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出光興産、NEDOの新たな太陽光発電技術開発に「超軽量」「移動体用」「リサイクル」など3テーマで採択

中期経営計画における重点課題の1つである「次世代事業の創出」の一環として推進

2020年8月5日 発表

NEDOとの共同研究事業について(参考)

 出光興産は8月5日、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業に提案していた「フィルム型超軽量モジュール太陽電池の開発(重量制約のある屋根向け)」および「移動体用太陽電池の研究開発」の2件が共同研究事業として採択されたことを発表した。事業期間は2件とも2020年度~2024年度の5年間となる。

 また同時に、出光興産の子会社であるソーラーフロンティアが提案する「結晶シリコンおよびCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証」が、同じく共同研究事業として採択されたと発表した。

 この採択の発表に合わせてメディア向けにオンラインでの説明会も実施された。出光興産からは、電力・再エネ企画 開発部 担当部長 黒田雄一氏と、次世代技術研究所 薄膜デバイス研究室 主任研究員 鎌田塁氏が、ソーラーフロンティアからは、国富工場技術部 部長 白間英樹氏が登壇した。

NEDOは今回、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みを推進するために、新たな太陽光発電技術開発で44テーマを採択している。赤枠が出光興産とソーラーフロンティアが採択された内容

 NEDOの「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業は、太陽光発電の主力電源化推進を目的に従来の技術では太陽光発電の導入が進んでいない場所(重量制約のある屋根、建物壁面、移動体向けなど)に必要とされる性能を満たし、各市場の創出・拡大に資する技術開発を目指すもの。

 出光興産は、ソーラーフロンティアが生産・販売する、銅(Copper)・インジウム(Indium)・セレン(Selenium)を材料とする化合物系の太陽電池「CIS太陽電池」の技術を応用して新技術開発を行なう。

研究開発テーマ:フィルム型超軽量モジュール太陽電池の開発

 太陽光発電の主力電源化実現に向け、住宅のみならずRE100やSDGsを推進する企業を中心に消費する電力を太陽光発電により賄うために、これまで重量の制約から太陽光発電システムが設置できなかった屋根などへの設置需要が高まり、軽量化のニーズはこれまで以上に増大してくると考えられる。

 そこで本事業では従来の太陽光パネルに匹敵する発電性能を有し、軽量かつ広範囲の屋根形体に適合して設置可能となる太陽電池の開発を行なう。研究開発は出光興産を含む複数の機関が連携・協力して実施するが、出光興産は主に多様な基板に適用可能な軽量CIS太陽電池 製造要素技術の開発を担当する。

 出光興産の電力・再エネ企画開発部の黒田部長は「これまで太陽光発電システムは、地上に設置されるメガソーラーや、住宅の屋根に設置されるタイプが中心で、普及と同時に設置場所は減少していくため、新たな設置場所や接地環境が必要となります。また、産業部門では企業がCO2排出量削減対策を推進していくと考えられるが、広大な屋根であるとはいえ、重量の制約などが多く、従来の重い太陽光パネルは設置できないことが課題となり。軽量なパネルの開発に取り組んでいる」と開発背景を解説した。

従来品のCIS
開発中の軽量CIS薄膜太陽電池は、重量を従来の3分の1に抑えたのにくわえ、曲げられる特徴があり使用用途が広がる

研究開発テーマ:移動体用太陽電池の研究開発

 エネルギー需要の大部分を化石燃料に頼っている運輸部門では、CO2排出量削減や大気汚染対策の取り組みの1つとして、次世代自動車による電動化の動きが加速しており、再生可能エネルギーからの電力供給が期待される。

 そこで本事業は、2050年に広く一般の電気自動車に太陽電池を搭載するための新技術開発として、自動車形状に搭載可能で高効率・低コストを実現する太陽電池モジュールの開発を目指す。

 研究開発は複数の機関が連携・協力して行なわれるが、出光興産は超高効率モジュール技術開発のうち、CISボトムセルの技術開発、具体的には変換効率向上および3D曲面モジュール実現に向けた技術開発を担当する。

※イメージ図(CISボトムセルは赤枠内)

 出光興産、次世代技術研究所薄膜デバイス研究室の鎌田主任研究員は「現状では太陽光発電のみで自動車を走らせるとしたら最大で30km程度が限界」とコメント。

リサイクル技術実証について

 使用済み太陽電池モジュールは、2030年代から急激に増加することが予想されており、NEDOの推計によると、排出量のピークを迎える2035~2037年頃には、年間排出量が約17~28万トンになると試算される。

 こうした背景から、ソーラーフロンティアは太陽光発電の健全な普及拡大の推進策として、低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術の確立が重要であると捉え、2010年より継続的に、CIS薄膜太陽電池モジュールのリサイクル技術開発を進めている。

 2019年度に取り組んだNEDOとの共同研究事業「合わせガラス型太陽電池のマテリアルリサイクル要素技術開発」では、これまでの研究開発や技術実証で確立した低コスト分解処理技術をベースとして、CIS薄膜太陽電池モジュールの全ての部材に関するリサイクル用途を明確にし、マテリアルリサイクル率を約90%まで向上させる目途がついたという。

右が新品のカバーガラスで、左は使用済みのカバーガラスは細かいEVA(封止材)が残る
パネルセパレータ処理後のCIS

 今回採択されたNEDOとの共同研究事業では、2019年度の研究開発で確立した技術を、より低コストで環境負荷の低いリサイクル技術へと進化させるのが狙い。具体的には、2020年度から2023年度までの4年間で、CIS薄膜太陽電池に加えて、結晶シリコン系太陽電池のリサイクル技術開発にも取り組み、分離処理コストをCIS薄膜太陽電池、結晶シリコン系太陽電池を問わず3円/W以下、マテリアルリサイクル率を90%以上とすることを目指す。

 ソーラーフロンティアの生産拠点である国富工場(宮崎県国富町)に、市販サイズのモジュールを処理する実証プラントを構築し、最終年度までには目標としたリサイクル技術の連続運転による実証を予定している。

サーキュラービジネスに関して ※2019年11月の中期経営計画より

 ソーラーフロンティア国富工場技術部の白間部長は「ソーラーフロンティアがCIS薄膜太陽電池の大量生産を世界で唯一成功させている企業で、これまでに累計6GWの販売実績を持っています。CISの開発に関しても1993年から取り組んでいて約30年経っている。リサイクルに関しても2001年から取り組んでいる」と紹介してくれた。

 本研究開発では宮崎県工業技術センターおよび国立大学法人宮崎大学とも協働することで、リサイクル技術の開発をさらに加速させるのも狙い。また、出光興産では2019年11月に発表した中期経営計画において、重点課題の1つである「次世代事業の創出」の主な取り組みにサーキュラービジネスを掲げていて、その一環として太陽電池モジュールのリサイクル技術開発を推進することとしている。

 この計画のもと、ソーラーフロンティアは、2030年以降の本格的なリサイクル市場の拡大に備え、より低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術開発を行ない、主力電源としての太陽光発電のさらなる普及拡大と持続可能な社会の実現に向けて貢献すると結んでいる。

出光興産の取り組みについて ※2019年11月の中期経営計画より