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スバル 中村社長、「本気で死亡交通事故ゼロを目指していく」。2030年の実現へ向け、技術シナリオ初公開

サイクリスト保護エアバッグも導入へ

2020年1月20日 実施

「本気で死亡交通事故ゼロを目指していく」と語った、株式会社SUBARU 代表取締役社長 中村知美氏

 スバルは1月20日、「SUBARU 技術ミーティング」を開催。その中でスバル 代表取締役社長 中村知美氏は、企業としての社会的責任として、2030年に死亡交通事故をゼロにすることを改めて表明。取締役専務執行役員 CTO 大拔哲雄氏が、新型アイサイトなどによる技術的道筋を示し、死亡交通事故ゼロに向けたロードマップを初めて明らかにした。

 スバル 中村社長は技術ミーティングにおいて、同社が2018年7月に発表した中期経営ビジョン「STEP」を詳説。その中の「企業としての社会的責任」で死亡交通事故ゼロにかける思いを伝えた。中村社長は「死亡交通事故ゼロに対する取り組みは10年前にアイサイトを開発してから言い出したことではありません。(死亡交通事故ゼロは)スバルのDNA、これに根ざした思想です。我々は航空機メーカーをルーツに持つ会社です。航空機には“絶対に落ちてはいけない”という安全を何より最優先にした設計思想が根本にあります。そしてその思想を受け継いだエンジニアたちが約60年前、スバル360を開発したときにも『クルマは人の命を乗せて安全に走るもの、だから安全を最優先に考える』という思想が反映されていました」と語り、その思いは今のスバルにも脈々と受け継がれているという。

 そして、「我々は本気で死亡交通事故ゼロを目指していく」と、力強く宣言した。

死亡交通事故ゼロ
STEP
2025年ビジョン
地球環境保護

 この「2030年に死亡交通事故をゼロにする」は、「スバル車乗車中の死亡事故およびスバルとの衝突による歩行者・自転車などの死亡事故をゼロに」という注釈は入っているものの、これまでもスバルから示されてきた。今回の技術ミーティングでは、中村社長の力強い言葉とともに大拔CTOから技術・ロードマップが説明され、スバルの本気度が明確になった。

他メーカーに比べ、死亡交通事故の少ないスバル車

死亡交通事故ゼロに至る技術ロードマップを明確にした株式会社SUBARU 取締役専務執行役員 CTO 大拔哲雄氏

 大拔CTOは現状を解説。米国はFARSデータ、日本は交通事故分析センターのデータをもとに、過去10年スバルは米国・日本において低い死亡交通事故率を実現してきたという。米国の主要販売ブランド平均と比べると約半分、国内においても1割程度下回る数字を示した。

 これまで行なってきたスバルの安全対策により確実に死亡事故が減ってきていることを示した上で今後の取り組みを説明。今後は、新型アイサイトなどADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先進運転支援システム)の高度化で65%削減、さらにAACN(Advanced Automatic Collision Notification、交通事故自動通報)と衝突安全の継続的な強化で残り35%を削減するという。

スバル車の死亡交通事故率は低い
安全技術
死亡交通事故分析
死亡交通事故ゼロに向けたシナリオ

 アイサイトは今後2段階で進化。2020年に発売する新型レヴォーグから搭載するとみられるアイサイトでは、広角化を図るとともに車体の4隅にコーナーレーダーを追加。交差点事故対応強化などを行なっていく。2025年以降にはAIと連動。AIによる認識判断力の向上などを図っていき、自動運転システムの導入も視野に入れる。

 AACNも2020年から投入としており、2025年以降にはアイサイトや、DMS(ドライバーモニタリングシステム)との連携を図って高度化していく。

 さらに衝突安全では、現在多くのスバル車に装備されている歩行者保護エアバッグに加え、自転車に乗っている人との衝突事故に対応するサイクリスト保護エアバッグも導入する。この歩行者保護エアバッグは、スバル車の新しいプラットフォームであるSGP(Subaru Global Platform)導入から可能となったもので、新型インプレッサから装備されている。歩行者保護エアバッグを収納する空間を確保する必要があるため、高級車でもなかなか装備できていない機能だ。スバルはその安全思想をさらに進め、サイクリスト保護エアバッグまで導入しようとしている。

 また、この衝突安全の部分では、シートベルトの拘束がきついためケガをする事例があるとし、衝突をさらに早くから予測することでシートベルトの拘束力の立ち上がり角度を抑えるというアイデアも示された。高齢者や子供などではシートベルトの拘束力よってケガをする(鎖骨骨折などの報告例はある)ことがあり、これを防ごうというものだ。

新型アイサイトなど
アイサイトのAI化
AACNの進化
サイクリスト保護エアバッグなどの導入

 ご存じのようにシートベルト拘束は、衝突した衝撃により人間が前方に急速に移動、その急速なシードベルトの移動を防ぐことで人間が前に飛び出すことを防ぐ仕組みから始まった。現在ではSRSエアバッグの装備が普及したことから衝突時の衝撃が検知できるようになり、衝撃を検知したら拘束を開始するプリテンショナーシートベルトに進化。スバルは、衝突を予測することで衝突するより早くシートベルトを動作させようとしているのだ。

 そのキモとなるのが、衝突予測を行なう前方監視装置、つまりアイサイトになる。アイサイトのAI化が図られるなかで、このような衝突予測も行なわれていくのだろう。AACNもアイサイト連動を将来構想として掲げており、アイサイトはスバルの安全技術の中心に位置付けられていることが分かる、大拔CTOのプレゼンテーションだった。