ニュース

スバル、ステレオカメラにこだわる新型「アイサイト」。広角化&4コーナーレーダーで渋滞ハンズオフ実現

2020年登場の新型レヴォーグに搭載

2020年1月20日 実施

「SUBARU 技術ミーティング」において明らかにされた新型アイサイトの概要

 スバルは1月20日、「SUBARU 技術ミーティング」において2020年代前半に実現する新型アイサイト、2020年代後半に実現するAIを用いたさらに先のアイサイト(以下、AIアイサイト)について紹介した。スバルのアイサイトは運転支援システムとして2008年5月に「レガシィ」シリーズの年次改良に合わせて登場。2010年5月に大幅に機能更新されたver.2では、「ぶつからないクルマ?」のキャッチコピーとともに先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems)、つまりADAS装備のクルマとして大きな話題と好調なセールスを記録。ADASが日本において一般化するきっかけを作り上げた。

 アイサイトのハードウェアは2014年6月に発売された現行「レヴォーグ」で約40%の望遠化、約40%の広角化を行なったほか、カラー&高画質化に加え3D画像処理エンジンの性能を向上したver.3へと進化。さらに現在では、ソフトウェア変更により、高速道路などすべての車速域でのステアリング連動車線中央維持機能も入った「アイサイト・ツーリングアシスト」となった。このアイサイト・ツーリングアシストは、MT仕様を除くスバル車に装備され、高度な運転支援機能を手軽に利用できる。

安全に対する思いを語り、スバルの今後を示す株式会社SUBARU 代表取締役社長 中村知美氏

広い視野を持つ新型アイサイト

「SUBARU 技術ミーティング」で明らかにされたのは、ver.3改良版である「アイサイト・ツーリングアシスト」の次のアイサイトについて。仮にこのアイサイトを新型アイサイトと呼ぶことにするが、この新型アイサイトでは「交差点事故対応強化」「高速道運転支援の拡大」「ステレオカメラの刷新、視野拡大、データ処理能力アップ、全周囲センサ協調」が行なわれるという。

 具体的には、アイサイトの広角化を行ない広い視野を確保。さらに車体の四隅にコーナーレーダーを配置することで、周囲の判断も行なっていく。現在のアイサイト・ツーリングアシストでは、純粋にアイサイトのカメラ情報だけで同一車線内を走行しているが、新型アイサイトでは「デジタル地図により走行位置を検知」とあることから、車線情報やコーナー予測などに地図連動が盛り込まれていくと思われる。

スバルの技術について詳細な説明を行なった株式会社SUBARU 取締役専務執行役員 CTO 大拔哲雄氏

 これらの機能アップにより、「車線変更支援」「カーブ予測自動減速」「渋滞ハンズオフ」を実現。アイサイト・ツーリングアシストではできなかった、新たな機能が盛り込まれていく。

 この新型アイサイトのポイントは、4つのコーナーレーダーが車体四隅に追加されるになることだという。少ないデバイス追加で、「渋滞ハンズオフ」までの機能を追加していく。

アイサイトの事故回避機能の進化
運転支援機能の進化
ステレオカメラへのこだわり

 これができた理由として、現在のアイサイトのステレオカメラでは見えている部分は多いものの、衝突防止などに必要な情報を優先して処理しているため、プロセッサの処理能力の問題から捨てている情報もあるとのこと。この使う情報、使わない情報(当然、ノイズ情報もある)を取捨選択していくのが各社の腕の見せ所になる。

 スバルでは、新型アイサイトでは現在よりも強力なプロセッサを用いることで、より積極的に情報を処理。すでに今のアイサイトで見えている部分も多いことから、ステレオカメラ+コーナーレーダーというパッケージで「渋滞ハンズオフ」などの機能を実現していく。

AIアイサイト

 新型アイサイトは近い未来のアイサイトとなるのだが、技術ミーティングではその先のアイサイトの方向性も示された。2020年代後半に実現するというアイサイトでは、ステレオカメラとAIの融合を図る。ステレオカメラであれば、距離情報を持った画像を常に生成しており、そこにAIを採り入れることで、認識、判断の能力を高めていく。

 AIを採り入れることで生存空間(クルマが進んでもぶつからないエリア)の算出は容易になる、例えば車線をもとに判断する従来技術では難しかった、雪の積もった道路においても生存空間を算出でき、走行領域として同定できるようになる。技術ミーティングでも、その可能性がデモされ、さらに周囲のクルマの走行進路予測の可能性についても示された。

