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EVを充電しながら駐車できる、新しい形の充電インフラが横浜市に登場

出光興産とデルタ電子による「Delta EV Charging Station (Yokohama)」オープニングセレモニー

2020年8月7日 開催

横浜スタジアムの近くという好立地にできた「Delta EV Charging Station (Yokohama)」

 出光興産とデルタ電子は8月7日、複合型EV(電気自動車)充電の新たなサービスモデル「Park&Charge」の検証を目的とした実証店舗「Delta EV Charging Station (Yokohama)」のオープニングセレモニーを開催した。同施設は8月8日よりオープンする。所在地は神奈川県横浜市中区山下町193-1。

 同施設は、出光興産が所有するサービスステーション跡地を活用し、デルタ電子の持つ急速充電器といった設備などを組み合わせることで、駐車場とEV充電設備の両方を併せ持たせたもの。6台分の駐車枠を持ち、そのうち3枠に25kWの急速充電スタンド、1枠に普通充電と放電が可能なV2B(Vehicle to Building)充放電スタンドを備える(2枠は駐車のみ)。

駐車しながら充電が可能(写真はオープニングセレモニーのため撮影用に車両をおいたもの)
充電設備を備えた4台分の駐車枠と、充電設備のない駐車枠2台分が設けられる
壁掛けも可能という軽量コンパクトな25kW急速充電器が3台。CHAdeMOに加え欧州規格のCCS2にも対応
こちらは普通充電と車両からビルへ給電も可能なV2B充放電スタンド。非常時にはEVのバッテリーからカフェなど施設の電気を賄うこともできる

 横浜スタジアムや横浜中華街からも近いという立地を生かし、EVに限らず観光に訪れた人の駐車場として活用したり、併設するカフェで30分のEV充電時間を過ごしたりできるようになっている。また、EV充電にはデルタ電子の持つスマートフォンアプリ「EZQC」を活用することで、個人情報や車両情報の登録をすることなく課金できるシステムを構築。このアプリではクーポンの発行もできるため、EV充電利用者には併設するカフェで利用可能なコーヒー無料クーポンなどが発行される。

スマートフォンアプリの「EZQC」は個人情報や車両情報などを登録しなくてもキャッシュレス決済が可能
充電を利用するとカフェで「今日のコーヒー」が一杯無料になるほか、駐車料金が30分無料に
充電中は残りの充電時間はバッテリーの状況を確認できる
併設するカフェ「Innergie CAFE」
こだわりの厳選したコーヒーなどがいただける
充電しなくてもコーヒーやソフトドリンクを注文できる

 利用するには駐車料金として30分ごとに500円がかかるほか、急速充電スタンドを使う場合は充電費用として1回30分700円、普通充電(V2B)スタンドを使う場合は1回60分300円がかかるが、充電をした場合は駐車料金30分(500円)が割り引きになる。つまり、急速充電スタンドのある枠で30分充電した場合は、駐車料金(30分)がサービスになるので実質700円となり、充電が終わった後も駐車し続けた場合は、充電料金700円に30分後以降の駐車料金が追加される形。普通充電を使って1時間充電した場合は、充電料金300円と、駐車料金のうち30分をサービスした500円の駐車料金が加わった800円がかかることになる。

 また、V2BのスタンドではEVから施設への給電も可能。その場合はカフェで好きなドリンクが選べるクーポンがもらえるという。

急速充電は1回30分までで700円。30分無料券がサービスされる
普通充電は1時間300円、車両から電気を供給(放電)した場合は、カフェでコーヒー以外も頼めるクーポンがもらえる。また駐車料金も30分無料に
充電料金とは別に必要な駐車料金は8時~22時が30分500円、22時~8時が60分200円となっている

 少し複雑に感じるかもしれないが、従来のEV充電設備はあくまで充電だけを目的とした設備だったため、充電が終わったらすぐに車両を移動するのがマナーとなっていたのに対し、同施設は駐車場としての機能を併せた施設のため、充電時間が過ぎた後も気にせず駐車したまま食事や観光などを楽しめるといった使い方ができる。また、充電だけしたいユーザーにとっては、併設されるカフェでコーヒーなどを飲みながら待つことができ、企業にとっても充電設備をマネタイズ化できるメリットがある。

