インプレッション
ジェネレーション2.0に進化した三菱自動車「アウトランダーPHEV(2019年モデル試作車)」(雪上試乗)
新型2.4リッターエンジン+リアモーターをパワーアップ
2018年2月21日 17:08
1917年、三菱自動車工業(当時は三菱造船)は量産乗用車である「三菱 A型」を誕生させた。つまり、2017年で三菱自動車は乗用車の製造を始めて100周年を迎え、2018年は次の100年へと発進する年ということになる。それが理由なのかは定かではないが、今年の三菱自動車はかなりのヤル気だ。3月6日から開幕するジュネーブモーターショーでは新たな「アウトランダーPHEV」を発表。3月には「エクリプス クロス」を日本で発売する。今回はその2台を雪上で試すことで、三菱自動車のこれからを探ってみる。
本稿では北海道の新千歳モーターランドで試乗した、アウトランダーPHEV(2019年モデル試作車)の試乗内容について紹介する。
2013年1月の登場以来、全世界で14万台を販売し、世界で最も売れているプラグイン・ハイブリッドSUVとなったアウトランダーPHEVは、2015年に大幅なフェイスリフトを行なったことはあるが、これまで基本的なシステム構成に変更はなかった。だが、新たに投入される2019年モデルは、PHEVのシステムそのものを大幅に進化させているところがポイント。エンジン排気量を2.0リッターから2.4リッターへと拡大することで、エンジンを高効率に使える回転数を引き下げることに成功。吸排気系についても改良を施すことで、全体的に静かに効率よく走らせてやろうと狙っている。
「ジェネレーション2.0」と名付けられたPHEVシステムは、ジェネレーターの最大出力を10%アップ。駆動用バッテリー容量は+15%、出力は+10%になり、リアモーターの最大出力は+10kWになった。これにより、EV走行領域、シリーズ走行領域を拡大させている。また、EV最高速度は従来の120km/hから135km/hまで拡大しているところもポイントだ。燃費についての発表はないが、ここまで対策したのであれば、きっとそれも改善されているのだろう。
一方で車体側にも改良が施され、ボディには構造用接着剤をあらゆるところに追加、ステアリングのギヤ比をクイック化したほか、バネダンパーについてもサイズアップを図っている。加えてツインモーター4WDの「S-AWC」に新たに2つのドライビングモードを追加。「SNOW」と「SPORT」の2つがそれだが、前後の駆動配分のみならず、モーターのレスポンスを前後独立に制御して最適化するという。
飛躍的に走りが向上したことは明白!
これらの変更によってどう走りが変わるのか? 試作段階のクルマに乗って雪上コースを走り出す。すると、旧型に比べて明らかに静かに走り出すことをまずは確認できた。確かにエンジン回転は低いところを使っている感覚があり、アクセルを深く踏み込まなければモーターのみで走行できるシーンが多いことも理解できる。
シャシーの仕上がりも実にマイルドで、荒れた路面からの入力を見事に吸収しているように感じた。それでいてクルマはひとまわり小さくなったかのようにレスポンスし、コーナーのインを突いていく。上質に走りながらもスポーティさを忘れていない。根本から全てを見直したことで、飛躍的に走りが向上したことは明白だった。
さらに、SNOWモードでは低μ路でも走りやすさがあり、確かなグリップを発揮。SPORTモードは本来乾燥路向けのモードではあるが、試しに使ってみればリアの駆動を利用して、ややリアを発散させながらコーナーをクリアする姿勢を実現してくれる。アクセルで向きを変えられるこの動きは確かにスポーティ! ハイトのあるSUVでリアを発散させるとロールオーバーの心配があるかと思いきや、バッテリーをフロアに敷き詰めた低重心のおかげか、そんな不安な動きを予感させることは一切ない。さすがは低μ路を知りつくす三菱自動車ならではのセッティングだと感じずにはいられない。実にファンな仕上がりだと思う。
今、三菱自動車はS-AWCの未来を「e-EVOLUTION CONCEPT」で示している。アウトランダーPHEVの先を行く「Dual Motor AYC」をリアに搭載し、Triple motorで走らせていくPHEVがこのコンセプトモデルの根幹だが、それは近い将来、きっと僕らの前に表れることは間違いない。その時にきっと、かつてのランエボを超えるSUVが登場のではと睨んでいる。次の100年へ動き出した三菱自動車は、そんなワクワクが凝縮されている。今現在も、これからも、三菱自動車はまだまだ楽しませてくれそうである。