462PS/6000rpm、700N・m/1100-4500rpmとなる。0-100km/h加速は4.6秒

高速道路でもワインディングでも、さすがポルシェな乗り味

 ここまで完璧に仕上げられていると、どこかにアラがないかと探りたくもなるのだが、自宅から走り出せば、静かにまわりに迷惑をかけることなく住宅街を駆け抜けて行くのだからスマート! 街乗りにおいても急加速を行なわなければエンジンが荒々しくなることも少ない。ただ、唯一気になったのは停止寸前のブレーキのコントロール性。回生ブレーキとの協調が難しいのか、どうもギクシャクしてしまうのはコチラのウデ不足だろうか? あまりにデキがよいので、ちょっとばかしソコが気になった。

 だが、高速道路に入ってからは水を得た魚状態。約2.2tの車重をものともせず、豪快に速度を重ねていくのだから心地いい。そこにV6のキメ細かいエンジンフィールが加わるのだから気持ちもいい。矢のように突き進む直進性もなかなかだ。ピタっと安定しながらのクルージングは疲れを軽減させてくれる。これなら軽井沢も近く感じることができるだろう。

 ワインディングに突入してからの一体感ある走りはさすが。重たいボディをものともせず、当たり前のように思い通りに動き、狙ったラインを外さずにコーナーを駆け抜けるその様は、さすがはポルシェといったところ。碓井バイパスのような高速コーナーは得意とするところで、何も起きることがない安定感はなかなか素晴らしかった。

 後に細かなワインディングも走ってみたが、ボディの大きさを全く感じず、むしろ小さいのではないかと錯覚するような機敏な動きには、ただただ感心するばかり。これぞオールラウンドスポーツカーと言わんばかりの仕上がりがそこにあった。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一