EV社会でのサービスを模索する出光とソリューションを持ったデルタ電子がコラボ

 オープニングセレモニーに登壇したデルタ電子 代表取締役の柯 進興氏は、日本でEVが普及しない理由の1つとして充電インフラの不足を挙げつつ、その理由を、サービス提供側にとってEVの充電だけではビジネスが成り立たないと説明。「そのような課題に対して新しいビジネスモデルの確立を検証する目的で今回出光興産様と共同で、この実証店舗をオープンすることとなりました」と今回のステーション開設の経緯を説明した。このステーションは2018年に同社グループが台湾のCOMPUTEXに出品したコンセプトブースが基となっているといい、「EV充電ステーションに充電以外のさまざまな機能を追加することで集客を高め、他方で省エネルギー化や、電力需要の平準化、非常時の災害拠点としても活用できるようする」と紹介。それらソリューションに弊社製品が多数採用されているとした。

 また、出光興産 取締役常務執行役員 平野敦彦氏は、「出光興産としては長きにわたりサービスステーションというインフラを通じて石油製品で内燃機関に対してエネルギーをチャージするというビジネスにいそしんで来た」と言い、そうした経験や資産を生かしながら今後のEV社会のなかでどのようにサービス提供をしていくのかを模索していくなかでデルタ電子との今回の取り組みに至ったと紹介した。まずは3年間という期間で、この実証を通じてEVチャージのニーズとビジネスとしての側面に対する知見を高め、今後のEV社会の拡大、インフラの拡大に生かして行きたいとした。

オープニングセレモニーの模様
デルタ電子株式会社 代表取締役の柯 進興氏
出光興産株式会社 取締役常務執行役員 平野敦彦氏
Delta Electronics,Inc. CEOのPing Chang氏もビデオメッセージを寄せた

 なお、今回の横浜の施設ももとはサービスステーションだった場所を活用したもの。昨今の自動車の燃料消費量の低下などにより、特に都市部など地価の高い地域で従来のサービスステーションの運営が厳しいという実態があり、このサービスステーションもそうした影響を受けたものである。しかし一方でそうしたエリアでは駐車場が不足していたり、クルマを駐車したまま利用できる周辺施設が充実しているということもあり、今回の展開につながった形だ。同様の状況は横浜以外でもあるので、今後は別の場所でも展開も検討しているとのことだった。また、今回はカフェを併設する形を取ったが、どういったサービスを併設するのがいいのかも、状況に応じて検討していきたいとのことだった。

 同施設では、充電スタンドに加え、照明であるLEDから監視カメラ、さらに電力のピークカット、ピークシフトを実現するBESS(Battery Energy Storage System)やEMS(Energy Management System)、さらにクラウドを使って遠隔からでも管理できるネットワークサービスなど、デルタ電子の持つハードウェアやソフトウェア製品が多数活用されており、また、ショールームも併設されている。また、カフェでは同社製品のUSB充電器なども設置されて、スマホやPCの充電もできるようになっているほか、期間限定として同社のコンシューマー向け製品の20%割引による販売も行なわれる。

Delta EV Charging Station (Yokohama)の説明
充電設備に加え、LED照明から監視カメラ、プロジェクターまでデルタ電子の製品が使われる
蓄電池もデルタ電子製。リチウムイオン電池で49.7kwh
EMS制御盤もデルタ電子製
施設内設備の説明
蓄電池を活用することでピーク電力をカット。これにより契約電力の削減が可能
非常時には蓄電池はV2B経由のEVバッテリーでスタッフルームやカフェなどの電気を賄える仕組み
ソフトウェアもデルタ電子による制御でパワーフローなどが可視化される
現在の充電設備の利用状況が離れた場所からも監視できるほか、各部屋に配置されたIoT機器により各部屋の温度や湿度、またCO2なども測定できるため、そこから部屋の密の状態を把握し、換気をするといった使い方もできるという
ショールーム。デルタ電子の製品の紹介がされる
カフェなどに設置された「CONCIOUS」。店舗の電気消費量に加え、温度や湿度、CO2など空間の状況をセンシングできる
カフェの入り口付近天井につけられたセンサーは店内の人の動きを検知し、入店・退店の数などをカウントできるステレオカメラ
カフェではデルタ電子のコンシューマー向け製品の展示も
実際の製品の展示・販売も行なわれる
PD出力からPCなどへ充電するための変換ケーブル。実際に店頭で充電することもできる
オープン記念でカフェ内の製品がすべて20%引きになるキャンペーンを実施