AIを採り入れたAIアイサイト

アイサイトはステレオカメラにこだわる

 この「SUBARU 技術ミーティング」において特徴的だったのは、「アイサイトは、ステレオカメラにこだわる」という将来の方向性がハッキリ示されたことだ。技術ミーティングでは随所に“スバルらしさ”という言葉が登場していたが、アイサイト=ステレオカメラも“スバルらしさ”であると打ち出していた。

 現在、ADAS市場においては単眼カメラ、いわゆるモノアイのADASユニットを装備する例が増えてきている。このモノアイでは1枚画像では距離が分からないため、特徴量抽出を行ないつつクルマが移動することで得られる差分追跡から物体の距離を算出。プロセッシングユニットが高度化するに伴ってモノアイでも十分な性能を発揮できるようになり採用例が増加してきた。

 一方、スバルは初代アイサイトを発売する以前から、ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)としてステレオカメラを用いた運転支援システムを構築。ステレオカメラの使いこなしについて豊富なノウハウがある。一方デバイスとしてみた場合、ステレオカメラは場所を取る、イメージセンサーが2つあることによるコスト上昇、製造精度確保の難しさなどがあり、スバルについても「ステカメからモノアイになるのでは?」という憶測が一部で流れていた。今回の「SUBARU 技術ミーティング」では、2020年代はステレオカメラでいくと宣言しており、このような憶測に終止符を打った形だ。

 また、ADASのトレンドもイメージセンサーの低価格化により、モノアイシステムであれば、画角52度、画角28度、画角150度のモノアイを3つ載せた3眼カメラの「Tri-Cam(トライカム)」などが登場しており多眼化の方向へ向かっている。将来的にはさらなるカメラ増設もあり得るため、「モノアイか? ステレオか?」も無意味な話になっていくだろう。

 ただ、冒頭に紹介したようにステレオカメラは一度の撮影で距離が演算できるというメリットがある。2020年代前半に出る新型アイサイトでは現在よりプロセッサの能力を上げることで、より有効な情報を算出するほか、4つのコーナーレーダーによるセンサーフュージョンも行なう。さらにDMS(ドライバモニタリングシステム)との連動も行なうとしている。

新型アイサイトでは、DMSとの連動も行なう

 ちなみに、現行のアイサイトはスバルと日立オートモティブシステムズが共同開発しており、ver.3からはオン・セミコンダクターの1/3インチ 1.2メガピクセルCMOSイメージセンサー「AR0132」が2つ(ステレオカメラなので)使われている。今回の技術ミーティングでは言及されなかったが、この辺りの更新があるかどうかも注目したいところだ。

新型アイサイトは、新型レヴォーグに搭載

 では、この新型アイサイトは、どのスバル車から搭載されていくのだろうか? 一番有力なのが2020年に登場する新型レヴォーグだろう。この新型レヴォーグは、2019年の東京モーターショーでプロトタイプを公開。先ごろ行なわれた東京オートサロンでは、プロトタイプのSTI Sportバージョンがお披露目された。

 この新型レヴォーグでは、広角化された新型アイサイトが搭載されることがアナウンスされており、4つのコーナーレーダーを搭載することも明かされている。また、高精度な地図情報を使うほか、GPSに加えQZSS(準天頂衛星みちびき)を使うことで、高精度な自車位置測定を行なう。デバイスが同じことから、新型アイサイトは新型レヴォーグから搭載されていくのだろう。

 ちなみに現在のアイサイト・ツーリングアシストは、アイサイト ver.3(のソフトウェア改良版)にあたるが、新型アイサイトは、ハードウェアも変更されることから第4世代のアイサイトという位置付けになるだろう。スバルはver.3をソフトウェア改良した現行アイサイトで、一般に分かりづらいバージョン表記をやめており、アイサイト・ツーリングアシストという名称で用途を明確に訴求している。では、この新型アイサイトの名前はどうなるのだろうか? 渋滞ハンズオフができるようになったことを訴求するなら「アイサイト・渋滞ハンズオフ」だろうし、広範囲に周囲を見る・守ることを訴求するなら「アイサイト・ワイド」かもしれない。“スバルらしさ”を象徴するステレオカメラのアイサイト、その最新版の登場が待ち遠しい。