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ホンダ、高橋巧選手がスーパーバイク選手権に挑戦。「ずっと世界を目標にしていた」
HRCはハスラム選手とバウティスタ選手のコンビで18年ぶりのファクトリー体制
2020年2月25日 15:19
- 2020年2月21日 開催
本田技研工業は2月21日、都内で記者発表会を行ない、2020年のSBK(スーパーバイク世界選手権)に参戦する2チームのマシンとライダーを発表した。
ファクトリーチームの「Team HRC」からは、カワサキから移籍したレオン・ハスラム選手と、MotoGPでも活躍し、2019年はSBKで戦ったアルバロ・バウティスタ選手が参戦。さらにサテライトチームの「MIE Racing Althea Honda Team」からは高橋巧選手とジョルディ・トーレス選手が参戦する。
18年ぶりのファクトリー体制で勝利を誓う
同イベントは当初、一般公開が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響から入場は関係者と報道関係者に限定され、一般向けにはインターネットを使ったライブ配信で行なわれることになった。
最初にあいさつに立った本田技研工業 二輪事業本部長の安部典明氏は、「まったく新しいファクトリーチームとして、HRCが18年ぶりに(SBKに)参戦する」と宣言。MotoGPマシンからのフィードバックも加えて開発した2020年型の「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」を走らせるとした。
また、ホンダ・レーシング 代表取締役社長の野村欣滋氏は、「目指すところは勝利のみ」と強調したうえで、SBKへの参戦理由として、市販車両ベースの最高峰レースであることから、エンジニアリングの進化や市販車両の開発につながることなどを挙げた。
サテライトチームとして参戦するMIE Racingのチーム代表を務める森脇緑氏も登壇。同氏は、レース参戦や2輪・4輪のパーツ開発などで知られる「モリワキエンジニアリング」の創業者 森脇護氏の三女。2018年にチェコ プラハでMIE(Midori International Engineering)を創業している。「SBKのプロジェクトは2019年からスタートした。2年目の今年はHRCの全面的なサポートのもと参戦する。ファクトリーチームとは違ったアプローチとなるが、ライダーとエンジニアに耳を傾け、ともに新型CBRを開発していく」と述べた。
MIEのファーストライダーとして参戦する高橋選手は、壇上で新しいカラーリングのマシンをアンベール。「小さいころから世界選手権を目指してレースを続けてきた。2019年、(ポルトガルの)ポルティマオラウンドに(スポット)参戦したのは、今年世界選手権にチャレンジするにあたってすごく貴重な経験になった。来週の開幕戦で初めて乗ることになるが、(新型CBRの)戦闘力が上がっていることは知っているので、1戦1戦大事に、トップを目指して頑張りたい」とコメントした。
Team HRCのハスラム選手とバウティスタ選手も壇上で新ファクトリーマシンをアンベール。ハスラム選手は「テストで新型CBRに乗った時は笑顔が止まらなかった。来週のオーストラリア(フィリップアイランド)のレースが待ちきれない」と話し、バウティスタ選手は「新しいマシンを開発していくという課題はあるが、チームと共に勝利を目指すことに変わりはない。来週のレースを心待ちにしている」と語った。
「成長しないと」。新型未体験の高橋選手の不安と期待
発表会イベントの後、チーム個別の記者会見の場も設けられた。各チーム、ライダーのコメント要旨は以下の通り。
MIE Racing Althea Honda Team 高橋巧選手
ありがたいチャンスをいただけたと思っている。レースを始めてからずっと世界選手権を目標にしていた。世界に出たいという気持ちをずっとHRCに伝えていたので、それをかなえてもらえてありがたいし、ようやく次のステージに行けるチャンスなので、これを活かせるようにしたい。楽しみですが、不安も当然ある。新しいバイクにはまだ乗っていない。コースも知らないし、マシンもどういう状態なのか分からない。来週のテストでコースを覚えてマシンにも慣れて、という時間があるので、レースまでにしっかり合わせたい。
(2019年にスポット参戦した時に感じたのは)全日本では感じたことのないライディングスタイル。ぶつかってもしょうがないみたいなところがある。もちろんみんなセーフティに走っているとは思うけれど、日本ではあまり見たことのないレースだった。全日本はメンバーがだいたい決まっていて(互いの呼吸も分かるので)走りやすかったが、世界が舞台となると違う。自分がやるべきことを覚えて、成長しないといけない。
MIE Racing Althea Honda Team チーム代表 森脇緑氏
MIE RacingはMidori International Engineeringの略称で、チェコ プラハに本拠地を置いている。参戦マシンのCBR1000RR-Rはそこで開発を行ない、ホンダ、HRCから多大なるサポートをいただいて、自分たちオリジナルのパーツを作成して参戦する。私はモリワキで育ってきたが、そういう(モリワキのレースに対する)スピリットをヨーロッパのスタッフも引き継いでいる。
HRCがファクトリー体制で参戦することに対して、今、自分たちならCBRをどう開発していくか、それが私たちの挑戦。そういう意味でも高橋選手の持っているスキルは非常に大きいと感じている。まずはバイクの強み、(そこに対して自分たちが)何をできるか見極めるために、まず走らないといけない。そこで高橋選手が走ってくれるのは何よりも大きいこと。なので、最初の2戦はライダー1人でデータ収集していく。
Team HRC レオン・ハスラム選手
(テストで乗った新しいマシンは)パワーなどのフィーリングはよかった。これから開発していくべきところはまだまだたくさんあるが、それに関われるのがうれしい。HRCというワードだけでも、自分にとってはパワーになる。父親(ロン・ハスラム氏)も参戦したことのあるトップチームのバイク開発に携わることができるのは、自分のキャリアとしても最高の出来事。
ジョナサン・レイ選手とはチームメイトとして何年も一緒に戦ってきた。ここ5年間は彼がチャンピオンを獲得していて、どのライダーにとっても目標となる選手。自分も過去のレースで彼には刺激を受けてきたけれど、今度はHRCで彼と戦うのが次のチャレンジ。
Team HRC アルバロ・バウティスタ選手
(テストで乗った新しいマシンは)特にエンジンパワーがあって、本当にすごくよかった。こういうタイプのエンジンのバイクには乗ったことがないので、(どうよくしていくべきか判断するには)もっと距離を稼がないといけない。ただ、信頼性は高い。2019年11月と2020年1月にテストしただけで、まだ開発すべき部分は多いし時間もかかると思うが、チームもバイクもいい感じなのでレースが楽しみ。目標はただ1つ、勝つこと。
株式会社ホンダ・レーシング 取締役 レース運営室室長 桒田哲宏氏
当然勝ちにこだわる。ファクトリーチームは勝つためのチームなので、最強のライダーが必要だった。最強のライダー、最高のマシン、最高のチームがあってはじめて勝てる。そういった中でこの2人のライダーにいきなりドアをノックしてみたら、ちゃんとドアを開けてくれた。強いライダーを獲得できたことが、自分たち、エンジニアらのモチベーションにもなっている。
MIEとは技術的にコミュニケーションを取って、いいマシンを作っていく。マシンは違えども、それぞれで進化していきたい。世界との戦いが厳しいのはご存じのとおり。(レースシーンや市販車への)累積的なフィードバックの面でも1チームより2チームの方が効率的だと考えている。